Track 2

いやしどころひやしや(イントロダクション)

:環境音 FI 川のせせらぎ :SE 鳥の声 :SE 砂利道を歩く足音、男一人 ;SE 足音止まる ;SE 木のドアノッカーを鳴らす ;SE ドアの向こう。小さな足音、駆け足で近づいてくる。 ;9 (ドア越し、低いとこ) 「その足音! オッカイ! ピリカオッカイだよね!? まってて、開ける! すぐに開けるさ」 ;SE ドア開け ;9 (低いとこ) 「よかった! また来てくれるの、ずっと待ってた。 久しぶりだね~、えへへへへっ」 「あ、オッカイちょべっと痩せた? ね? だっこしてお顔見せて」 ;SE しゃがむ ;SE 立ち上がる ;1 (同じ高さ) 「えへへっ、すごーい! 高い高い! きもちいー!」 ;1 マイクと横向きになって 「ふわぁ…… オッカイ、いっつもこんな遠くが見えてるんだね~。」 じゃなくてじゃなくて――お顔! 見せて?」 ;1通常 「ん……(マイクに小指の先かなにかでかるぅく触れる)……オッカイ、やっぱり少し痩せた――よね?」 「大変だったの? 忙しかった? 顔、少し疲れてるみたい――ああっ!」 「っていうか、それでだ。 それでオッカイ、パロポロのところ―― “ひやしどころ いやしや”に来てくれたんだべさ」 「……うん……うん……(呼吸音)……うん」 「……そりゃあ疲れて当然でないかい。 オッカイも、いろいろたいへんなんだねぇ」 「したらさ、ちょうど―― えへへっ、ちょうど、オッカイに抱っこもしてもらってるしさ?」 ;1から3方向に顔寄せてささやき 「今日は、前とは少しちがった、いやしとひやしで骨休めしてみないかい?」 ;1 「えへへっ、あのね? ここから、人間の足でなら少し歩いたところにね? パロポロの、ひみつの場所があるの」 「……そこでなら、いまのオッカイにぴったりのひやしといやしを、パロポロ、きっと届けてあげられる気がするんだけど……(呼吸音)」 「わ! いいのっ!? オッケー!? えへへっ! やったー! うれしいべさー!」 「したっけ、ここままつれてって? えへへ――だっこのままで…… パロポロ、案内するからさ!」 「いい? いいの? やったー! なら、いこ? すぐいこ!」 「まずは、バス駅。 大土地(おおとち)の駅をめざすべさ」 ;SE 足音(アスファルト) 「えへへ~ 高いね~ 気持ちいいね~ 空気がさ、この高さだと、いつもよりだいぶんひやっこいねー」 「ん? なにが『なるほど』なの? うん……うん……うん――あ、そー! 硬い地面! アスファルト!」 ;1 下を向いて 「アスファルト、暑い日にはものすごーく暑くなるしょ。 あれ、パロポロみたいなコロポックルには厳しいのさー」 ;1通常 「したっけ、遠回りでも土のあるとこ選んでいかねば、 おおげさでなくて、干からびて死んじゃうの。 だけど――えへへ~」 「オッカイがだっこしてくれるから、 今日はアスファルトの上もへっちゃらだべさ。 らくちんらくちん、きもちいー」 「あ、もう、バス駅? すごーい、はやーい! えへへへ、オッカイのだっこは、特急だねぇ。 エル特急・スーパーオッカイ1号だべさ」 「したっけ、このまま北に向かって? そこの親水公園抜けて、北側の水辺まで」 ;SE 足音(土・草) 「え? ――(呼吸音)―― へへへっ、そりゃ特急くらい知ってるべさ。 汽車さ、コロポックルだって乗せてもらうもの」 「コロポックル、この大きさでしょお。 人間の乗り物にこっそり乗せてもらわねば、 遠くまでなんてでかけられないしょ」 「……北海道にいた頃にはね? パロポロ、アショロって土地の、ラワンブキの森にすんでたの」 「え? ああ、ラワンブキはね、おーっきな蕗(ふき)。 あのね、なまらおっきくてね、オッカイの背丈よりももっとおっきくなるんだよー」 「そうだよー? パロポロの、コロポックルの背丈じゃなくて、オッカイの、人間の背丈よりもっとおっきく。 二メートルとか、そんくらいにまで育つのさー」 「なのにね? とっても柔らかでおいしいからさ、ラワンブキの森――たんぼから出荷されてくの。 そのトラックに、遠出のときはパロポロこっそり乗っかるのさー」 「アショロにも汽車の駅――アショロ駅が十年くらいまえまではあってね。 そっから汽車にもぐりこんで、北見までいったもんさ」 「したっけ、北見から特急にのればさ―― 網走にだって札駅(さつえき)にだっていけるしょ」 「ん? なにしにって―― そりゃ、コロポックルのいとこにあいにいくのさ。 パロポロ世代のコロポックルも、まだちょべちょべとは、道内のあちこちにいるからさー」 「十年とかそこらに一回くらいね? クンネレカムイ――ふくろうが招待状をもって飛んでくるの」 「生誕200年――大人になったお祝いの招待状とか、 最近はもうすっかりないけど、イオマンテ―― カムイを送り返すお祭りがあるとかさ、そういうときに」 「なまら遠くてもさ、およばれされて出かけないのは失礼だからねー。 人間の乗り物にのせてもらって、えっちらおっちら、大冒険さー」 「もちろん、おっきなオンネイ――オジロワシとかを送ってもらえたときには、その背中にのってびゅーんって――あ!」 「あれあれ! ギッタンバッコンいうの。 あれいいよねー、面白そー」 「ん? 『シーソー」へぇえ、そんな名前なんだ。 沖縄のあやかしみたいな名前なんだねぇ」 「そのシーソーさ。 パロポロ、してみたくって、がんばってがんばってよじのぼってみたの。 茂伸にこしてきてすぐのころに」 「がんばってがんばって、あせだくになってよじのぼって―― したっけ、パロポロ軽すぎたべさ。 シーソー、ちっとも下りてくれなくて、ぎったんばっこんできなくて――あ!」 「すごいべさ! オッカイの目の高さだと、もう見えてくるんだねー。あの水辺――見えてるおっきな湖が、パロポロたちの目的地、 『奥茂伸湖(おくものべのこ)』」 「このまま湖沿いにもーちょっといくとね……(呼吸音)―― うん! あれあれ、あそこの東屋(あずまや)! あの東屋までいったら、えへへ――」 ;1 顔寄せ 「パロポロ、オッカイのこと、たくさんたくさん、 いやして、ひやしてあげるべさ!」 ;環境音 F.O