2. この雨音は体に良いぞ
決してみたいなふりをするでもなく、
山のように悠然と佇む。
一刻、一刻を屹立とあらっとする。
それが、己である。
私の呼吸を感じるのだ。
同じように息をしてみろ。
体は山の一部分。
不動の大木が如く根を下ろし、
しかし心は、羽のように軽い。
そうだ。心を静め。
私の息遣いをまねるのだ。
心地いいか?
うっかりすると寝てしまいそうか?
それもよいな。
この雨音は体に良いぞ。
しばらく休んでいくといい。
長年蓄えていた神気が、
そなたに伝わっていけば、病も癒えよう。
うん?見ず知らずの者に
かように尽くそうとするのはおかしいだと?
そう思うのは人がいたす過ちと言うものだ。
生きていく為のつまらぬ浅知恵にすぎぬ。
万物は大地より命を授かり、生まれ、消えゆくもの。
故に、受け取った恩を返すべく、報いるのは当然である。
そなたら、人の子とて偉大なる大地が生み出したもの。
だから、私は助けとなる。
例えそれが取るに足らぬ存在であってもな。
大いなる存在とは小さき者を受け入れねばならぬものだ。
ぼつ、ぼつ、ぼつ。
ぼつ、ぼつ、ぼつ。
ほら、力を抜け。
そのように構えていてはどんな癒しもそなたの助けとならぬぞ。
そうだ、いい子だ。
ゆっくりと肩の力を抜け。
ぼつ、ぼつ、ぼつ。
この山にいれば人の意図、企みなどが
実に下らぬと、感じるはずだ。
心を病み、悩むことが、如何にばかばかしいか。
ぼつ、ぼつ、ぼつ、ぼつ。
何も、心病むことはない。
そなたは何も…悩むことなどないのだ…