Track 5

ちせのだいじだいじ耳かき(右耳)

;環境音 火鉢+室内 F.I. ;3 口寄せ 【ちせ】「(ふ~~~っ)(ふ~~っ)(ふ~~っ)」 ;3 通常 【ちせ】「お客はん、ほんま痛ないの? お耳、まだ赤いままやけど――あ! せやせや」 ;SE ちせ、自分の巾着袋をあける ;4=SE 耳元でヘチマ水の瓶をふる 【ちせ】「ん……っと――(呼吸音)――あった。ヘチマ水(すい)。 これ、ほんまもんのヘチマを切って茎から出てくる水を小瓶に集めた―― $ 正真正銘、十割全部天然ものの、ヘチマ水なんよ」 【ちせ】「ちせが人間だった1200年前からずーっと、 お肌のほてりを冷ますのには、ヘチマ水が一番体に害なく効くいう話やし――(呼吸音) それに」 ;SE 指先で耳の縁撫ぜる 【ちせ】「……な? お客はんのお耳に触ったちせの指。すべすべですやろ? これが、1200年ヘチマ水使いつづけた、その効能やさかいに……(呼吸音)――ん」 ;SE ヘチマ水手のひらに取る→$で伸ばす 【ちせ】「手のひらにぴっぴとヘチマ水出して。 それをこないして―― $(呼吸音)(呼吸音)――伸ばして、広げて――(呼吸音)――で」 ;SE ヘチマ水に濡れた手で耳タッチ 【ちせ】「ぴとーーーー。 お客はんのお耳、ひんやりして気持ちええでしょお。 (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ゆーか、赤みもほんのり薄らいできてるみたいやし、 すこーし、このまま揉み込んでみましょおなぁ」 ;SE ヘチマ水耳マッサージ 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」 【ちせ】「ああ……やっぱり赤み――(呼吸音)(呼吸音)―― ひいてきてくれてますな……(呼吸音)(呼吸音)―― ほんま、びっくりさせてしもうたけど――(呼吸音)(呼吸音)―― お客はんにケガさせんですんで――(呼吸音)――救われます――(呼吸音)」 【ちせ】「お客はんも――(呼吸音)(呼吸音)―― とっさのことやったのに――(呼吸音)(呼吸音)―― きっと上手に避けてくれはったから――(呼吸音)(呼吸音)―― かすっただけで――(呼吸音)――お耳がちょこっと赤くなったくらいで……ありゃ」 ;SE stop 【ちせ】「ありゃ、ありゃ、ありゃありゃありゃありゃ~」 【ちせ】「……(呼吸音)――ゆーか、考えるまでもない道理ですわな。 お客はんずーっと修羅場はゆーてはって、そのあとで二日間も倒れるように寝てはったさかいに、 お耳の中まで、綺麗にお掃除、できておるわけあらしまへんな」 【ちせ】「ほんなら……ね? びっくりさせてしもうたお詫びに、 このままちせに、お耳掃除させてくださいな。 お客はんのお耳の中まで、だいじだいじに、綺麗にきれいに」 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)……ふふっ。そうしたら、浅いとこからはじめましょうなぁ」 ;耳かき音(浅・継続) 【ちせ】「お客はんのお耳……ん……(呼吸音)(呼吸音) 裏っ側、も――(呼吸音)(呼吸音) さっき、ヘチマ水……(呼吸音)(呼吸音) 揉み込んだ、さかいに――(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「浅いところの――(呼吸音)(呼吸音) こまかいこまかい、ミミカスも――(呼吸音)(呼吸音) ぺっとり湿って――(呼吸音)――集まりやすぅて――(呼吸音)―― これは――えらい――(呼吸音)――やりやすいなぁ――(呼吸音)」 【ちせ】「あんまり――(呼吸音)――簡単、に――(呼吸音)―― 済んで――(呼吸音)――しもうても――(呼吸音)―― ん……(呼吸音)(呼吸音)―― さみしいような――(呼吸音)――気も、少し――(呼吸音)――っと」 ;SE stop ;SE ティッシュで耳かき拭き 【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーーーーっ)」 ;耳穴覗き込むイメージで角度変えながら 【ちせ】「ん~~……んーーーーー。ん……(呼吸音)(呼吸音)――あ」 ;$=耳かき浅い 【ちせ】「取り残し。ここだけこそっと―― $ こりこりこりこりこり~……(呼吸音)――うん。