ほんならお髭、あたりましょ
;SE 食器カチャカチャ→廊下に置く→ふすましめる
;9/前遠
【ちせ】「うふふっ。綺麗にたべはったなぁ」
【ちせ】「これなら板長はんも喜びますやろ。
職人はんゆーんはそないなもんかもしれへんけど、まー気難しうて繊細で――
ああ、職人はんやのーて、職あやかしゆーた方がよろしいのかな? どないですやろ。――っと」
;SE 水の入った洗面器をもって近づいてくる
;9/前遠→;1/前
【ちせ】「や、思とったよりお水なみなみはいってますな、この洗面器。
こぼさんよーに気ぃつけんと……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん」
;SE 洗面器畳において、自分もすわる
;1/前
【ちせ】「ああ、この洗面器に入っとるのはただのお水ですわ。
なんでお水かゆーたら、お客はん……」
;SE ひげを指で撫ぜる音 (継続)
;1/前(密着)
【ちせ】「こないに……ね? ――(呼吸音)(呼吸音)――
びてはりますやんか。無精髭
プチやゆーても、せっかくの打ち上げ、
こざっぱりしてからの方が、もっと楽しくなりますやろ? な」
;SE stop
;1/前
【ちせ】「せやさかい――うふふっ。
ちせが廓(くるわ)に居ったときから使うとる、このカミソリを、水に濡らした革砥(かわと)――革の砥石でかるぅく研いで」
;SE カミソリ取り出す→革砥を洗面器の水で濡らす→革砥でカミソリかるく研ぐ
【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん。こないなもんやね。
そしたらお客はん。ちせのお膝に、頭あずけてくださいな」
【ちせ】「あ、腕前やったら心配あらしまへん。
禿ゆーたら、遊廓(ゆうかく)の雑用がかりですもん。
お髭あたるのんは慣れてますさかいに」
;1/前→“ん。”から密着距離
【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)
――ん。ふふっ、ちせのお膝に、よーこそいらっしゃいました」
【ちせ】「ほんなら、まずはしゃぼん、泡立てますな」
;SE 石鹸をに水をかけ、ブラシで泡立て
【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――
ん……っと――もちょっと――
(呼吸音)(呼吸音)――
ん……(呼吸音)――うん。こないなもんやね」
【ちせ】「指で押したらちょっと戻るよな感じがするくらい。
これっくらいに泡立てたらな、なめらかになって、お肌をまもってくれるねん」
;$=SE ブラシで泡を縫っていく
【ちせ】「したら――まずは顎のラインに……
ん――
$
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん、よし」
;$=SE ひとこすりだけ革砥でこする
【ちせ】「したら、カミソリに持ち替えて。
$
ほな、いきまっせ」
;SE 顎のひげカミソリであたる(継続)
;カミソリの動き、右あご→下顎
【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)――
……ああ……久方ぶりでも……(呼吸音)(呼吸音)――
体がきちんと――(呼吸音)(呼吸音)――
覚えとる――(呼吸音)――もんですなぁ――(呼吸音)」
【ちせ】「かるぅ――(呼吸音)――やさしぅ――(呼吸音)――
刃ァを――(呼吸音)――寝かせ、て――(呼吸音)――
くすぐるみたいに――(呼吸音)――すべらすように――(呼吸音)――
力、いれんと――(呼吸音)――やさしぅ、やさしぅ――(呼吸音)――っと」
;SE 刃を洗面器の水ですすぐ→革砥を1往復
;SE 顎のひげカミソリであたる(継続)
;左顎
【ちせ】「少しだけ――(呼吸音)――手、触れますな――(呼吸音)――
ん……(呼吸音)(呼吸音)――
っと……(呼吸音)(呼吸音)――
顎は、これで――(呼吸音)(呼吸音)――うん」
;SE 刃を洗面器の水ですすぐ→革砥を1往復
;SE 親指で顎をぐるっと撫ぜる
【ちせ】「……綺麗綺麗に剃れてますなぁ。
ふふっ、このカミソリは業物やさかい――
篝火姐(かがりびねえ)はんにいただいてから……
もう何百年たったろーねぇ……ふふっ」
;SE 左もみあげカミソリであたる(継続)
;7/左
【ちせ】「もみあげも……(呼吸音)――ん……(呼吸音)――
こないサクサク……(呼吸音)(呼吸音)――
あたるんやもの……(呼吸音)(呼吸音)――
切れあじ、少しも――(呼吸音)――衰えてへん――(呼吸音)」
【ちせ】「篝火いうても――(呼吸音)――お客はん――(呼吸音)――
ご存知のわけ――(呼吸音)――あらしまへんよね――(呼吸音)――
