Track 3

ちせと火鉢で炙りもの

;9/前遠 (うつむいてオフマイク) 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 ;環境音 F.O 室内+火鉢で炭火パチパチ ;9/前遠 (顔あげて) 【ちせ】「ああ――お客はん――うふふっ、綺麗さっぱり、 男ぶりがいっそうあがりましたな。 プチうちあげも、おかげはんでさらに雰囲気出ますなぁ」 ;SE 炭が爆ぜる音。パチっ 【ちせ】「あらまぁ! 炭まで爆ぜてはしゃいどります。うふふっ。 (呼吸音)(呼吸音)…… ああ、これな? 火鉢ですわ。七輪やのーて、火鉢。 板長はんが、ゆったりすごすならこっちのほーが、ゆーて、わざわざ仕度してくれたんですわ。 あ! 仕度ゆーたら、こっちのお重も……ほら」 ;3/右 【ちせ】「んふふ、板長はん、『プチ打ち上げするねん』ゆーたら、えらい張り切ってくれはって。お魚はヒラメにししゃも、貝はサザエ。お野菜はとおもろこしとアスパラにししとお。お肉は豚に牛。肉巻きの焼きおにぎり用のもありますなぁ。で、もちろん焼き鳥に、デザート用のバナナまで」 ;$=SE グラスにビール瓶あてる音 【ちせ】「お飲み物もな? $ 冷えたビールはもちろん、日本酒に焼酎にワイン。ゆずジュースに烏龍茶にりんごジュース。それからもちろん天然水の湧き水も――ああ、もちろん沸かし湯にしてお茶もいれられますし、お好みならお燗もつけられますさかいに」 ;3/右 (接近囁き) 【ちせ】「ね、お客はんのはじめの一杯は――(呼吸音)(呼吸音)―― うふふ、そんなら」 ;SE 飲み物を注ぐ ;3/右 【ちせ】「で、ちーせーは。りんごジュースでお相伴~」 ;SE ちせ、手酌 【ちせ】「ふふっ、廓やったらこないなことはせえへんのやけど。 いまはお座敷やのうて、うちうちのプチ打ち上げのお席やさかいに…… 乾杯で、お祝いの宴、はじめましょおか」 【ちせ】「(嬉しげな呼吸)――ほんなら、『かんぱーーーい』」 ;SE 乾杯 【ちせ】「(上品にこくこく飲む音)……ふっ。 なんや、いつもよりおいしいなぁ。お客はんが、そないくつろいだお顔見せてくれてはるおかげかなぁ」 【ちせ】「っと。炙りもんもそろそろはじめましょうな。 まずは何から――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ほな、ちせがおまかせであぶらせてもらいますな」 :$=SE とおもろこしを網に 【ちせ】「まずは、時間がかかるとおもろこしを端っこにのせて―― $ それとヒラメ、炙りましょかねぇ」 ;SE ヒラメを網に ;SE ヒラメの身側を炙る 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「ヒラメは、さっぱりと塩ふってあるゆう話ですわ。 お箸でつまんだ感じでもう、むっちりと身がしまってて。 ……ああ、これは日本酒と抜群にあいそうですなぁ」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……ゆえは、名前に縛られたあやかしですよって、 この大きな体に顔や姿は禿……こどもじみたままで変化はできひんけれど―― 見かけによらず、お客はんよりずっとずうっと年上ですさかいに――っと」 ;SE ヒラメをひっくり返す 【ちせ】「ふふふっ、ええタイミングでひっくりかえせた。 皮にこんがり焼き目がついて……(くんくん)――ええ香りやねぇ~。 いっとお美味しい焼き加減まで、もーちょこっとだけ辛抱したってや」 【ちせ】「あ! お値段のことお伝えしてへんかったね。 あんな、このプチ打ち上げは、無料。サァビス。 なんでって、お客はんが長期滞在の上客はんで、 修羅場いうんもあけはった、そのお祝いゆーことがもちろん一番なんですけどな」 【ちせ】「実は、団体客はんの当日キャンセルがありましたんよ。 せやさかい、お客はんにたべていただけたほーが、 食材的にも、板長はんてきにもずっとずうっと嬉しいし。 そ・れ・に」 ;3/右 (耳うち・ささやき) →;3/右 【ちせ】「ちせ的には、なにもなくてもお客はんにたーくさんたべていただきたいなー、思とったから。一石二鳥……三鳥で―― っと。ああ、ええ塩梅に焼けました!」 ;SE 網からヒラメあげる 【ちせ】「そしたらお箸でほぐして、ほぐして―― まずは皮目のところから。 はぁいお客はん――『あーーーーーーん』」 【ちせ】「(たべてるのをにこにこ見守る呼吸)*4」 【ちせ】「んふー、お顔が『おいしい』言うてはる! 皮はぱりぱり、えんがわふんわりの焼き具合になっとったみたいやね。 