にーさんにマッサージしてあげる
お待たせ、にーさん。
準備ができたから、こっちへきて? そう、こっち。
……さて。これは、なんでしょうか?
ふふふっ。さすがに、一目じゃわからないかな?
んっとね。私がにーさんにしてみたかったことっていうのは、マッサージのことなの。
そう、リンパマッサージ。だから、疲れを解きほぐす為のこと、って言ったんだよ。
こうして実際に聞いてみると、ほぼそのままのことを言ってたでしょ?
ふふっ。むしろ、ストレート過ぎて、ちょっと拍子抜けしちゃったかな?
それとも、普通に安心してくれたのかな。それなら、私としては嬉しいんだけど。
さ。にーさんは服を脱いで、ここでうつ伏せになって?
まずは腰のマッサージから始めていくから、自分の丁度いい具合でうつ伏せになったら、そのまま力を抜いて、目を閉じてね。
……うん。これはマッサージだし、疲れてるにーさんを癒してあげる為にすることなんだから。
私がどうこうお願いするよりも、にーさん自身が楽な体勢でやれたらいいかなって。
……これで、体勢は大丈夫かな? ちゃんとリラックスできてる?
はい。それじゃ、このままマッサージ、始めていくね。
……あ、そうそう。もしも、力が強いなーって思ったり、痛かったりしたら、すぐに言ってね?
にーさんの為に色々勉強してきたけど、力の加減とかには好みがあると思うし。
言ってくれれば、すぐに変えるからね。遠慮とかはしなくて大丈夫だよ。
……んしょ。まずは、マッサージオイルを……と。
ちょっと最初はくすぐったいかもしれないけど、少しだけ我慢してね。
肩甲骨の下の辺りから、そのままお尻まで、手のひらを使って……。
ん……。んしょ……。ん、っ……。
……どう? にーさん。力の加減とかは、大丈夫?
……うん。なら、このまま続けていくね。
ん……。…………。
ん……。……んしょ。
……にーさん、毎日デスクワークで疲れてるだろうから。
長時間座り続けてることが多いと、毛細血管が圧迫されて、腰の痛みに繋がっちゃうらしいし……。
だから、こうやって……。念入りに、マッサージして……。
早いうちから、労わってあげないと……。ね……?
……ん。……んしょ。
…………。…………。
……ん、と。ここからは少し、動きを……変えて……。
今度は、腰の真ん中から……。お尻の形に沿って、内側から……外側に。
……あ。くすぐったかった……かな?
もうちょっと、丁寧に……。もうちょっと、じっくり……やっていくね。
ん……。ん……っ。
…………。…………。
……そうそう。ちなみにね? こうやって、上から下にかけて、じっくりマッサージしてるのはね。
足の太陽膀胱経(たいようぼうこうけい)っていう、後頭部から足の小指まで繋がってる経路があるからなんだ。
ここの流れをよくすると、腰痛の改善に繋がるっていうから、デスクワークが多いにーさんには、丁度いいかなって。
……ふふふっ。そうだよ? 私、にーさんのことを考えて、ちゃんと詳しいところまで勉強したんだよ?
だから、こうして……。気持ちよく、なってくれてると……。
私も……勉強した甲斐が、あったかな……? なんて。
……ん。……んしょ。
それじゃ、このまま……脚の方に、流れて……っと。
今度は、膝の真後ろ……。委中(いちゅう)っていう、腰とか背中の痛みに効くっていうツボを押していくよ。
左右片方ずつ、1回10秒で2セットに分けて押していくから。私がゆっくり数、かぞえるね。
それじゃ、まずは左から。……はい、始めるよ。
……いち。に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
今度はこのまま右に移って、またゆっくり、数をかぞえるね。
……いち。に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
はい。それじゃ、また左に戻って……同じように。
……いち。に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
今度は、また右に。これが最後だから、また10秒、ゆっくりかぞえるね。
……はい。いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
んしょ。それじゃ、これで腰のマッサージはおしまい。
手で丁寧にマッサージをした後は、仕上げに……これ。
うん。ハンディマッサージャー、持ってきたんだ。
これを今から、腰のマッサージをした場所に当てて、仕上げのマッサージ……していくよ。
これも手でマッサージをしたのと同じように、ゆっくり、時間をかけてやっていくから。
リラックスして、手のマッサージとは違う感触を楽しんでね。
……はい。まずは、肩甲骨の下の辺りから……お尻にかけて。
…………。…………。
上から下に、少しずつ……。時間をかけて、動かしていくからね。
…………。…………。
…………。…………。
……うん? 気持ちいい?
ふふふっ……。気持ちよかったら、そのまま寝ちゃってもいいよ……?
