ゆきとクールドライブ(乾布摩擦)
;////////
;Track2 ゆきとクールドライブ(乾布摩擦)
;////////
;SE 車のエンジン音(ドライブ中)+クーラー全開
;7/左
「あ~~すずしか~、いきかえる~~」
「クーラーって、自動車ってすごかとねー。
ありがとぉねぇ、おにいさん。
ゆき、まっこと助かったと」
;7/左 車窓みてる感じで首をふりつつ
「涼しかうえに、びっくりするほど速ぉに走って――
うふふっ、景色ばびゅんびゅん、飛ぶように流れていきよるねぇ――
はぁあ――おもしろかねぇ、すごかとねぇ」
;7/左 通常
「いまどきの人間は、こぎゃんと便利な宝物、簡単に借りたりできよるんねぇ。
すごかと――ぎゃんすごかとねぇ。
夏の暑さも冬の寒さも、こいばあったら、ちょっとも怖いことなかろーねぇ」
「……(ため息)――
そりゃ、ゆきみたいな雪御嬢(ゆきごじょう)も――
ん? あ……あああっ!」
「いけんいけん。
ゆき、ばたばたしとって、自己紹介もしとらんかったねぇ」
「ええと――ほんなら。
いまさらばってん、あらためて」
「んと……ゆきば、熊本の、湯前(ゆのまえ)って土地にある山に棲もーとった、
雪御嬢(ゆきごじょう)なんよ」
「雪御嬢ってゆーて――あー……
おにーさんも、やっぱり知らんと?
ほんなら、ええと……
そこから説明、じゅんじゅんにしていくけんね」
「ゆきごじょうっていうのは、漢字だと、
雪やこんこんの雪に、御免下さいの御に、
お嬢さんの嬢って書いて、雪御嬢いう、あやかし」
「ゆーか……ふふっ、
おにいさん、見かけによらず肝っ玉すわっとるねぇ」
「こぎゃんと近くに雪御嬢――
氷と雪を司る、怖ぁい怖ぁいあやかしばすわっとるゆーんに……へ?」
「ふんふん――
『さっきまでの話と、タオルごしの指よ、かかる吐息の冷たさで、なんとなく』――
あー、そぎゃん雰囲気……ゆきが、普通の人間じゃあないって、感じとったと?」
「……あー。ほんなら――うん。
ほんなら、余計にありがとおねぇ。
ゆきがあやかしってわかっちょって。
その上で、見捨てもせんで、助けてくれて――
まっこと、まっことありがとお」
「え? あ――うん。
よねぇ、感じとっても、信じられんよねぇ。
こぎゃん、車みたいなすごかものを簡単に動かせる世の中に、あやかしば人間にまぎれてくらしとる――なぁんて」
「ばってん、こいば、まっことよ?
そん証拠に――んっ!」
;SE 氷雪系魔法Ef的なの
「雪華(せっか)。雪の華。綺麗でしょお?
こいば咲かせるの、ゆき、なかなか上手なんよぉ――
って、もう、おにいさん。
どぎゃんしてゆきの指先ばみてくれんのぉ?」
「え? あ! そぎゃんとね。
こぎゃん速く走っとる車ば、おにーさんが操っとるんやもんね。
脇見ばしたら、危なかとねぇ」
「危ないもんは、片さんとねぇ。
えいっ」
;SE パリン、ガラス砕ける系
「――はぁい、綺麗に砕けたと――って?
どぎゃんしたと、おにーさん。
急に、頭ばもぞもぞ――あ」
「わかったとー。雪華ばみれんかったの、残念やったとね?
ほんならね? ゆき、おにいさんの目線の先に、車の外に、ほんのちょこっとだけ雪ばふらせて――ひゃっ!?」
「『スリップするから絶対だめ!』……って、
ええと――どぎゃん意味?
――あ……ああ――なるほどなぁ。
車も人とおんなじように、雪の上では、足ば滑らせてしまうとねぇ」
「ほんなら、車ば止まるまで、ゆき――えへへっ、
おとなしゅうおにいさんの横顔、みとるなぁ?
じ~~~っ」
「じ~~~~~~っ――って、あ」
「あんな? おにいさん。聞いてもよかと?
よか? えへへ、ほんならちょこっと、訪ねるけどなぁ?」
;7/首だけダミーヘッドの目線方向に向けて
「こん車。いったどこを目指しとーと?」
;環境音 Fo
;SE 車のドア開く→閉まる
;SE 足音
;6 /左後
「ふあぁ……あ――」
;環境音。洞窟内、F.I,
;以降反響エフェクトかける?
「ひんやりしちょるねぇ。
ああ……ゆきがもともとくらしておった、
市房山(いちふさやま)の山ん中と――
ああ……これなら少しも変わらんねぇ――あ!」
:SE 小走り足音 6/左前→10/右前遠
;10/右前遠
「ここ――人間のお部屋みたいになっとおねぇ。
床板とたたみばしいてあって……
お布団に、タンスに――」
<引き出し開け>――わ、服やら手ぬぐいやらもはいっとー」
;11/右
「あ! こっちの奥ば、お台所もあると――お風呂も!
はぁ~、こんなら、お客様だって――
えへへ、お迎えできるとねぇ
;1/前
「……ね? おにいさん、
茂伸の山奥に、こぎゃん素敵な洞窟ばあるなんて――
どぎゃんしてしっとったと?」
「え? 『教えてもらった』――って、誰に?