よろしいな」 ;耳かき拭き 【ちせ】「ちせ、なかなか耳かき上手ですやろ。 なんせ、篝火太夫はんの耳かきは、ちせが一人でまかされとりましたからなぁ。 うふふっ」 ;3/右 接近囁き 【ちせ】「傾城(けいせい)と歌われた太夫をめろめろにした耳かきの技。 今度はお耳の深いところで、たっぷりゆったり堪能してな」 【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーーーーっ)(ふっ)」 【ちせ】「ほな、いきますな。ん~~~んっ」 ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ。 傾城いうんは――(呼吸音)(呼吸音)―― 城を、傾かす――(呼吸音)(呼吸音)―― 書きまして、な――(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「殿様が――(呼吸音)(呼吸音)―― 国のこともなんも――(呼吸音)(呼吸音)―― 放り出すほど……(呼吸音)(呼吸音)―― 溺れさせて――(呼吸音)――しまうような――(呼吸音)――」 【ちせ】「ひとときの、一夜の恋に――(呼吸音)(呼吸音)―― 入れ上げさせて……(呼吸音)(呼吸音)―― 国さえ滅ぼさせて――(呼吸音)(呼吸音)―― しまう――(呼吸音)――よおな――(呼吸音)――」 【ちせ】「そないな、遊女のことを――(呼吸音)(呼吸音)―― 廓の中では――(呼吸音)(呼吸音)―― 傾城、よんで――(呼吸音)(呼吸音)―― 別格扱い――(呼吸音)――しとりましたな――(呼吸音)――」 ;SE stop ;SE 耳かき拭き 【ちせ】「いまの、世の中……自由恋愛の世の中やとね。 そないな例え、大げさやーって、思われてしまうかもしれまへんけど」 ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「せやけどな……(呼吸音)(呼吸音)―― 少し、前までは――(呼吸音)(呼吸音)―― 結婚やなんやは全部――(呼吸音)(呼吸音)―― 家と、家とで決めること――(呼吸音)――で――(呼吸音)――」 【ちせ】「ことに、ちせみたいな――(呼吸音)(呼吸音)―― おなご、なんかは――(呼吸音)(呼吸音)―― 顔の、ひとつも――(呼吸音)――見たこともない――(呼吸音)―― そんな、相手に――(呼吸音)――嫁ぐ、いうのも……(呼吸音)」 ;SE stop ;SE 耳かき拭き 【ちせ】「決して珍しいことやない。 そんな時代が――ほんの二百年……いや、百年前ころまでは、 この国にもくっきり、ありましたんよ」 ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「せやさかい……(呼吸音)(呼吸音) 今の、な――(呼吸音)(呼吸音) 自由恋愛の――(呼吸音)――世の中、やと――(呼吸音) なんや、その……(呼吸音)……廓の……今様の……呼び名――(呼吸音)――」 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)―― ああ、そう、風俗――(呼吸音)(呼吸音)―― 風俗店――(呼吸音)――ソープランド……(呼吸音)―― 呼ばれとるとこ、は――(呼吸音)(呼吸音)――」 【ちせ】「特別な、場所……(呼吸音)(呼吸音)―― そないな色眼鏡で……(呼吸音)(呼吸音)―― みられとる気が……(呼吸音)(呼吸音)―― します、けれども――(呼吸音)(呼吸音)――っと」 【ちせ】「ん……ん~。 (ふーーーーーーーーっ)(ふっ!)(ふっ!)」 【ちせ】「ん、っと……どないやろ―― ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ、うん。 お客はんのお耳、素直でとってもほじりやすいなぁ。 おかげですっかりピカピカにしてさしあげられました」 【ちせ】「ほんなら、次は左のお耳のお掃除ですな。 そっちもゆるゆる、大事に大事に、丁寧に」 【ちせ】「そうしたら、ちせが、 『ぐるーーーーーーん』いいますさかいに。 声にあわせて、左のお耳、ちせの方に向けてくださいな」 【ちせ】「ええですか。いきまっせ。せーの、 『ぐるーーーーーーーーーーーーーん』」 ;環境音 F.O.