体勢を変える時とかは、ちゃんと声、かけてあげるから。
私のことは気にせず、好きなように……。にーさんのしたいように、していいからね。
…………。…………。
…………。…………。
……仕上げだし、せっかくだから。このままお尻から、膝の真後ろ……ツボのところまで、続けてやっていこっか。
……うん。
ここも、時間をかけてやっていくから。にーさんはそのまま、楽にしてていいよ。
…………。…………。
…………。…………。
……そういえば、こうやってマッサージしてて思ったんだけどね?
にーさん、いつも頑張ってるのはとってもかっこいいと思うんだけど、やっぱりそれは、にーさんが元気っていう前提があってのことだし。
にーさんにも色々あるとは思うけど、たまには自分の体のことも、ちゃんと考えてあげて?
にーさんのこと、私もいっぱいサポートしてあげるから。少しでも疲れを感じたら、無理をする前に、私のところへ来てね。
……うん。約束だよ。私とにーさんの間の約束ね。
……はい。これで腰の方は、仕上げもおしまい。
そしたら今度は、首と肩のマッサージだね。
こっちも、腰と同じぐらい疲れが溜まりやすいところだし。
……ほら。体起こすから、私に掴まって? 体勢、変えるよ。
……んしょ。はい、これで大丈夫。
そしたら、鎖骨の下の辺りから、肩の下にかけて。さするように、マッサージしていくね。
これは左右に分けて、左から。はい、始めるよ。
……ん。……んしょ。
こうやって、ゆっくり……丁寧に、すりすり……すりすり……って。
……ふふっ。こういうところをこうやって触られるのって、ちょっと不思議な気分でしょ?
これはマッサージだけど、逆に、そういう時ぐらいしか触られないもんね。
……鎖骨の下から、肩の下へ。手でゆっくりとさすられて……どう? 気持ちいい? それとも、くすぐったいかな?
……そっか。だったら、このまま続けていくね。
……ん。…………。
ん……。…………。
それじゃ、今度は……こっち。右側を同じようにマッサージしていくよ。
……すりすり、すりすり。すりすり……すりすり……。
…………。…………。
これをもう少し続けたら、次は首のマッサージに移るつもりなんだけどね?
やっぱり首回り、特に首筋って、デスクワークをしてると、負担がかかりやすいと思うし。
この肩のマッサージから続けて、首回りは重点的に、じっくりと時間をかけて解していくからね。
……はい。これで、鎖骨の下から肩の下へかけてのマッサージはおしまい。
次は、ここ。耳の下から、首の根元まで。
指先を使って、円を描くような形で、両手で首筋をマッサージするね。
……んしょ。ここから、こうして……。
……ん。…………。
ん……。…………。
……力、強すぎたりしない?
首筋だから、力の加減も微妙に変えてはいるんだけど。
……うん。大丈夫なら、よかったかな。
ここらへんって、変にマッサージすると、逆に違和感が出たりしちゃうし。
他のところよりも、もっと丁寧にやらないとね。
ん……。…………。
…………。…………。
ふふっ……。にーさん、気持ちよさそう。
そのまま、全部私に任せてくれていいんだよ……?
これは、にーさんの為のマッサージなんだから。
……よし。首筋も、これぐらいでおしまいかな。
それとも、もうちょっとしてて欲しかった? 大丈夫?
うん。それじゃ、今度はこっち。今度は手首から、脇の下にかけて。
これは、リンパの流れを良くする為のマッサージだよ。
脇の下にあるリンパ節って、首回りとか腕全体に関わる、とっても大切なところだから。こっちも、丁寧にね。
まずは、左からいくよ。
……手首から、脇の下にかけて。手のひらで、すーっとさするように……。
こうやって、リンパを流すようなイメージで……何回か、さすっていくからね。
よしょ……。んしょ……。
…………。…………。
…………。…………。
もう一回、手首から……すーっと……。
最後の一回、すーっ……。
……それじゃ、今度は右側ね。こっちも同じように、手首からやっていくよ。
まず、最初の一回。すーっと……このまま脇の下へ……っと。
ん……。んしょ……。
…………。…………。
ん……。…………。
すーっと……流すようにして……。
こっちも、最後の一回……。すーっ……。
……はい。手首から脇の下にかけてのマッサージは、これでおしまい。
今度はまた、肩の方に戻って……と。
次は肩の上から、にーさんの胸の上らへんまで。左右に分けて、流すように、かな。
今回も、左側から始めるね。
さす……さす……。さす……さす……。
…………。…………。
…………。…………。
……このまま、右側に移るよ。力の加減とかが気になったら、私の手を掴んでくれればいいから。
……はい。
さす……さす……。さす……さす……。
…………。…………。
…………。…………。
……これで、肩から胸にかけてのマッサージも終わり。
もう一回、うつ伏せに寝てもらって、肩にあるツボを指圧してから、仕上げに移ろっか。
うん。私に掴まったままでいいから、体を倒して……?
