ちせのだいじだいじ耳かき(右耳)
;環境音 火鉢+室内 F.I.
;3 口寄せ
【ちせ】「(ふ~~~っ)(ふ~~っ)(ふ~~っ)」
;3 通常
【ちせ】「お客はん、ほんま痛ないの?
お耳、まだ赤いままやけど――あ! せやせや」
;SE ちせ、自分の巾着袋をあける
;4=SE 耳元でヘチマ水の瓶をふる
【ちせ】「ん……っと――(呼吸音)――あった。ヘチマ水(すい)。
これ、ほんまもんのヘチマを切って茎から出てくる水を小瓶に集めた――
$
正真正銘、十割全部天然ものの、ヘチマ水なんよ」
【ちせ】「ちせが人間だった1200年前からずーっと、
お肌のほてりを冷ますのには、ヘチマ水が一番体に害なく効くいう話やし――(呼吸音)
それに」
;SE 指先で耳の縁撫ぜる
【ちせ】「……な? お客はんのお耳に触ったちせの指。すべすべですやろ?
これが、1200年ヘチマ水使いつづけた、その効能やさかいに……(呼吸音)――ん」
;SE ヘチマ水手のひらに取る→$で伸ばす
【ちせ】「手のひらにぴっぴとヘチマ水出して。
それをこないして――
$(呼吸音)(呼吸音)――伸ばして、広げて――(呼吸音)――で」
;SE ヘチマ水に濡れた手で耳タッチ
【ちせ】「ぴとーーーー。
お客はんのお耳、ひんやりして気持ちええでしょお。
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ゆーか、赤みもほんのり薄らいできてるみたいやし、
すこーし、このまま揉み込んでみましょおなぁ」
;SE ヘチマ水耳マッサージ
【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」
【ちせ】「ああ……やっぱり赤み――(呼吸音)(呼吸音)――
ひいてきてくれてますな……(呼吸音)(呼吸音)――
ほんま、びっくりさせてしもうたけど――(呼吸音)(呼吸音)――
お客はんにケガさせんですんで――(呼吸音)――救われます――(呼吸音)」
【ちせ】「お客はんも――(呼吸音)(呼吸音)――
とっさのことやったのに――(呼吸音)(呼吸音)――
きっと上手に避けてくれはったから――(呼吸音)(呼吸音)――
かすっただけで――(呼吸音)――お耳がちょこっと赤くなったくらいで……ありゃ」
;SE stop
【ちせ】「ありゃ、ありゃ、ありゃありゃありゃありゃ~」
【ちせ】「……(呼吸音)――ゆーか、考えるまでもない道理ですわな。
お客はんずーっと修羅場はゆーてはって、そのあとで二日間も倒れるように寝てはったさかいに、
お耳の中まで、綺麗にお掃除、できておるわけあらしまへんな」
【ちせ】「ほんなら……ね? びっくりさせてしもうたお詫びに、
このままちせに、お耳掃除させてくださいな。
お客はんのお耳の中まで、だいじだいじに、綺麗にきれいに」
【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)……ふふっ。そうしたら、浅いとこからはじめましょうなぁ」
;耳かき音(浅・継続)
【ちせ】「お客はんのお耳……ん……(呼吸音)(呼吸音)
裏っ側、も――(呼吸音)(呼吸音)
さっき、ヘチマ水……(呼吸音)(呼吸音)
揉み込んだ、さかいに――(呼吸音)(呼吸音)」
【ちせ】「浅いところの――(呼吸音)(呼吸音)
こまかいこまかい、ミミカスも――(呼吸音)(呼吸音)
ぺっとり湿って――(呼吸音)――集まりやすぅて――(呼吸音)――
これは――えらい――(呼吸音)――やりやすいなぁ――(呼吸音)」
【ちせ】「あんまり――(呼吸音)――簡単、に――(呼吸音)――
済んで――(呼吸音)――しもうても――(呼吸音)――
ん……(呼吸音)(呼吸音)――
さみしいような――(呼吸音)――気も、少し――(呼吸音)――っと」
;SE stop
;SE ティッシュで耳かき拭き
【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーーーーっ)」
;耳穴覗き込むイメージで角度変えながら
【ちせ】「ん~~……んーーーーー。ん……(呼吸音)(呼吸音)――あ」
;$=耳かき浅い
【ちせ】「取り残し。ここだけこそっと――
