サキの耳かき(右耳)
;環境音 ストーブの火。薬缶のお湯、しゅんしゅん。
;3/右 顔寄せ
「(ふ~~~っ)」
;3/右 通常
「ん……えへへっ。人間に膝枕してやんのも初めてだどもな――
こら……うん。なんだかええもんだなぁ。
牛鬼のとおこがとろけだわけも、なんとなーくわかるなぁ」
「ああ――うん。
とおこはな? 旦那さんに膝枕してやってんの。
よく晴れたぽかぽかした日に、山ン中の開けたのっぱらで」
「……してるとおこもされてる旦那さんもしあわせそうで、
もうとろけそうな顔してなぁ。
ほんだでサキも、一度はしてみてぇとなぁって思うてたでよ」
「えへへっ――あんちゃが来てくれて、よかっただ。
耳かきもなぁ?
ふふっ、とおこにもらった新品があるで――
ほっただ……そろそろ、はじめっか」
「ん……(呼吸音)……んん?
ゆーか……あんちゃの耳の穴、ちっせくねが?
え? 『ふつうだと思う』……
ん~……(呼吸音)――そんだか、こいが普通だか」
「とおこ、どーみても不器用そうなのに――
どっただしてこっただ小さな穴ん中にみみかきいれて、
旦那のこど、あれほどとろーんてとろげさせてっだろかなぁ」
「ん~……んだども、とおこにできるこどならよ、
サキにきっとできるでな。
……安心しろ? あんちゃ。
オラがあんちゃのごと、耳かきで、
とろっとろにとろけさせてやるからなぁ」
「(呼吸音)……ん……<耳かき音、軽>
――どげだ? あんちゃ。いまぐれのなら痛くねが?
あー……うふふ、平気だったら、えがったなぁ」
「んだば、耳のフチとかその辺から、
まずはじわじわ、掻いてくなぁ?」
「ん……<耳・軽>――
ふ――<耳・軽>
(呼吸音)――<耳・軽>
――よ……<耳・軽>――」
「あ……細けのなかなかとれねだな――<耳・軽>――ん……(呼吸音)」
「ふふっ――なんだかこうしてゆっくり耳かきしてるとさ――<耳・軽>――
あんちゃの耳で――<耳・軽>――
宝探ししてるみてぇな気持ちになってくるなぁ――<耳・軽>」
「んだども――(ふうっ)――
ん~あんちゃ、耳のフチ綺麗すぎて、すぐ終わっちゃうったなぁ。
いっつも手入れしてっだか?」
「あ……湯さへぇったとき手ぬぐいで――
そっただこどでも、ずいぶんちがってくるもんだろな」
「んだども――<耳・軽>――
これじゃやりごたえねぇべさ。ん……(呼吸音)」
;3/右 顔寄せささやき
「……ゆっくりやるで。
な? もそっと奥まで――入れてさせて、なぁ?」
;3/右 通常
「えへへっ。んだらば、やってみるなぁ?
ん、と――(呼吸音)――(ごくっ)
そーっと……そおっ――っと――<耳かき音>」
「ん……暗くて見えづれ……
耳こさ さっと引っ張って、
いくらか見えやすくしても――あ、ええだか。
えへへ、あんがとな、あんちゃ」
「へば。んっ――<右耳の端ひっぱる>――
あ……見えだ……こら――おお――
中にはいくらか、おっきいのころがってっだな」
「んまぐ取れるがな? ん……慎重に――慎重……に――
<耳かき音>――んっ――(呼吸音)――<耳かき音>」
「お……っと――<耳かき音>――
んっ――(呼吸音)――
っと! へへっ、みて、あんちゃ! いっことれただ。
あんちゃはどだった、痛ぐねがった?
……(呼吸音)――」
「あ――『気持ちよかった』なら、なによりだぁ。
えへへ、サキもうれしいで」
;SE ティッシュで耳かきをふく
「へば、もーいっこ――ん……<耳かき音>――
っ――(呼吸音)――あれっ、逃げ――<耳かき音>」
「っと――あわてねで……(呼吸音)――
ん――<耳かき音>――おっ――<耳かき音>――
よしっ――(呼吸音)――んふふ~っ」
;3/右 顔寄せ
「あらかた取れただ。
さっきとくらべて、今のどだった?
あんべぇよくて――えへへ、とろけちまったか?」
「ん……(呼吸音)――」
;3/右
「あー……『今のはちょっと緊張した』だか。
そういわれだらもっともだ。
サキも力んぢまたもんなぁ。
とろけさすには、もーっと緩まねばいけんみでだな」
「へば――(呼吸音)――んっ!」
;SE 顔をやさしくなぜる
「……なでなでで、まず形からゆるもうなぁ。
サキのなでなで、人間のこもりしどったときにも――
えへへっ、大評判だったでな」
「んだども……<なでなで>――んふふっ、
こっただおっきなわらしこ撫でんのははじめでだ。
ちっさなあかんぼのほっぺぷにぷにするのも悪ぐねぇけど……」
「<なでなで>――ん……(呼吸音)――
あんちゃのこど撫でるのも、悪ぐねな。
なんかこう……胸の奥んとこ、ぽーっと温もるよな感じがすんなぁ」
「って! 耳かきの途中だっだな。
ん――(ふうっ)――あどいっこ、おっきいの残っとるだで、とらねばな」
「ん……<耳かき音>――んっ――(呼吸音)――
よっ――<耳かき音>――え? サキのこどか?
――<耳かき音>――ああ――秋田で――
<耳かき音>――」
「んだ、なぁ。お酒さ欲しさに人間の荷物運んで、わらしこあやして、火事消して……<耳かき音>――
そっただこどをくり返す間に――<耳かき音>――
いつの間に――神社が出来て――(呼吸音)――
カミ様にまづられとったなぁ」
「ん? ……『そのカミ様が、どうして秋田を離れて』か?――(呼吸音)――
ん、だな……<耳かき音>――」
「……(呼吸音)――聞かせておもしれ話しでもねけど……<耳かき音>――
なんでかな。あんちゃにだったら――(呼吸音)
聞いてもらいて気もするな……<耳かき音>――」
「んだども……<耳かき音>――
ん――<耳かき音>――
っと――(呼吸音)――
よしっ! へへっ――<耳かき拭き>」
「ちょうどこっちの、右の耳こさ、すっかりまるっと綺麗になったで……」
;顔寄せ
「(ふ~~っ)
……話の続きは、左のお耳、
綺麗にしながら、ゆるりど、な」
;環境音 FO