よかった~」 【ちせ】「っと、ヒラメたべとる間に次は……お肉にしましょか。 牛肉やったら、すぐに火ぃとおって――なんなら通さへんでも食べられますさかいに」 【ちせ】「肉は全部、上の面だけ塩コショウしてあるゆうお話ですわ。 せやさかい、塩コショウしてある面をそのまま上に、網に乗せて~」 ;SE 牛薄切り肉を網に 【ちせ】「っと、とうもろこしも転がしとかな、黒焦げになってしまいますな」 ;SE とうもろこしごろり 【ちせ】「で……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)―― このっくらいの厚さの牛肉なら、ひっくり返したりせんでもな? お肉の中の油が、表側から見てもぷつぷつ湧き出るようになったら―― (呼吸音)(呼吸音)――ほい、いまがひっくり返しどき!」 ;SE 牛薄切り肉ひっくり返す 【ちせ】「そしたら手早く返した面に塩コショウして~」 ;SE ペッパーミル→ソルトミル 【ちせ】「ん。あとはもう、お好みの焼き加減になったら網からあげて食べればしまいやね。 お客はんのお好みの焼き加減であげるさかいに、ええ塩梅になったら――な」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ほい!」 【ちせ】「あああ、ええ香り、ええ焦げ目。 ちせもな? んふふ~ こんくらいの焼き加減が一番好きなんよ。 お客はんと好みおそろいで、なんやちょこっと嬉しいなぁ」 【ちせ】「っと――無駄話してる場合やないな。 (ふーーーーっ、ふーーーーーっ、ふーーーーーーっ)」 【ちせ】「んふふっ、ほんなら、『あーーーーーーーーーん』 (見守る呼吸音)(呼吸音)(呼吸音) んふ~、とろけそうなお顔! 見てるこっちにも美味しさがつたわってきますわぁ」 【ちせ】「お客はん……お姿みかけんよーになるまえも、 なんやこの……お忙しそういうか、大変そうなご様子してはりましたもんなぁ」 ;肉を網に乗せ 【ちせ】「おいしいもんをおいしい感じるゆーんも……(呼吸音)―― 実は余裕があれへんと、むつかしこととも聞きますし――(呼吸音)―― うふふっ、お客はんが、そない幸せそうなお顔みせてくれるよーになって」 ;肉返し →ペッパーミル→ソルトミル 【ちせ】「ほんま、よかったなーって思います。 ちせだけやのーて、板長はんも、女将はんも、 なんなら出入りの魚屋の、まことこまいうあやかしも、心配しとりましたさかいに――(あむっ)」 【ちせ】「(はむっ、はむっ、はむっ――こくっ) ふううっ、ほんまおいしいなぁ。 お客はんはきっと、空気がよろしいんやろうな。 人間はんたちにもそないなのかもしれんけど――ちせたち、あやかしにとっては、特に」 ;肉を網に乗せ 【ちせ】「お客はんの、自然体なとこゆーか……あやかしを色眼鏡かけんで見てくれはるところに、ほっとさせられるのかもしれんなぁ。 ちせなんかはもう、生きとったころ――ただの人間だったころから、色眼鏡で見られまくっとったさかいに」 【ちせ】「体が大きゅうなりすぎたって、中身は他の禿たちと、ほとんど変わらへんのになぁ。 大禿大禿って、見せもんみたいに扱われるようになってもーて」 ;肉返し →ペッパーミル→ソルトミル 【ちせ】「お客はんは……ふふっ、ちせのおっきさのことなーんも言わんと、ごくごく普通の仲居として扱ぉてくれて…… そんなんほんとに無いことやさかい、ちせ、うれしゅうてうれしゅうて。 (呼吸音)――っと」 ;SE 箸で肉つまみ 【ちせ】「(ふーーっ、ふーーーっ、ふーーーっ)。 はぁい、『あーーーーーん』(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――んふふふふっ」 ;3/右(密着) “っと”で→;3/右 【ちせ】「せやさかい。ちせが貰うた嬉しい気持ち。ほんの少しでもお返しできとったらええんですけど」 ;3/右 【ちせ】「って、とおもろこしももーちょっとですな、もっかい返して――(呼吸音)―― そしたら次は――(呼吸音)――せやね、サザエ焼きましょ。 んしょ……(呼吸音)――よ」 ;SE 網にサザエのせる 【ちせ】「サザエをつぼ焼きにするときは、中のおつゆが零れんように、口を上にして…… 乗せて――(呼吸音)――乗せ、て――っと」 【ちせ】「(様子を見守る呼吸音)*3」 【ちせ】「うぴゃっっ!? って、あらあら失礼。 けど……わ――うわわ、ぎゅって縮んで、ぶくぶく泡出て―― えらい新鮮なことですなぁ」 ;‘おいしゅう”は、お客はんにではなく、サザエに。 