「仙岱名物『ぴんこ団子』」(団子を焼く音)
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;Track2 仙岱名物『ぴんこ団子』
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;3/右
【紅】「おばちゃんの店。今ね、一番の有名店になってるんだって、びっくりだけど、当然だよね!」
;SE ドア開け
;SE 足音
;環境音 団子屋店内(普通の空調)
;団子焼く音 参考動画 https://youtu.be/ErrKR-OfKrw https://youtu.be/s_taSqzs_Xg
;7/左 (マイクと同じ視線)
【紅】「あ、おばちゃん。ひさしぶり! ぼくのこと覚えてる?
南颯鉄道の、ガタンゴトン亭の――そう、紅!!」
【紅】「うれしい、覚えててくれたんだー。よかった。
ガタンゴトン亭やってたときは、本当にお世話になりました」
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……あはは、あのころより元気に見えるのは当然だよ。
だって、いまはまた相棒と一緒に走れてるから。
エンジンを止められてレストランにされてた紅のキハ101と、相棒――マスターと一緒に、線路の上を走れてるから」
【紅】「もちろん、ガタンゴトン亭でウエイトレスさんやらされてるときも楽しかったよ?
乗務してたら絶対ムリなレベルでいろんなお客さんたちとお話できたし、味覚センサー増設してもらえたのも今から思えばよかったし」
【紅】「そのおかげで、ヘヘ、おばちゃんとこのぴんこ団子の美味しさもわかるようになったんだしね――
って!」
【紅】「そうだった。あのね、おばちゃん、今日はお願いがあって来たんだ。
えとさ、みかん鉄道沿線の素敵なとこを音で紹介しよう、みたいな企画があって。
それで、みかん鉄道の起点、颯馬仙岱(さつませんだい)の一番の名物っていったら、
やっぱり絶対、ぴんこ団子だと思うから」
【紅】「だから、お団子焼く音じっくり聞かせてほしいの……って、え……(呼吸音)(呼吸音)――
『音なんてほとんどしない』って――」
;7/左(マイク向き)
【紅】「そうかな? そうだっけ? してる気がしたけど――音。
パチパチっていい感じの、いかにもおいしそーなの――(呼吸音)(呼吸音)――だよね、してたよね」
;7/左(マイクと同じ視線)
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)――あ、うん。実際やってみて聞かせてもらえたらうれしい、
ね! 相棒もよーく聞いててね。なんか、あんまり音しないみたいな話だから」
;7/左(マイク向き) →“じゃ”から(耳打ち/ひそひそごえ)
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)――うん。だね。紅と相棒も静かにしてないとだ。
じゃ、焼いてる間は、あんまりしゃべらないようにしようね」
;7/左(小声/マイクと同じ視線)
【紅】「それじゃあおばちゃん、お願いします」
【紅】「ん……(できるだけ詰めた息での呼吸。3~4呼吸)」
;7/左 小声(継続)
【紅】「網にお団子を乗せて――」
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【紅】「指先でそっと串を押してるのって――(呼吸音)(呼吸音)――
あ、そっか。それで網とお団子のくっつき具合がわかるんだ――っと」
;SE 団子ひっくり返す
;7/左 ‘え?”で マイク向きに
【紅】「おおお、まとめてひっくり返すのかっこいい!
――え?」
;7/左 ‘呼吸音”からマイクと同じ視線に
【紅】「あ、うん。静かに聞いてみる……
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」
【紅】「ほんとだ。ちりちりいってる……ちっちゃい音だけど、確かに――あ!」
;SE 団子しょうゆだれのカメにだぶん
【紅】「焼けたら一気にタレにつけるんだね。豪快!
ん……(呼吸音)……そしたら」
;SE 網を掃除
【紅】「網、けっこうこまめに掃除するんだね」
;SE 醤油漬けした団子を網に
【紅】「タレにつけたお団子をまた……(くんくん)――あああ、醤油の焦げる匂い、さいっこー!!!」
;SE ひっくり返す
;;7/左 “っ!!!”から小声解除
【紅】「もうすぐだよね……もうすぐ完成――(ごくっ)――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――っ!!」
;SE 団子網からあげる
【紅】「できたー! おばちゃん! いま焼いてくれた4本全部頂戴!
紅と相棒でふたつずつ食べるから」
;SE がま口財布あけてお金だす
;7/左 ‘はい”からマイク向き
【紅】「はい、お金――っと――(呼吸音)――へへっ、ありがと。
はい、こっちの2本は相棒の分!」
【紅】「(ふーーーっ、ふーーーっ、ふーーーっ)。おいしそ。食べよ!