……はい、ごろん。
……ふふふっ。なんだかこういうことをするのって、ちょっと楽しいよね。
なんていうのかな。にーさんのお世話をしてるって感じがするから、かな?
あ。別に、変な意味じゃないよ?
ちゃんとお世話できてるんだなって考えたら、ちょっと嬉しくなっちゃって。
……うん。じゃあ、にーさんにまたうつ伏せになってもらったことだし。ツボ、押していこっか。
瞼を閉じて、私に全部任せてくれればそれで大丈夫だからね。このままの体勢で、仕上げまで全部やっちゃうよ。
……んっとね。ツボは二か所押すつもりなんだけど、最初に押すのは、肩井(けんせい)っていうツボかな。
首の付け根から肩の先にかけての、ちょうど真ん中辺りにあるツボなの。
コリを解す以外に、冷え症とかにも効くみたい。
ここを左右片方ずつ、10秒かけて押していくね。
……それじゃ。数、かぞえるよ。
……いち。に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう。
……どう? 痛かったり、違和感が残ったりはしてない?
そっか。だったらこのまま、右側も同じように……数をかぞえながら、指圧していくね。
……はい。いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
どう? こっちも違和感とかは無さそう?
うん。じゃあ、また左に戻って、もう一回ずつ指圧していこっか。
……はい、数かぞえるね。
いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう……。
このまま右に移って、最後にもう一回。
いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
これで肩井っていうツボを押すのはおしまい。
次は、首の方。首の裏側、付け根から三つ下の骨……かな。この骨がでっぱってるところの両隣にあるツボだよ。
位置は……はい、はい……と。骨から指二本分、ここだね。
ここは風門(ふうもん)っていうツボで、風邪の予防とか、頭痛にも効くみたい。
ここも左右片方ずつ、10秒かけて指圧していくよ。
じゃ、数……かぞえるね。
いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
右に移って、いち……に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
……気持ちいい?
ふふふっ。この後は仕上げもするから、そのままリラックスしてて大丈夫だよ。
それじゃ、左に戻って……もうワンセット。
……はい。いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう。
もう一度右に移って、いち……に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう……じゅう。
……んしょっと。これで、首と肩のマッサージもおしまい。
最後はハンディマッサージャーを使って、首回りの仕上げ、するね。
これを、首の左側に当てて……と。
ゆっくり、時間をかけつつ、肩に向けて動かしていくから、ここが気持ちいいとかあったら、いつでも教えて?
ん……。…………。
…………。…………。
……ふふっ。にーさん、眠そう。
でも、それはつまり、それだけにーさんが疲れてたってことだと思うから。
私のマッサージでリラックスしてくれたのなら、私もとっても嬉しいし。別にこのまま寝ちゃってもいいからね。
……うん。
今日は、私がにーさんのお世話をしてるんだもん。
したいことを、したいようにしていいよ……?
…………。…………。
…………。…………。
……はい。今度は、右側も同じように仕上げ、していくね。
首回りにこうやってハンディマッサージャーを当てられるの、気持ちいいでしょ?
私も自分で軽くマッサージとかしてると、眠くなってきちゃうから。にーさんの反応も、自然かなって。
……あ。それと、この仕上げが終わった後なんだけどね?
マッサージとはまた別に、にーさんを癒すにはピッタリなことを思いついたんだけど、どうかな……?
……ううん。何を思いついたのかは、実際にするまでは内緒。
ふふふっ。だって、そっちの方がワクワクするでしょ? 事前に聞くのもそれはそれでいいとは思うけど、せっかくなんだし。
うん。じゃあ、この後はそれで決まりね。
マッサージで眠くなっちゃったと思うけど、もうちょっとだけ我慢……だよ?
これが終わったら、それこそぐっすり眠れそうなこと、してあげるから。
……うん。きっとにーさん、これなら喜んでくれると思うな。
だからそれを楽しみにして、もうちょっとだけ起きててね。
…………。…………。
…………。…………。
……よいしょ、っと。はい、これで仕上げもおしまい。
マッサージ、お疲れ様でした。もうにーさんの好きなように動いても大丈夫だよ。
それじゃ、私はこの後のお楽しみの準備をしてくるから。
敢えて何も聞かないまま、ここで楽しみに待っててね。
……うん。ありがとう。
それじゃ、改めまして。マッサージお疲れ様でした、にーさん。