Track 6

6 贖罪(トゥルーエンド)

...ふん、起きたか。 イビキを立てて、ぐっすり仮眠してたぞ。 くすくす、だらしない。 ふわああああ...。 ま、私もついさっきまで、お前の膝を枕代わりにして休んでいたところだ。 マゾの膝を枕にするのも、悪くはなかったぞ...くすくす。 (少し間) しょっと。 冗談はここまでにして、1つだけ聞いて欲しいことがある。 さっそく起きたばかりで悪いが...お前が眠っている間、ある決断をした。 私自身の過去と、未練の話をしたい。 ふん、わざわざ理由を知りたいのか? ...理由は2つある。 お前が欲望に流されず、自分の未練に向き合った変わり者だったからだ。 それに、最後の最後には、私を性欲の対象としてではなく、1人の存在として 見ていたのが伝わった。 性欲という強烈な欲望に惑わされず、私と対話しようとしたのは、お前が初 めてだ。 くすくす...本当に変わった変態マゾだな。 ともかく、お前は信頼できそうな人間だ。 私も信頼の証として、過去をさらけ出すことにした。 聞いてくれ。 (少し間) 私の本名はレクナ。 子供の頃から、お前は暗いから、不気味だから、そんな理由だけで距離を置 かれ、生前には全く仲間が出来なかった。 誰からも必要とされなかった。 学校でも、家でも、どこにいてもこう言われた。 お前はいつも目が死んでるし、何を考えてるか分からない。 両親でさえ、暗い性格だった私を責めた。 こんな暗い子に育てた覚えはない。 お前は明るく社交的であるべきなんだって。 だから、どこに行っても帰っても、そこには居場所がない。 誰も私を受け入れようとはしない。 この世界の醜い人間達のせいで、穏やかな心は奪われていった。 (少し間) 私がどうやって死んだのかは思い出せないが、死の間際にこう思った。 思い通りにできるような人形が欲しい。そうすれば私にも仲間ができる。 身勝手で歪な願望だが、この世界ではそれが叶ってしまった。 (少し間) 私はネクロマンサーになり、この牢獄で誰かに言われた使命を遂行してき た。 相手の未練...生前の欲望を叶え、その代償として魂を吸収する。 欲望に流され続けた人間は、3日目が終わる頃には完全に魂を奪われ、傀儡 にされる。 何度も何度も、お前のような人間をずっと傀儡にしてきた。 (少し間) だが、そんな人形を作っても、虚しいだけだった。 意思がない相手を思うがままに操る。 そんなことはただ虚しいだけで、数日も経たない内に飽きる。 (少し間) お前のおかげで気づかされたんだ。 自分のマゾ性癖と向き合って、こんなのは間違ってる、妄想は妄想であるべ きだって気づけた、お前のおかげでな。 結局、私が本当に求めていたのは、傀儡なんかじゃない、1人の人間として、 対等に接してくれる存在だった。 誰か1人でもいい。 ここにいていいんだよって、実際に口に出さなくてもいいから、そんな態度 で接してくれる人間に救われたかったんだ。 くすくす、それがこんな変態マゾだとは思わなかったが。 ああ、ほんとに滑稽だな...くすくす...っぷっはは。 (少し間) はあ、でも、お互い吹っ切れたな...くすくす。 でも、まだ全てが終わった訳じゃないぞ。 明日からどうなるか...考えていたか? ふう、やっぱりお前も不安なんだな...。 本当に、どうなるか分からない。 ◇「」を右耳に囁く □服が密着する音(ごそごそ) 「正直、私も胸がそわそわする...。 お前が消えるんじゃないかって思うと、怖くなってきたんだ...。 はあ...これが冗談に思えるか? からかうのはよしてくれ。 その...素直になるのは昔から苦手なんだ。 ふう、冗談を言いながら、マゾ性癖を弄ってた時とは訳が違うんだぞ...くす くす。 (少し間) □指定箇所まで時計の針が動くSEを続ける んう...もう明日が来るぞ。 よし、こうなれば仕方ない。 時計の針が重なるまでに、これだけは言わせてくれ。 ん...その、これからはお前と一緒に過ごしたい。 明日になっても、それからもお前が生きていれば...という前提だが。 くすくす...ああ、勘違いはするな、マゾに恋愛感情を抱くはずがないから な。 お互いを尊重して生きるという意味だ。 これからは傀儡ではなく、対等な関係として、一緒に生きていきたい。 だから、もう二度とお前のマゾ性癖をかなえてやることはできない。 恐らく、これ以上お前の望みを叶えてしまえば、傀儡になってしまうから な。 (少し間) おい、何を迷っている。 お前は私と一緒に生きることよりも、このまま虚しく性を貪ることに執着す るのか? ふん、そう言うと思った。 こんな救いのない世界だが...私と一緒に生きてくれるか? ふん、一応言っておく...ありがとう。 □時計の針が動くSEを終了 □時計の針が重なる音(カチッ!) □指定部分まで、建物が崩壊するような音を続ける む、なんだ?牢獄がどんどん崩れていって...。 そうか...未練に隠された秘密。 思い出した...どうすればこの未練から解放されるのか。 ああ、聞いてくれ。 誰が言っていたかは思い出せないが、この牢獄は未練という罪を背負った人 間が囚われる不思議な場所だった。 これは最初に説明したな。 だが、未練を断ち切れば罪そのものから解放される...。 お互いの未練がなくなった今、私達は牢獄から解き放たれたんだ...。 っ、なんだ...全身が光に包まれて...。 □建物が崩壊するSEを終了 □異空間に吸い込まれるようなSE (しばらく間) □風で草が揺れる音を最後まで続ける □鳥のさえずりを最後まで続ける それよりも、ここは...? おはな...ばたけ? う...太陽がまぶしい。 ん...でも、綺麗だ...。 (少し間) ふう、助かった。 あそこに大きな木がある...とりあえず日陰で休もう。 □芝生を移動するSE(2人分の足音) (少し間) ん、ふああああ...にしても、不思議な気持ちだ。 それに...急に眠くなってきた。 ん、お前もか? はあ...仕方ない、お互い横になろう。 ◇ここから最後まで、右に囁く。 「ふう... 風が心地いい...す~は~す~は~ にしても、こんなことになるなんてな。 改めて、礼を言わせてくれ。 人を信じられなかった本当の未練、お前のおかげで乗り越えることが出来 た...。 ふん、あまり恥ずかしいことを言わせるな。 くすくす、何をニヤついてるんだ? はあ、この調子なら、またお仕置きが必要だな。 ん...ちゅううう(右耳にキス) くすくす...今のは不意打ちだ。 お前の魂じゃなく、心を奪ってやったぞ、くすくす...なんてな。 (少し間) ふあああああ...もう限界だ...とりあえず寝よう...ん...くー...はー...ん...ふう... はー...ん...くう...はあ...んううう...むにゃむにゃ...」