『いただきまーーーす』 (はむっ)」
【紅】「(むぐっ、むぐっ、むぐっ――ごくっ!)
あー、あつあつ、おいし! 素朴であったかい味だよね~」
【紅】「(はむっ――もぐ、もぐっ――ごくっ)……思い出すなー、この味。
……味覚センサー、がたんごとん亭やらされるために、後付けされてさ」
【紅】「味って、めちゃくちゃ情報量多いんだよね。
だから最初は情報過多でめちゃくちゃ混乱しちゃって。
甘い辛い苦い酸っぱい渋いとかはわかっても、『おいしい』が全然わからなくって」
【紅】「ぼく――紅はトップナンバー機だから、余裕もたせた設定してもらえてたから、処理落ちとかはしなかったけど――
それでも味、人間の味覚……『おいしい』『まずい』っていう感覚。
こんな膨大なデータ量から分析しきれるのかって、ほとんどビビったみたいになっちゃって、凹んで」
【紅】「……ものなんかもう食べたくないって思ってさ。
またなーんも考えないで軽油だけ飲む生活に戻りたいって思って。そうしたら――へへっ」
;7/左 (耳打ち)
【紅】「相棒が買ってきてくれたんだよね、おばちゃんのお店の、ぴんこだんご」
;7/左
【紅】「仙岱(せんだい)のおみやげだーって、のーてんきにさ。
ぼくが凹んでるのにも気づかないで、ぱくぱく、ほんとおいしそーにさ」
【紅】「あのとき……うん。あの瞬間に、ぼく、思ったんだ。
相棒の顔みて、食べる音聞いて、このあったかな匂いをかいで――『おいしそう』って」
【紅】「それで、食べて。
……『おいしい』って――わかるっていうか、つながって。
そこからさ、人間の食べ物の感覚、わかるようになったって思うから」
;7/左(マイクと同じ視線)
【紅】「だからだったんだ。
加勢田(かせだ)のがたんごとん亭で、結構遠い仙岱のおばちゃんのぴんこ団子、取り寄せで扱わせてもらったの。
絶対に大人気になるって思ったし、実際に大人気になったし、それに――」
;7/左 (マイク向き)
;$=SE 照れてバシバシ相棒の腕を叩く音
【紅】「へへ。相棒が紅にくれた、大切な思い出の味だから――なーんて!!
$
あらためて言うとてれくさいよね、こういうの! って、へ?」
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)――あ、そーだったそーだった、音探しだったっけ、ここ来た最初の目的って。
まぁ、そんな派手な音じゃないけどさ、いい音なのは間違いなし、ここも紹介の候補に――(呼吸音)(呼吸音)――だよね! できるよね! よーーしっ!!!」
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あ、そか。
それも言わればそのとーりだね。
ぴんこ団子は日ノ本で仙岱にしかない名物だけど――
“団子を焼く音”そのものは――うーん、だよねぇ。きっと結構、他の団子のと似たりよったり……なよーな気がする。確かに」
【紅】「けどさ、相棒。どっかある? みかん鉄道沿線に、鹿兒島ならではだとか、隈元ならでは! みないな音なんて」
【紅】「いままで音とかそんなこと気にしたことなかったからさー。
って、あ! 思い出した!!!!」
;7/左→;1/前 (目を見て話したくって、くるって正面に回り込む)
【紅】「何年か前にあったの、覚えてない? ほら、国が選んださ、『日ノ本音風景100選』みたいなのに――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【紅】「そーそー! あれあれ!!! もろに沿線選ばれたよね! ツルセンター! 出深(いずみ)の!!」
【紅】「あれ、駅だとどこか一番近いかな。野多郷(のだごう)か西出深(にしいずみ)か……(呼吸音)(呼吸音)――
ま、とにかくあそこなら、『沿線ならではの音』間違いなく聞けるでしょ、多分」
【紅】「(呼吸音)(呼吸音)――うん! そしたら早速いってみよー!」
;7/左 (参っくと同じ視線
【紅】「ってことでおばちゃん。紅たちいくけど、もしもここの音オッケーってことになったら、新聞で紹介させてもらってもいーい?
(呼吸音)(呼吸音)あはは、ありがとー! じゃ、そうなるようにがんばるねー!!」
【紅】「っと! いまからもーちょっとだけでも売上貢献しておくね!」
;SE がま口財布あけてお金だす
【紅】「お土産用に、ぴんこ団子! 頂戴! あと千円分!」