無人島での生活
…ふぅ、お待たせしました今日も、いっぱい海藻を獲ってきましたよ他にも貝やお魚がありますし、お腹、膨れちゃいそうですね…もしかして…飽きてしまわれました?
い、いえ、無理をなさらなくても良いんです。
仕方ありませんよね…無人島に来てから、毎日同じ物ばかりで…実は、少しだけ貴方様の寝言を聞いてしまったんです。
…街に帰りたい…と。
そうですよね…はじめの頃は楽しくても…もう、限界…ですよね…帰りましょうか?
貴方様の、住んでいた街へ………私のことは、気にしないでください。
ここで生活するのは、楽しいなって思っていました。
…… 一度逃げ出してしまった私は、もう仲間の元へ帰る事は出来ませんが、大丈夫です。
私はこの先も…ここで…ぁ……それは。
正直、貴方様とお別れをするのは、とても寂しいです。
けれど…仕方がありません。
私は、人ではありません。
貴方様とは住む世界が違うのです。
お誘いして頂けるのは、とても嬉しいです。
…いえ、でも私は、街に行くことは、できません人の街に近づくということは、その分、捕まってしまう危険も増えてしまいます…それこそ、人として生まれ変わらないと……わたくしが、人の姿になれば…!
そうです!
そうすれば、全て上手くいきます…別に、冗談を言っているわけではありませんよ?
私が足を得る方法…本当に、あるんですそれは………魔法、と言えば分かりますか?
人の噂として語られているセイレーンが目の前にいるんですから、魔法使いがいてもおかしくはないでしょう?
…その方にお願いをすれば、私も人として生きられると思います…貴方様と、一緒に…。
人として、暮らすことができます…そうですね今のように、自由に海を泳いだり、潜ったりするのはできなくなります。
…それが寂しくないと言えば、嘘になります…ですがその代わり、貴方様が側にいてくれるのですよね?
一人でずっとここにいるよりも、その方が、私は幸せです……それに、この身体のままだと、貴方様のお側に行けません。
とても、不便です…ですから、私、決めました。
人になろうと思いますそれでも、良いでしょうか…?
……ぁ、私と一緒でも、宜しいんですね?
人の生活には不慣れなので、きっと…ご迷惑をお掛けすることになるかもしれません…それでも、後悔…しませんか?
…ありがとうございますそれではっ、さっそく行きましょうさぁ、こちらへですから、海の方に、こう…ばしゃーんと。
飛び降りてください…ふふ、大丈夫ですよ。
高さは全然ありませんし、私が、受け止めて差し上げます。
――さぁ、一思いに来てください。
…また一緒に、海の散歩をしませんか?
――ひゃっ、ふふ捕まえた♪ なーんて、冗談ですよ……でも、このまま離したくと思ったのは、ほんと…です私のために、飛び込んできてくれたのが、嬉しくて……うぅ、また緊張してきました…この後、また…しないといけませんから。
せ、せっかく誤魔化したのに、き…キス、なんて。
直接…言わないでくださいよぅ……ん、ちゅぅ……ちゅっ、ちゅぅ……ん……ちゅっ、はぁ……あぁ……しちゃい、ましたね。
……その、多めにしてしまったのは…この頃、貴方様に触れていなかったので…。
そのせい、と言いますか…はしたない子だと、思わないでくださいね……うぅ。
困らせて、いませんか…?
じゃあ…お言葉に甘えて、もう一回、だけ……ん、ちゅっ。
ふふっ……では、一緒に海の中へ――………あぁ、気持ち良い…こうして、貴方様と海を泳げるのも、これが最期ですね…でも、だからこそ、寂しがってるばかりでは、いけませんね今は一緒に、この心地良さを楽しみましょうずっと、ずぅっと…いつまでも、二人の間で忘れないように…あ…手を。
ふふ、私の手のひら…小さいですか?
貴方様の。
この大きな手に包まれて…何だかほっとします……貴方様も、ですか?
ふふ、両想い…ですね私の小さな手の、温もりで…貴方様が安心して下さるのは、とっても嬉しいです………先ほどの魔法使いのお話ですが、私に知り合いが一人だけいるんです。
街に着いたら、先に港で待っていて頂けますか?
魔法で変わる事ができたら……すぐに貴方様の元へ戻ります。
では、行きましょう。
貴方様が暮らしていた、懐かしの故郷へ…私と、一緒に。