うん……うん――
れんたかあば借りるついでに、役場によって――あ!」
「ゆき、ものべののカミさまからのお手紙でそぎゃん言われとったねぇ。
『ついたら役場に顔をだすっス』って」
「……ゆきがぽかぁんと忘れてしもとったこと。
おにいさん、ちゃあんと覚えて――
えへへ、ゆきのこと、また助けてくれたんねぇ」
「ありがとぉ。
まっこと、ありがと。
うち、おにいさんのおかげで、こころも体も、もう元気ば百倍に――あれ?」
「おにーさんの顔色……
あったときより、ずいぶんと青ざめて――って、あ!」
「ゆきのために、車ん中、ぎゃん冷やしとってくれたけん――
そこからすぐに、こぎゃんひんやりした洞窟にゆきを案内してくれたけん」
「……ああ、おにいさん。
寒いの我慢しとってくれたんねぇ。
ゆき、気づかんでごめんねぇ――え?」
「『慣れないレンタカーで、初めての山道を運転したから、その緊張もあって』……ああ――おにーさん……
からだも心も、ゆきのために、よーさん使ってくれたんねぇ――
まっこと、ありがとお」
「ほんなら、ね?
ゆき。手ぬぐいでおにいさんのことくるんで、包んで――
ほんで上からゴシゴシこすってあげるけん」
「そぎゃんしたら、おにいさんのこころも体ももあったまって、きっとほぐれるってゆき思うばってん――
どぎゃんと?」
「あ――えへへっ。
ほんなら――ん――」
;2/右前 接近囁き
「おにいさんのこと――<タオルがさがさ>――
こぎゃんして――くるーって、つつんで――
うん!」
;1/前
「ほんなら、まずはこするけんねぇ。
<タオル擦>――んっ――
<タオル擦>……ん――
<タオル擦>……(呼吸音)」
「ん――<タオル擦>――
どぎゃんと? おにいさん――<タオル擦>
タオル、二重にしてあるけん――<タオル擦>
ゆきのひんやりば伝わらないで――あ!」
「えへへっ――あったまってるならよかったとー。
ほんなら、もーっとすりすりするけん――
ん、っしょっと」
;2/右前
「ごしごし――<タオル擦>――ごしごし――<タオル擦>――
ん……(呼吸音)――ああ……こん手拭い、まっこと肌触りのよかとねぇ――<タオル擦>」
「ん……<タオル擦>――住処も、こぎゃん細かかもんも――<タオル擦>――ひとそろい、はじめから用意してくれとったとは――<タオル擦>――
まっこと、まっことありがたかとねぇ――<タオル擦>――んっ」
;8/左前
「ものべののカミさまば――<タオル擦>――犬神ちゃんと、ウチのこと――<タオル擦>――ただ、なんとなしに呼んだんじゃなく……<タオル擦>――
ちゃあんと調べて、よかようにって――<タオル擦>――
えへへっ、お迎え、してくれたんやねぇ――え?」
;1/前
「そらぁものべのに――<タオル擦>――あやかしたちの――<タオル擦>――
よーさんよーさん、んっ――<タオル擦>――
集まってくるとも――<タオル擦>――無理のなかとねぇ――え?」
「……『この町にあやかしが集まってきてるの?』って……<タオル擦>――
そぎゃん聞くとは、おにいさん――<タオル擦>――
んっ……ものべののこと――<タオル擦>――
なんも、なーんもしらんと来たと?」
「……(呼吸音)ふん……ふん……あぁ――<タオル擦>――そぎゃん理由で――<タオル擦>
行き先がものべのとも知らんで、駅からバスに――<タオル擦> ――
――ほんなら、びっくりしたとでしょお」
「車でとおりすぎた町んなかにも――<タオル擦>――
ん? どぎゃんしたと、おにいさん。
なんだか、さっきから急にそわそわ――え?」
「『耳の中に水がはいってるみたい』?……
ありゃ、そら大変やねぇ――
ばってん、おにいさんとゆき、さっきからずーっと一緒
……(呼吸音)……一緒――(呼吸音)――ああ!」
「それ、ゆきのせいやねぇ。
ごめんねぇ――車ん中で、雪華――
雪の華、なーんも考えんでパキって砕いてしもうたけん」
「あん時カケラばおにいさんのお耳にはいって――
うん、そう。ずーっと冷やしとったけん、
溶けんでそのままのことって――」
「ばってん、いまこぎゃん風に――<タオル擦>――
ん、こすって、こすって――
おにいさんのお顔も赤ぉなるくらい、体温ばもどってきたけん――
お耳の中で、きっととろけてしもおたんね――あ!」
「そおだ。よかこと考えた――
あんね? おにいさん。ちょこっとまってね?」
;SE 足音 1/前→10/右前遠
;10
「ん……ここらの引き出し――<引き出し開>――ん……<引き出し開>――<引き出し開>――なかとねぇ。
あ、ひょっとしたら洗面台の方?」
;SE 足音 10/右前遠→11/右遠
;11
「あ、あったあった。えへへ――」
;SE 足音 11/右前遠→1/前
;1
「にぃさん、おまたせ。ほんならね? ゆき――」
;8/左前 接近囁き
「お耳のお水吸い取るついでに――
ふふっ、おにいさんのお耳掃除ば、したげるけんね?」
;環境音F.O