$
こりこりこりこりこり~……(呼吸音)――うん。よろしいな」
;耳かき拭き
【ちせ】「ちせ、なかなか耳かき上手ですやろ。
なんせ、篝火太夫はんの耳かきは、ちせが一人でまかされとりましたからなぁ。
うふふっ」
;3/右 接近囁き
【ちせ】「傾城(けいせい)と歌われた太夫をめろめろにした耳かきの技。
今度はお耳の深いところで、たっぷりゆったり堪能してな」
【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーーーーっ)(ふっ)」
【ちせ】「ほな、いきますな。ん~~~んっ」
;SE 耳かき(深・継続)
【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ。
傾城いうんは――(呼吸音)(呼吸音)――
城を、傾かす――(呼吸音)(呼吸音)――
書きまして、な――(呼吸音)(呼吸音)」
【ちせ】「殿様が――(呼吸音)(呼吸音)――
国のこともなんも――(呼吸音)(呼吸音)――
放り出すほど……(呼吸音)(呼吸音)――
溺れさせて――(呼吸音)――しまうような――(呼吸音)――」
【ちせ】「ひとときの、一夜の恋に――(呼吸音)(呼吸音)――
入れ上げさせて……(呼吸音)(呼吸音)――
国さえ滅ぼさせて――(呼吸音)(呼吸音)――
しまう――(呼吸音)――よおな――(呼吸音)――」
【ちせ】「そないな、遊女のことを――(呼吸音)(呼吸音)――
廓の中では――(呼吸音)(呼吸音)――
傾城、よんで――(呼吸音)(呼吸音)――
別格扱い――(呼吸音)――しとりましたな――(呼吸音)――」
;SE stop
;SE 耳かき拭き
【ちせ】「いまの、世の中……自由恋愛の世の中やとね。
そないな例え、大げさやーって、思われてしまうかもしれまへんけど」
;SE 耳かき(深・継続)
【ちせ】「せやけどな……(呼吸音)(呼吸音)――
少し、前までは――(呼吸音)(呼吸音)――
結婚やなんやは全部――(呼吸音)(呼吸音)――
家と、家とで決めること――(呼吸音)――で――(呼吸音)――」
【ちせ】「ことに、ちせみたいな――(呼吸音)(呼吸音)――
おなご、なんかは――(呼吸音)(呼吸音)――
顔の、ひとつも――(呼吸音)――見たこともない――(呼吸音)――
そんな、相手に――(呼吸音)――嫁ぐ、いうのも……(呼吸音)」
;SE stop
;SE 耳かき拭き
【ちせ】「決して珍しいことやない。
そんな時代が――ほんの二百年……いや、百年前ころまでは、
この国にもくっきり、ありましたんよ」
;SE 耳かき(深・継続)
【ちせ】「せやさかい……(呼吸音)(呼吸音)
今の、な――(呼吸音)(呼吸音)
自由恋愛の――(呼吸音)――世の中、やと――(呼吸音)
なんや、その……(呼吸音)……廓の……今様の……呼び名――(呼吸音)――」
【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)――
ああ、そう、風俗――(呼吸音)(呼吸音)――
風俗店――(呼吸音)――ソープランド……(呼吸音)――
呼ばれとるとこ、は――(呼吸音)(呼吸音)――」
【ちせ】「特別な、場所……(呼吸音)(呼吸音)――
そないな色眼鏡で……(呼吸音)(呼吸音)――
みられとる気が……(呼吸音)(呼吸音)――
します、けれども――(呼吸音)(呼吸音)――っと」
【ちせ】「ん……ん~。
(ふーーーーーーーーっ)(ふっ!)(ふっ!)」
【ちせ】「ん、っと……どないやろ――
ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ、うん。
お客はんのお耳、素直でとってもほじりやすいなぁ。
おかげですっかりピカピカにしてさしあげられました」
【ちせ】「ほんなら、次は左のお耳のお掃除ですな。
そっちもゆるゆる、大事に大事に、丁寧に」
【ちせ】「そうしたら、ちせが、
『ぐるーーーーーーん』いいますさかいに。
声にあわせて、左のお耳、ちせの方に向けてくださいな」
【ちせ】「ええですか。いきまっせ。せーの、
『ぐるーーーーーーーーーーーーーん』」
;環境音 F.O.