Track 6

ちせのだいじだいじ耳かき(左耳)

;環境音 火鉢+室内 F.I. ;7/左 (接近囁き) 【ちせ】「ふふっ、左耳さん。よーいらっしゃいました」 ;$=SE ヘチマ水の瓶耳元でふる ;7/左 【ちせ】「駆けつけ三杯。まずはキリッと冷やしたヘチマ水―― $ ――ごちそうしますな。 ん……」 ;SE ヘチマ水手にとる→伸ばし広げる 【ちせ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あはっ。 お耳に触れとるちせの手も、ひんやり気持ちよー感じます。 ちせもすこぉし、火照ってしもうたのかもしれませんなぁ」 【ちせ】「ん。ほんなら、こっちのお耳にもヘチマ水揉み込んで、 お耳をすこぉし、湿らせましょうな」 ;SE ヘチマ水に濡れた手で耳タッチ 【ちせ】「ぴたーーーーーーーっ。 (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)―― すこぉし温もぉたら、ゆるゆる伸ばしていきますな」 ;SE ヘチマ水耳マッサージ 【ちせ】「よ、っしょ……(呼吸音)(呼吸音)―― ん……(呼吸音)(呼吸音)―― なんや、お客はんは――(呼吸音)(呼吸音)―― お肌も素直な――(呼吸音)――気がしますなぁ――」 【ちせ】「素直、いうか――(呼吸音)(呼吸音)―― 馴染む、いうか――(呼吸音)(呼吸音)―― こうして、揉み込んで――(呼吸音)(呼吸音)―― おりますと――(呼吸音)――な?――(呼吸音)」 【ちせ】「ちせの、お肌と――(呼吸音)(呼吸音)―― お客はんの、お肌の――(呼吸音)(呼吸音)―― 境目、が――(呼吸音)――溶けて――(呼吸音)―― 入り混じりそうな――(呼吸音)――気に、なって――(呼吸音)――って」 ;SE stop 【ちせ】「あははは、ちせ、なにいうてるんやろ。 いややわぁ。ヘチマ水塗って冷やそいうとるのに、 塗っとるちせがのぼせとったら、世話ないわ」 【ちせ】「(落ち着こうとする呼吸)」 【ちせ】「うん。したら仕切りなおしで。 お耳、お掃除していきましょな。 こっちもやっぱり、浅いとこから――」 ;耳かき音(浅・継続) 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」 【ちせ】「ああ、せやったね――(呼吸音)(呼吸音)―― ソープランド……風俗……(呼吸音)(呼吸音)―― 今様の、廓は……(呼吸音)(呼吸音)―― 自由恋愛の――(呼吸音)――世の中やさかい――(呼吸音)」 【ちせ】「肌と、肌との、まじりあい――(呼吸音)(呼吸音)―― 体の契り、だけを求めて――(呼吸音)(呼吸音)―― 旦那はん……いえ――(呼吸音)(呼吸音)―― 男はんが来るもんや――(呼吸音)――いうて――(呼吸音)――聞きましたけど」 【ちせ】「昔は……(呼吸音)――ちせが――(呼吸音)―― 廓に買われた――(呼吸音)――ような、ころから――(呼吸音) ほんの、百年ほど前の……(呼吸音)(呼吸音)―― 『戦後』がやってくる(呼吸音)――前は――(呼吸音)――」 ;SE ティッシュで耳かき拭き 【ちせ】「……縁談も、結婚も。全部が全部、『家のこと』。 親やら親類やらが決めたことに逆らうなんて、ありえへんかった時代だったんですわ。 ずっと、ずうっと、長いこと」 ;SE 耳かき音(浅・継続) 【ちせ】「そないな時代……(呼吸音)――男はんが、廓に来はるのは――(呼吸音)、 春を、体を――(呼吸音)(呼吸音)―― 買いに来はった――(呼吸音)(呼吸音)―― いう、よりも――(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「例え一夜の、恋であっても――(呼吸音)(呼吸音)―― 自分の自由になる、恋を――(呼吸音)(呼吸音)―― 自分で選んで――(呼吸音)――好いたおなごと―― 一緒にすごせる――(呼吸音)――そないな時間を――(呼吸音)」 【ちせ】「きっと、求めて――(呼吸音)――買いに、来て――(呼吸音)―― 太夫になるような――(呼吸音)――遊女はん……(呼吸音)―― すくなくとも、ちせのお姐はん――(呼吸音)(呼吸音) ――篝火太夫は――(呼吸音)(呼吸音)」 ;SE 耳かき拭き ;7/左 【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーー)(ふーーーぅう)(ふっ!)」 ;7/左 (接近囁き) 【ちせ】「恋を求める想いに応えて―― 一夜の恋を――旦那はんとひとつになって、燃やして、過ごしておられましたわ」 ;7/左 【ちせ】「一夜の恋の他にはどこにもほんまの恋愛なんてあらへん―― それがあたりまえだった時代が、ずっと長いこと、ありましたんよ」 【ちせ】「…………ほな、ね。