【ちせ】「口を上にして焼かんとおいしいお汁が垂れてしまいますさかいに、そないするしかないのんですけど、まぁ……こないな姿は生々しうて――(吐息) おいしゅうおいしゅういただきますから、堪忍してな」 ;$=SE 醤油垂らす 【ちせ】「あっ! いうてる間にぶくぶくがもう―― ええと……こないなったらお醤油垂らして―― $ あ、ぶくぶくがへっこんで……っと、せやったせやった」 【ちせ】「バターとニンニク入れてもおいしいて板長はんが用意してくれたんですけど――(呼吸音)(呼吸音)――せやったら、いれてみたのと醤油だけとの、両方用意してみましょうな」 ;$=SE サザエにバターとニンニクとをスプーンでちょいちょい入れる 【ちせ】「ん…… $ (呼吸音)(呼吸音)――っと」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うん、よさそ。 ほんなら――っと……竹串つこうて、蓋になってる殻をはずして――ん……」 ;SE 竹串であわびの身を引きずり出す 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)――ああ、ずるーんて綺麗に身を出せました。 板長はんの仕込みですさかいに、砂は綺麗に吐かせてくれてはりますやろうが、肝の部分はどないにしましょ。ちせには苦いと思うんですけど、それがおいしいゆう方もおられますやんか」 【ちせ】「あ、もちろん好き嫌いとかあるようやったら―― とおもろこしもそろそろ食べごろですさかいに、そっちにしてもよろしいですけど」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)――ほな、そないにして――っと。 はあい、お客はん。『あーーーーーーーん』」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)―― んふ~お口にあったようならなによりですわ。っと、せやったせやった」 【ちせ】「あんな、んふふ。ちせが大昔まだ人間で、廓(くるわ)で禿しとったころに、お姐はんたちがやっとんの見て、憧れとった飲み方なんですけどな」 【ちせ】「身をたべて、けど、お汁がまだまだぐつぐついうとるサザエの殻に~、日本酒!」 ;SE 日本酒とぷとぷ 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――んふふ~、ええ音~、ええ香り~」 【ちせ】「こないにして~、お燗がつくのを待って~待って~…… (呼吸音)(呼吸音)―― 沸騰させちゃわんうちに、もちあげて」 【ちせ】「はい、お客はん――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)―― あー、えへへ。そないなことなら、ちせもお相伴させてもろうて」 【ちせ】「『いただきます』。ん~……ええ香り。大人の香りやねぇ。 (ドキドキしている呼吸音)――(ぺろっ)――ああ……(ぺろっ)――これがお姐はんたちの味おうとった……」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)――ふえっ!? 心配は御無用ですよ、お客はん。 確かにちせはおっきな体にまったくにあわん、こどもみたいな顔しとるけど」 【ちせ】「お客はんよりずーっとずーっと年上の、今年で……1200歳? くらいにはなるあやかしですさかいに、 うふふっ、お酒の一杯や二杯――(こくっ――!!!?) けほっ! けへっ!!」 【ちせ】「なーんやこれ、辛っ!!! うっわ、りんごジュースの方がずっとええわ。 ほんま、大人連中こないなんよー飲みよるなぁ――って、はっ!? あうっ――あ……」 【ちせ】「その――ええと。こほん。 ちせはな? 1200年も廓に生き続けとった、たいへん大人なあやかしやけれども―― その……体質! 体質的に、このお酒はちょこーっとあわへんかったのかもしれんね」 「けど――な? ちせの大人なとこをもし、お客はんがもっと見たいって思うてくれはるんなら」 ;3/右 接近ささやき 【ちせ】「廓の遊びの1から9まで、なーんでもお客はんに教えてあげることもできまっせ」 ;3/右 (うつむいてひとりごと) 【ちせ】「もっとも……水揚げもせんうちあやかしになってしもたさかいに、10は教えてあげられへんのやけど――あ、いやいや」 ;3/右 【ちせ】「お客はん、ご興味あります? 廓の遊び。 ほんならプチ打ち上げの後半戦は、五重塔(ごじゅうのとう)やら投扇興(とうせんきょう)やら、ちせがいちから、手ほどきをしてさしあげますな!」 ;環境音 F.O.