キスってどんな味?
彩花「……彩菜」
彩菜『ん? どうしたの彩花。元気がないみたいだけど……って、このやり取り何処かで覚えがあるんだけど……』
彩花「たぶん、気のせいだと思う?」
彩菜『そうだったら凄く嬉しいんだけどね。で、今度は一体どうしたの?』
彩花「一緒の布団で寝ていい?」
彩菜『別にいいけど、何でまた急に一緒の布団で寝たいとか言い出したのよ。まさか怖い番組でも見て怖くなったから……なんて言わないわよね?』
彩花「…………そ、ソンナコトナイヨ?」
彩菜『分かり易いくらいに言葉が片言になってるからね。まさか、ここまで分かり易い反応をされるとは思わなかったわよ。うん、逆にビックリだわ』
彩花「彩菜は意地悪……」
彩菜『どうして、そんな話になるのかしらね。そもそも、怖い番組なんてやってた? 私の記憶ではそんなのなかったような気がするんだけど』
彩花「あったよ。物凄く怖い番組が。まさか動物の世界があんなにも厳しい世界だとは思わなかったよ」
彩菜『……それって、ただの動物物のドキュメンタリーじゃん。それの何処に恐怖を覚える要素があるの? むしろ、あれって感動系だよね!?』
彩花「シマウマがあんな扱いを受けていたなんて……ぐすっ」
彩菜『この子、シマウマに共感して涙を流してるよ。なに、その無駄な感受性は』
彩花「そんなわけだから、一緒の布団で寝させて?」
彩菜『まったくといってもいいほどに、脈略がないわよね。シマウマが可哀想だから一緒に寝るだなんて意味が分からないわよ!』
彩花「だって、彩菜とシマウマは同じだから……」
彩菜『私が同じなら双子の彩花も同じってことよね? 彩花はそれを分かって言ってるのかしら?』
彩菜『……うん、そして私の言葉を無視して勝手に布団の中に入らないでよ。無視される方の身にもなってよ。結構悲しいんだからね!』
彩花「……彩菜。そんな所で騒いでたら周りの人達に迷惑だよ。大人しく布団の中に入らないと」
彩菜『彩花に常識を問われるのがこんなにもムカつくとは思わなかったわよ。私にこんな大声を出させてるのは、彩花のせいなんだからね!』
彩菜『…………うん、だから人の話を無視しないで』
彩花「まったく、ほんと彩菜は我儘だね。どれだけわたしに構って欲しいの?」
彩菜『全部、彩花のせいだってば! それにそのムカつく顔は止めて! 何で、そこまでムカつく顔をされないといけないのよ!』
彩花「生まれた時からこんな顔だけど?」
彩菜『うん、顔は昔から変わってないわね。でも私が言いたいのは表情のことだから。ムカつく表情を止めてって言いたいんだからね』
彩花「ふぁ……何だか眠たくなってきたね」
彩菜『ほんと、とことん自由なのね。まぁ、眠いっていうのは同意するけど、それでも少しは私のことを構って欲しいわね』
彩花「にひひ……彩菜は寂しがりだね」
彩菜『もう、それでいいわよ。だから少しは私の話を聞いてちょうだい』
彩花「そういえば、キスってどんな味がするのかな?」
彩菜『話を聞いてって言った瞬間から、話題を変えるの止めてくれないかな? 今の流れとしては私が会話の主導権を握るところだよね?』
彩花「よくドラマや漫画だとレモンのような甘酸っぱい味って表現されてるけど、実際はどうなのかな?」
彩菜『あ、もうその流れで会話を進めていくつもりなのね……』
彩花「恋愛経験豊富な彩菜さんは、そこのところどう思うの?」
彩菜『どうして私が恋愛経験豊富って設定になってるのかしらね? 生憎と残念ながらそんな恋愛経験なんてないからね。ほんと悲しいことだけど、キスすらしたことないわよ』
彩花「そうなんだ。可哀想だね」
彩菜『妙に引っかかる言い方をするわね。もしかして、彩花はキスの経験があるっていうの? そんなバカなこと言ったりしないわよね!?』
彩花「ふふん♪」
彩菜『なに、その勝ち誇ったような顔は! まさか本当にキスの経験があるって言うの!? 私を置き去りにして先に大人の階段を昇ったの!?』
彩花「……キスなんてしたことないけど?」
彩菜『な――っ!?』
彩花「そもそもキスをしたことがあったら、どんな味がするのかって聞かないよ。ほんと彩菜はバカだね。人の話を聞いてないし、一人で勘違いしてるし……」
彩菜『事実なんだけど、彩花に言われると無性に腹が立つわ』
彩花「彩菜の気持ちはどうでもいいとして、キスってどんな味がするのかな?」