今度は深いところに」 ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「ん…………(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「せやさかい――(呼吸音)(呼吸音)―― 傾城、いうんも――(呼吸音)(呼吸音)―― お城を、国を――(呼吸音)――傾かす、ほど――(呼吸音)―― おんなに狂う、いうことも――(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「そないな時代には――(呼吸音)(呼吸音)―― めずらし、ことでも――(呼吸音)(呼吸音)―― なかったんです――(呼吸音)(呼吸音)―― その挙げ句の、な――(呼吸音)(呼吸音)――」 【ちせ】「心中やら――(呼吸音)――火付け、やらも――(呼吸音)―― 全然、めずらし――(呼吸音)(呼吸音)―― ことじゃ、のうて――(呼吸音)(呼吸音)―― 江戸の、吉原……(呼吸音)(呼吸音)」 ;SE stop ;SE 耳かき拭き ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「あそこ、なんかは――(呼吸音)(呼吸音)―― 江戸の、ど真ん中に――(呼吸音)(呼吸音)―― なって、しもうた――(呼吸音)(呼吸音) 元の吉原と――(呼吸音)(呼吸音)」 【ちせ】「それじゃあかんて――(呼吸音)(呼吸音)―― ゆうことで――(呼吸音)(呼吸音)―― お寺はんの裏に――(呼吸音)――移転、した――(呼吸音)―― 新吉原――(呼吸音)――とで――(呼吸音)――」 【ちせ】「250年ほどの――(呼吸音)(呼吸音)―― 歴史の中で――(呼吸音)(呼吸音)―― 23回も――(呼吸音)――大火事起こして――(呼吸音)―― 18回は、全焼しとる――(呼吸音)――くらいや、さかいに――(呼吸音)」 ;SE stop ;SE 耳かき拭き 【ちせ】「恋に焦がれて、足抜けしたくて――どさくさにまぎれそうと火付けした。 そない傾城じみた狂いさえ……。珍しいことじゃなかったんですよ。ほんまに」 【ちせ】「(ほっ、と、短く我に帰るような吐息)」 【ちせ】「(ふーーーーーーーーーーっ)(ふーーーーーっ)」 【ちせ】「もっともな。ちせみたいに禿のうちに死んでしもうた―― 水揚げもすませれんかったよーなちんちくりんは、 遠い昔の一夜の恋も、今の時代の自由恋愛も、 あはは、ぜーーんぜん縁のあらへんことやけれども。っと――」 【ちせ】「あー……もーちょこっとだけ取り残し。 お客はん……あとすこぉしだけ、じっと動かんと辛抱してな?」 ;SE 耳かき(深・継続) 【ちせ】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――っと――」 【ちせ】「痛く、せんよお――(呼吸音)(呼吸音)―― 大事に、大事に――(呼吸音)(呼吸音)―― あ――(呼吸音)――ここ、で――(呼吸音)―― ひっかい、て――(呼吸音)――のせ、て――」 【ちせ】「(慎重に耳かきを引き上げていく呼吸)*4――よしっ!」 ;SE stop ;SE 耳かき拭き 【ちせ】「(ふーーーーーーっ)(ふーーーーっ)」 【ちせ】「ん……――ん~~――うん。 うふふ、おつかれさんでした。 なんや、長話を聞かせてしもうて……あ――」 【ちせ】「(大きなあくびを見守る呼吸)――ふっ、うふふふふっ。 なんやちせ、お客はんを退屈させてしもうたみたいで…… (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ」 【ちせ】「よー考えたら――考えんでも。 頑張った頑張って修羅場を抜けて、まる二日倒れるように寝てはって。 おきたらすぐに、プチ打ち上げ――どころか、お座敷遊びにまでちせ、つきあわせてしまいましたもんなぁ」 【ちせ】「疲れもまだまだ抜けきらんとこに、おなかいっぱいであれこれやって。 そらぁもう、眠くなるなゆー方が無理なお話で……ぁ――ふ……(抑えたあくび)」 【ちせ】「いややわぁ。ちせにもお客はんのあくびがうつってしもうた。 ゆーか、お客はん…… もしも、な? もしもちせの昔話を―― 昔と、今の、ちせの話を……」 【ちせ】「もう少しだけ、聞いてもかまへん思うてくださるようなら。 ……お客はんが眠りにおちはるそのときまで。寝物語を――」 ;7/左 (接近囁き) 【ちせ】「ちせ、お聞かせしてかまへんやろか」 ;環境音 F.O.