ゆきの耳掃除(左耳)
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;Track3 ゆきの耳掃除(左耳)
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;環境音 洞窟内
;洞窟内の畳の上、ひざの上にタオルをしいての膝枕
;7/左 接近囁き
「(ふ~~っ)」
;7/左 通常
「こっちのお耳に、水ばはいっとー感じ、まだしよっと?
……(呼吸音)――ん。
ほんなら、まずは綿棒つこぉて、お水吸い取らんといけんねぇ」
「ゆきのあんよに頭ばまかせて――らくぅにらくに。
力まんよーに、うごかんよーに……うふふ、いいこにしててな?」
「ほんなら――ん……<綿棒>――ん……<綿棒>――
(呼吸音)――どぎゃんと、おにいさん。
お水に綿棒、あたっとるような感じばしよる?」
「あ……(呼吸音)――わからんと?
ほんならきっと、あたってないとねぇ。
したら……ん。綿棒、すこぉしづつ動かしてみるとね?」
「ん……<綿棒>――
んっ――<綿棒>――
この辺は? ――<綿棒>――
ほんなら、こっちとか――<綿棒+水音>――えっ?」
「あ、お水に綿棒あたっとー?
ふふふっ、やったとねぇ。
ほんなら、このまま――静かに静かに、動かさんよーに、動かんよーに」
「(呼吸音)――(呼吸音)――(呼吸音)」
;7/左 接近囁き
「もうよかとかなぁ? ……よさそ? うん」
;7/左 通常
「ほんなら、よ――っと――<綿棒抜>
どぎゃんと? おにいさん。
あ――すっきりしたと? ほんならよかったぁ。
え? まだ少ぉしだけ違和感ばあると?」
「そしたら……そしたら!
耳かきばして、最後の仕上げに、ちりがみでごしごしって、するんでどぎゃん?」
「ん。わかった。
ほんなら、ね? 今度は竹の耳かきで――ふふっ」
「まずは、浅かところから~<耳かき音>――
こりこりって――<耳かき音>――
かりかりって――<耳かき音>――
どぉお、おにいさん? きもちよかでしょー」
「んふふっ、ほんなら続けるねぇ?
よっ……<耳かき音>――
ん――<耳かき音>――
え? あ――<耳かき音>――さっきの話の?
ん~……<耳かき音>――」
「さっきの話――ああ――<耳かき音>
どぎゃんしてものべのに、あやかしのたくさんあつまるか――<耳かき音>――
ん……そん話ば、ゆきも、くわしゅうしっとるわけじゃなかとよ? ばってん――<耳かき音>」
「それでもよかとやったら――<耳かき音>――
ゆきの知っとることなら、なんでも――<耳かき音>――
あ、うん。ほんなら、な?
じゅんじゅんに話してみるとね?」
「ええと……<耳かき音>――
土佐の高知の、こん茂伸は――<耳かき音>――
むかしむかしから、あやかしたちの暮らせる里として――<耳かき音>――
あやかしたちの間では、つとに有名だったとよ」
「ひめみやいう凄まじか法力をもった人間と――<耳かき音>――、
ななつらおいう大妖(たいよう)――
カミさまにも近いような力をもつおおあやかしとが――<耳かき音>――
ひととあやかしが重なり合わんよーに、隣どおしに例えおっても、触れ合うことばないよーに――<耳かき音>――」
「約束ばして、仕組みばつくって……<耳かき音>
そぎゃんして、人とあやかしを―― 一つのむらに、ずーっと共存させてきたって」
「……ばってん、そん約束やら仕組みやらの、釣り合いばとるのがまっことむつかしかったいう話で――<耳かき音>――
やけん、外から入ってくるモンを、人でもあやかしでもぜぇんぶ拒むんでた――<耳かき音>――
そぎゃん土地が、むかしの茂伸いう話。――<耳かき音>――で――」
「え? ――(呼吸音)――ああ、うん。そぎゃんねぇ。
おにーさんのいうとおり、昔の茂伸と、今の茂伸では、ガラってちごうておるとね」
「おにいさんみたいな人間の旅人も普通に入れるよーになっとるし――<耳かき音>――
それにさっき、車で走った町中に――<耳かき音>――
人間たちがくらしをくらすその中にも――ん――<耳かき音>――たくさん、あやかしおったとでしょお」
「ああ……おにいさんは脇見できんもんね――<耳かき音>――
気づかんかったかもしれんけど――<耳かき音>――
あ! 道ばわたるの、おにーさん待っとってあげたでしょうお――<耳かき音>――
赤と白の髪の毛ばしたおかあさんと、赤と黒の髪の毛ばした、おじょうーちゃんとを――<耳かき音>――」
「うん。そ。
あのこらは、あやかし――<耳かき音>――
確か、あかしゃぐまやらいう家守(やもり)妖怪――<耳かき音>――」
「あのこがおる家は栄えるいう――<耳かき音>
縁起のよろしいあやかし……わっ!?」
「なんねぇおにいさん。耳かきとちゅうにゆきのことびっくりさせよったら……
お兄さんのお耳が危なかとよぉ――え?」
「ああ――うん――<耳かき音>――
『こすぷれ』?いう言葉の意味はゆきにはよーわからんばってん――<耳かき音>――
二本しっぽをごきげんよーふって歩いとったおねえさん。
あのこも、『こすぷれ』? とちごうて、あやかし――<耳かき音>――。
正真正銘の、猫又さんやねぇ――<耳かき音>――」
「そぎゃん風にね? 今の茂伸は――<耳かき音>――
『人とあやかしとが、隣り合って暮らせる村』――になっとーと――<耳かき音>――」
「ん……<耳かき音>――。
今の日本ではほとんどなくなってしまった――<耳かき音>――
“端境(はざかい)”のひとつで……(呼吸音)」
「今の日本では、他に一箇所ものーなってしもーた。
『閉じず、ひらかれている、端境』
「やけん……<耳かき音>――
ゆきみたいに、もともとの土地――<耳かき音>――
ふるさとではもう暮らせんよーになったあやかしが――<耳かき音>――、
ぽつり、ぽつりと越してくる村になっとーと――っと」
「ん~……こっちのお耳ば、だいぶんきれいになったかなぁ? ちょこっとごめんね? おにーさん」
;7/左 接近囁き
「(ふーーーーーーーっ)。
ん~――うん! きれいきれい」
;7/左 通常
「ほんなら、しあげに、えいっ――
<ちりがみでがさごそ>――
うふふっ、どぎゃんと? ちりがみ攻撃」
「あはっ――すっきりしたなら、ゆきもうれしか。
ほんなら、ね? 今度は反対、右のお耳ば――
うふふっ、ゆきにお掃除させてくなっせ?」
;「ごろーん」にあわせ、7/左→1/前→3/右
「ほんなら、ね? 体ば逆に。
はぁい、ごろーん」
;環境音 F.O.