彩菜『人の気持ちをどうでもいいって切り捨てるのは感心しないけど、大した味はしないんじゃないの? 結局は単純に唇を重ねてるだけだからね』
彩花「はぁ……彩菜は夢がないね」
彩菜『悉く彩花が私の夢をブチ壊していったからね。こんな冷めた見方もしちゃうわよね』
彩花「酷い言いがかりを見たよ。まぁ、それはそれとしてどんな味がするのか、わたしは実際に確かめてみたいの」
彩菜『確かめるって、キスをする相手なんて……って、何でそこで私の顔をマジマジと見ているのかしら? まさかとは思うけど、私とキスをするとか言うんじゃないでしょうね?』
彩花「鋭いね。流石彩菜だよ。彩菜の鋭さは天下一品だね」
彩菜『嬉しくもないし、出来ることならキスをするのは勘弁して欲しいかなーって』
彩花「却下。彩菜にはわたしの知的好奇心を抑えることは出来ないの」
彩菜『ちょっ、ま、マジでキスするの!? ほんとに私とキスをするの!?』
彩花「んー」
彩菜『あ、彩花――んむぅ!? んぅ、んっ、んちゅ……ちゅっ、んぐ……ちゅぱっ』
彩花「ぷはっ。彩菜の味がした……」
彩菜『私にキスをしたんだから私の味がするに決まってるでしょ。まぁ、晩御飯のオカズの味がしたとか言われるよりはいいけどさ……』
彩花「ファーストキス、彩菜に取られちゃった♪」
彩菜『うん、実際に取られたのは私なんだけどね。でも、これで満足したわよね? もう寝るわよ』
彩花「まだ満足してないよ? もう少し彩菜とキスをしたいな」
彩菜『ちょっ――何でキスに嵌ってるのよ!? も、もういいでしょ。キスなんかより寝ようよ』
彩花「さっきは軽いキスだったけど、今度はねちょねちょに深いキスをしてあげる」
彩菜『ねちょねちょって……言葉だけで嫌な予感がするわね』
彩花「彩菜の口の中にわたしの舌をねじ込んで蹂躙してあげるね♪」
彩菜『笑顔で恐ろしいことを言わないで欲しいわよ。それと、ジリジリと近づいてこないで欲しいかな。さすがに口の中を蹂躙されるのは勘弁して欲しいんだけど……』
彩花「却下っ♪ んちゅー♪」
彩菜『んむぅ!? んふぁあ、んっ、ちゅる……んぐっ、れる……ちゅっ、じゅりゅ……んむっ、むぅ、んぁ……ぱぁっ!?』
彩花「逃がさないよ。まだまだ彩菜の口の中を貪るの」
彩菜『あ、彩花――んんんんぅぅぅ~っ!?』
彩花・彩菜「『んちゅっ、ちゅぱ、ちゅる……ぢゅちゅ、じゅるるる、れろれる……ちゅぱ、ちゅっ、ちゅちゅ、ちゅるる……じゅっ、ちゅぱっ』」
彩花「何だかキスをしてると、頭がぽーとしてくるね」
彩菜『はぁ……あぁ、あっ。穢された。口の中を激しく穢されちゃった。彩花の舌でベロベロって蹂躙された……』
彩花「何でそんなにも落ち込んでるの? キス、気持ちよくなかった?」
彩菜『気持ちいいとか気持ちよくないとか、そんな問題じゃないわよ。無理やり人の唇を奪っておいて』
彩花「唇だけじゃなくて唾液も奪ったけどね。ついでにわたしも彩菜に唾液を奪われました」
彩菜『うぐ……っ、あ、あれは何というか……その流れの中での出来事で――決して私が自分から率先してしたわけじゃ……』
彩花「そうだね。全部わたしが悪いんだよね。彩菜は何も悪くはないもんね」
彩菜『……そんな風に言われると私の方が悪いような気がしてくるから不思議だわ』
彩花「彩菜は色々なことを気にし過ぎだと思うよ」
彩菜『そう……』
彩花「さて、知的好奇心を満たすことも出来たし、そろそろ寝よっか」
彩菜『私は最初から寝たかったんだけどね。全部彩花が邪魔をしてくれたのよ?』
彩花「反省してます?」
彩菜『聞かれても知らないわよ。てか、そろそろ寝かせてちょうだい』
彩花「今夜は寝かさないぜ? 彩菜を激しく鳴かせてやる」
彩菜『……お休みなさい』
彩花「あーん、無視しないでー。人の話を無視するのは人間として最低なんだよ!」
彩菜『散々人のことを無視してくれた彩花に言われても欠片も説得力がないわよ。それと、あまりうるさいようだと追い出すからね』
彩花「うぅ……ごめんなさい。シマウマさんが怖いから一人にしないで」
彩菜『まだシマウマを引っ張るのね。てか、シマウマに恐怖を感じてたの!?』
彩花「…………お休みなさい。ぐぅ」
彩菜『舌の根も乾かない内に人を無視するなんてね。何でここまで私が彩花に引っ掻きまわされないといけないのかしらね』
彩花「ん、んぅ……ぁ」
彩菜『寝たふりかと思ったけど、本当に寝てしまってるし。はぁ……もういいや、私も寝よ』
彩菜『お休みなさい彩花』