篝火太夫(かがりびだゆう)……(呼吸音)(呼吸音)――
綺麗で優しい――(呼吸音)――最高のお姐はん……」
【ちせ】「太夫(たゆう)いうんは――(呼吸音)――遊女(ゆうじょ)――傾城(けいせい)……(呼吸音)――
今様(いまよう)にいうんやったら……(呼吸音)(呼吸音)――
あ! 花魁(おいらん)はん――(呼吸音)――あれの――
いっちゃん位の高い――(呼吸音)――呼び名、ですなぁ」
;SE 刃を洗面器の水ですすぐ→革砥を1往復
;SE 右もみあげカミソリであたる(継続)
;3/右
【ちせ】「太夫になれる……(呼吸音)――遊女は――(呼吸音)……
ん……(呼吸音)(呼吸音)――
千人に、一人……(呼吸音)(呼吸音)――
もっと、少ないかも――(呼吸音)――知れへん、なぁ――(呼吸音)」
【ちせ】「ちせも、ん……(呼吸音)(呼吸音)――
太夫の、篝火姐はんに……(呼吸音)(呼吸音)――
つけて、もろうた――(呼吸音)――禿(かぶろ)……(呼吸音)――
遊女の――(呼吸音)――見習い、やったさかいに――(呼吸音)」
;SE 刃を洗面器の水ですすぐ→革砥を1往復
【ちせ】「ちせを……(呼吸音)――買い取った――(呼吸音)――
廓(くるわ)の――(呼吸音)――遣り手(やりて)はんには――
期待、して……(呼吸音)――もろうとった――(呼吸音)――
もんですけど――(呼吸音)――な――(呼吸音)」
【ちせ】「(ほっとした長い溜息)」
;1/前
【ちせ】「もみあげもこれでさっぱりしましたな。
あとはお鼻の下と、眉毛をそれば、カミソリの時間はおしまいですわ」
【ちせ】「せやさかい。もっかいシャボンを泡立て直して……」
;SE シャボン泡立て
【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)――
ゆっくり、ゆっくり――(呼吸音)(呼吸音)――
丁寧に――(呼吸音)――丁寧、に――(呼吸音)――
ふんわり、と――(呼吸音)(呼吸音)――で」
;$=SE 鼻の下にブラシでシャボンぬり
【ちせ】「そしたらお鼻に……(呼吸音)(呼吸音)――
んふふっ――シャボンのお髭はん――(呼吸音)(呼吸音)――
えらい立派な白ひげで……(呼吸音)(呼吸音)――
海軍はんみたいに――(呼吸音)――見えますなぁ――(呼吸音)――ん」
;SE 鼻の下をカミソリであたる(継続)
【ちせ】「お鼻の下は――(呼吸音)(呼吸音)――
切ってもーたら……(呼吸音)(呼吸音)――
えらい血の出るとこやさかいに――(呼吸音)(呼吸音)――
小さく小さく……(呼吸音)――刃ぁ動かして……(呼吸音)」
【ちせ】「上から下にが――(呼吸音)(呼吸音)――
終わったら――(呼吸音)(呼吸音)――
下から上にで――(呼吸音)(呼吸音)――
仕上げ、して――(呼吸音)(呼吸音)――よしょっ」
;SE 刃を洗面器の水ですすぐ→革砥を1往復
【ちせ】「ん、で――(呼吸音)(呼吸音))」
;SE シャボン泡立て →シャボン塗り
【ちせ】「最後は眉毛に――(呼吸音)(呼吸音)――
右も、左も――(呼吸音)(呼吸音)――
シャボン――(呼吸音)(呼吸音)――
塗っ、て――(呼吸音)(呼吸音)――」
;SE 眉毛の上側カミソリであたる(継続) 右眉
【ちせ】「眉の上も……(呼吸音)(呼吸音)
切れやすいとこやさかいに……(呼吸音)(呼吸音)
カミソリの……(呼吸音)――刃、で――(呼吸音)――
撫ぜる――(呼吸音)――みたいに――(呼吸音)」
:左眉
【ちせ】「左の――(呼吸音)――眉も……(呼吸音)――
おんなじに、に――(呼吸音)(呼吸音)――
そーっと――(呼吸音)――そーっと――(呼吸音)――
撫ぜて――(呼吸音)――さす、って――(呼吸音)……うんっ」
【ちせ】「(剃り終えて安堵のため息)」
;SE 刃を洗面器の水でよくすすぐ→革砥を5往復
【ちせ】「(満足げな呼吸音)*4」
;$=SE 洗面器の水で手洗い
【ちせ】「っと。あとは指もシャボンでよーぉ洗って……
$
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――よーし」
【ちせ】「ほんなら、剃り具合みますさかいに。
すこぉし失礼しますな」
;$=SE 指で顎、鼻の下、眉まわりと撫ぜていく
【ちせ】「ん……
$
(様子をみる、慎重な呼吸音)*4――
んふふっ! うん、よーお剃れてる」
【ちせ】「お客はん、お顔あらってさっぱりされるなら、温泉もいつでもはいれますよって、ご自由に。
うちは、こんお部屋、プチ打ち上げに備えて、お掃除して整えておきますよって」
;SE ちせ立ち上がって足音→;9/前遠
;9/前遠
【ちせ】「ほんなら、箒、失礼しますな」
;SE 箒がけ(30秒ほどでF.O)
【ちせ】「(箒がけする呼吸とニュアンス、30秒)」
;環境音 F.O.