2-1.『トップオタからDMで秘密の撮影会に誘われた場合』
……つ、次の方、どうぞ。
は、はい。今日は、来ていただいて……あ、ありがとう、ございます。
す……すみません。私、握手会なんて、は、初めてだから……緊張、してしまって。
私の、こと、覚えていただいて……。これから、応援していただけたら、嬉しい、です……。
……は、はい? SNS、ですか?
はい……始めるように、言われたので。始め、ました……。
日常の呟き、できるだけ、しますので……。よければ、見ていただけると、嬉しい、です……。
……え? メッセージ? ……ですか?
わ、わかりました。後で、拝見します……。
……あ。そろそろ、時間の、ようです……。
はい。ありがとうございました。ぜひ、また来てください……。
次の方、どうぞ……。
* * *
……はぁ。ふぅ……
あ。ありがとう、ございます。吉谷さん。
お水、いただき、ます……。
はい。その。すごく……とても。非常に。緊張、しました。
心臓が、口から飛び出てしまいそうでした……。
……そう、ですね。慣れなければ、いけないとは、分かっているのですけれども。
場数を踏めば、何とかなるのでしょうか……。
……あ。すみません。スマホ、見させて、もらいます。通知が来ているので……。
…………。
……SNSのメッセージだ。
さっきの人かな……?
……あ、はい。さっき、握手会に来てくれた方が……後でメッセージ飛ばすから読んで、と。仰ってましたので……。
……え。ダイレクトメッセージって……受け取れないように設定したほうがいいんですか?
あ……そ、そうですね。変なメッセージが来ちゃうと、大変ですね……。
わかり、ました。一応、このメッセージだけ確認してから、設定し直します……。
えっと……。
…………。
〝トップオタ〟……?
……あの。トップオタって、なんだか、分かりますか?
……へえ。一番のファンのことを、そう言うのですか……。
〝トップ〟の〝オタク〟だから、〝トップオタ〟なんですね。
なんでも……この方、他のアイドルさんの、トップオタだったらしいんですけど……そのアイドルさんが卒業しちゃって。
今、新しく推す人を探しているそうで……
私のことが気に入ったから……推してもいいよ、とのことです。
……ふふ。確かに、すごい言い回しですね。
ファンになっていただけるのは……嬉しいですけど。
でも……? そのためには条件がある……と。書かれていますね。
トップオタさんの名義で、撮影会を開くから……
そこに、事務所には内緒で来て欲しい……って。
自分の知り合いも、たくさん来させるから……その人たちをまとめてファンにできれば、あっという間にトップアイドルになれるよ……。
……とのことです。
……すごい、条件ですね。
〝体に触ったりとかは絶対しないから〟と、書いてありますけど……。
アイドルに対するこういうお願いって、一般的なんでしょうか……?
……ですよね。さすがに、一部の過激なファンだけ、ですよね……。
…………。
あ。でも、この方……トップオタだった、というのは、本当みたいです。
グッズもCDもいっぱい……。いくらぐらいかけたんでしょう……。
……え? あ。はい。もちろん、断ります。
いえ……申し訳ないけど、無視のほうがいいのかな?
はい。分かりました。
絶対に、返信しないようにしておきます。
絶対に……。