Track 4

マスターって、呼ばせて、ください

…うぅっ……ぐすっ……うっ…うぅっ…。 …ぐすっ…。 …っ!は、はいっ…どう、されました? あっ……。 【ニィナ】す、すみません。 勇者さま…。 いえ……その、実は…私…。 こわくて…あんまり、眠れないんです…。 …ここは、安全だと…分かってるはず、なんですけど…。 どうしても、怖くて…少しの時間しか、目をとじる事が出来ないんです…。 今でも、夢に出てくる光景が…。 【ニィナ】ゆ、勇者さま…すみません、手を、握って……いただいても、いいですか…? あ、ありがとうございます…。 私……ずっと、あの場所で囚われていたので…目をつぶると、どうしても思い出しちゃって……。 体が、勝手に震えちゃうんです…。 動けないくなっちゃうんです…うぅっ……ぐすっ…。 忘れなきゃ、ダメなのに……ここには、このおウチには、勇者さまが一緒にいてくれるから、安全だって…。 頭では、分かってるはずなのに……なんで……ぐすっ…。 あっ……。 うぁ……勇者、さまぁ……ぐすっ、ぐすぐすっ…。 うっ……うぅぅ…。 …んっ……あ、ありがとうございます…。 …すみません……。 勇者さま……お願いが、あります…。 本当は、恥ずかしいんですけど……もっと、勇者さまの温もりを、感じたいんです…。 抱きしめて、もらえて、少しだけ、震えが治まってきてるので…。 もっと、ぴったり、くっついても……いいですか…? お願い……できませんか…? ありがとう。 勇者さま…。 もっといっぱい、くっつきたいです…。 【ニィナ】あぁ……勇者さまのお体……温かいです…。 体、全部……勇者さまに包まれてる…。 うぅ……。 お願いを、聞いてくれて……ありがとうございます。 勇者さまが、添い寝して、抱きしめてくれていると、体の震え、全部、止まりました…。 …私の話……、まだしてなかったですね…。 聞いてもらっても、いいですか……? …私、家族と一緒に暮らしてたんですけど……ある日、突然、目の前で…。 …みんな、殺されちゃって…。 お前は、売り物になるから殺さないでやるよ……って…。 そのあと、奴隷商人の元に連れて、いかれました…。 私の扱いは商品だったので……酷いことをされたり、傷つけられることは、なかったんですけど。 売れないと、毎日、毎日……罵声を浴びせられ続けました…。 食事は硬いパンを与えられて、それでなんとか……生きてこられたんです…。 周りにも同じような境遇の子はいたんですけど、誰も話す気力なんてなくて…私も、おんなじでした…。 …う、売られていったら、どんなひどいことされるんだろう…ってずっと考えてたんです。 目が覚めると、隣の檻にいた子が、いなくなっている日が続くようになりました。 次はいつ、私がそうなるのかと思うと…毎日、怖くて……怖くて…何も考えなければ、楽になるのに……それも、できなくて…。 …私、こんなに勇者さまにお世話になっているのに……何も、できなくて…。 勇者さまに、ご迷惑をかけることしか、できてません…。 …ごめんなさい……お役に立たなくて…ごめんなさい…うっ……ぐすっ…。 私はすぐにでも、出ていくべきなんです……これ以上、勇者さまに、ご迷惑は…。 …ゆ、勇者さま? …勇者さまも、一緒に? 出ていく? すみません。 えっと、何を……言われているのか…言葉の意味が、分からないの、ですが…。 他の街で暮らすって…だ、ダメですよぉっ。 …冒険者のお仕事なら、別の街でもありますけど、そういう話では、なくて……ですねっ。 …そんなことしたら、勇者さまの今の地位とか、この家とか……全部捨ててしまうことになるんですよ? …それでも……いいんですか? …私と一緒に、居たい……なんて…。 ズルいですよ……勇者さま……ぐすっ…。 そんな風に言われちゃったら、私……ダメって言えないじゃないですかぁ…。 うぅっ……ぐすっ……うぇ……うぅぅぅ…。 …ほ、本当に……私なんかのために、ここの生活を、捨てちゃっても、いいんですか…? …分かりました。 勇者さま……ありがとうございます。 勇者さま……いえ、マスター…。 マスターって、呼ばせて、ください。 私、マスターのこと、大好きです…。 優しくて、頼りがいがあって…すごく、温かい人…。 大好き……私は、マスターと暮らしている、今の生活が、すっごく幸せ、です。 ポカポカしてて、心が安らぐんです。 私、マスターと一緒に居たい、です。 ずっと…おそばに、居させてください…マスター。 うぅぅ……ありがとう、ございます…。 あぁ……こうやって、マスターの温もりを感じていると…すっごく、安心できちゃいます。 さっきまで、あんなに怖くて仕方なかったのが、嘘みたいです。 …そう、ですね、今ならちゃんと、眠れるかもしれません。 でも、マスターがこの部屋から、出て行っちゃったら……ええと、その……分からない、かも、なんて…。 ま、マスター? 私が、眠れるまで……手を繋ぎながら……寝てくれるんですか? そ、そうですね……これなら、すごく、安心です。 傍に…いてくれる…。 包まれてるみたい……です。 そうですか……そう、ですよね……マスターはずっと一緒に、居てくれる。 朝起きたら…… 一緒に、ご飯食べて、お仕事に行く、マスターを見送って…。 帰ってきたら、また、一緒……。 マスターは、私のことをいつも、気にかけていて、くれる。 今日だって…泣いてる私に、気付いて…来てくれたんですもんね。 マスター…ありがとう、ございます…やっと…ぐっすり……眠れそう…です。 ……すー……すー……んぅ……すー……すー……。 だい、すき……ます、たぁ……すぅ……すぅ……。 ……すー……すー……んぅ……すー……すー……。