Track 2

かぼちゃ寺参拝と音探しの始まり

;1/前 【汽子】「蓄音(ちくおん)レヱル ~名護耶鉄路樺郡線(なごやてつろかばごおりせん) ホジ6016(ほじろくせんじゅうろく)専用レイルロオド 汽子(きこ)~」 ;環境音(F.I.) ;使用環境音:☆雨のかぼちゃ寺_200126_0840.wav ;足元は濡れた砂利 ;汽子は革のロングブーツ ;汽子小走りの足音 ;9/前遠→;1/前  ;1/前 【汽子】「マスタア、お待たせいたしました。 まだ待ち合わせの5分前ですのに―― うふふっ、マスタアの姿が見えましたから、小走りになってしまいました」 【汽子】「新聞記者の方は (呼吸)(呼吸音)―― ああ、まだいらしてませんのね」 【汽子】「でしたらよかった。 汽子たち鉄道にかかわるものが遅刻をしては面目がまるつぶれですものね。 早めについて、なによりでした」 【汽子】「(呼吸音)―― うふふっ。実は汽子、もっと早くから来ておりましたの。 せっかくですし、あたりをお散歩してくって」 【汽子】「見てまいりいましたのは、港――漁港です。 『夕方になったらここからお船に乗り込むのですね』って、楽しみで。 汽子、ウキウキしすぎて、じっとしてると熱暴走をしてしまいそうで――うふふっ!」 【汽子】 「それでお散歩せずにはいられませんでしたの――あら」 ;SE 記者の足音 ;9/前遠→;1/前 ;記者がマスタアの前にくるので、汽子はマスタアのとなりに移動 ;3/右 小声でひとりごと→マスタアに接近囁き 【汽子】「いらっしゃいましたわね。 きっとこの方が、新聞記者さん」 ;マスタアと記者の会話を、じっと控えて聞く→自分の話題になり、少し意気込む 【汽子】「(呼吸音)(呼吸音)―― ! ――(呼吸音)(呼吸音)――はい」 【汽子】「はじめまして、記者さま。 汽子は、名護耶鉄路樺郡線ホジ6016専用レイルロオド、 汽子ですわ。よろしくお見知りおきくださいましね」 【汽子】「記者さまは……うふふっ、というと、機関車のようでもございますわね。 『貴社の記者が今朝の汽車で帰社した』――でしたかしら。 懐かしい冗句を思い出してしまいます」 【汽子】「改めまして―― 記者さまは、蒸気機関車をご利用になられたことが……(呼吸音)(呼吸音)」 【汽子】 「そうなのですね。 汽子は、その蒸気機関車のボイラア……前方のまぁるい筒でございますね。それと火室――石炭を焚くところと、運転台」 【汽子】「それらの動力機構を木造客車の前半分に埋め込んで――残りはそのまま客車として使用しているような、一風変わった鉄道車両―― 『蒸気動車』の、レイルロオドです」 【汽子】「(呼吸音)(呼吸音)―― 左様ですわ。 蒸気動車は、保守、点検、運用すべてに大変な手間がかかる車両ですので、広くは普及いたしませんでしたの」 【汽子】「輸入されてきたものを含めても、日ノ本全土に50両存在したかどうか…… 最後期型にあたる汽子の姉妹、ホジ6000形(けい)の蒸気動車も、全18両の生産にとどまりました」 【汽子】「汽子のホジ6016は、最初は旧帝鉄(きゅうていてつ)の神邊(こうべ)でお仕事をしておりましたの。 それから門次(もじ)に転属されて北九洲を走り回って」 【汽子】「帝鉄でのお役目を解かれたあとには、名護耶鉄路に譲渡され。 今はこうして、この樺郡線で。 ――うふふっ、なかなかの流転ぶりではございませんこと」 【汽子】「流転のうちに、汽子、姉妹たちとも次々に引き剥がされましたわ。 いまもお客様を乗せて営業運転をしておりますのは、日ノ本(ひのもと)ではもう汽子のホジ6016一両だけ……(呼吸音)。 ――さみしくない、と申しましたら、嘘になってしまいますわね」 【汽子】「けれど。で、あるからこそ。 流転に流転を重ねました汽子とマスタアとを引き受けてくださいました那児鉄(なごてつ)には、そしてこの樺郡線には、本当に感謝しておりますの」 【汽子】「その樺郡線沿線の魅力を伝える――。 なんと素敵なお仕事でしょう! 汽子、マスタアのおともとして、喜んでお引き受けさせていただきますわ」 【汽子】「それで、汽子たちはどのように、新聞読者のみなさまへと、『蒲郡線沿線の魅力』をお伝えすれば……(呼吸音)(呼吸音)」 【汽子】 「――なるほど。『音』をご紹介する―― それは、大変に興味深い着眼点でございますわね」 【汽子】「あ、いいえ。音なのですから――うふふっ、眼ではなく、耳。着耳点(ちゃくみみてん)……ちゃくじてん、とでも申しましょうか」 【汽子】「『蓄音レヱル ~レイルロオドと訪ねる日ノ本全国(ひのもとぜんこく)、音100景~』」 【汽子】「タイトルもとても素敵ですわね。 汽子、大変に気に入りました」 【汽子】「汽子の場合は、汽子のホジ6016が走る、名護鉄(なごてつ)蒲郡線沿線」 【汽子】「その各所に点在するおすすめの音風景を、マスタアとともに訪ね歩いて、感じたことを記録して―― ご報告したら、記者さんがそれを記事にまとめてくださる」 【汽子】「……汽子はそれでまったく問題ないように感じますが――(呼吸音)(呼吸音)―― かしこまりました。ではそのようにいたしましょう」 【汽子】「それでは、よりよい音探しのためにマスタア。ヘッドホンかイヤホンを、どうぞお耳におつけくださいまし」 【汽子】「(呼吸音)(呼吸音)―― よろしいようでしたら、少し、試験をしてみましょうね」 ;3/右 【汽子】「右のお耳」 ;7/左 接近囁き 【汽子】「左のお耳」 ;7/左→;1/前→;3/右 接近囁き・吹きかけ 【汽子】「ぐるうりとまわりこみまして。右のお耳にやさしく (ふーーーーーーーーーーーっ)」 ;3/右 【汽子】「うふふっ。よぉく聞こえてらっしゃいますようですね。 でしたら、これで準備は万端ですわね」 ;3/右(マイクと同じ視線=記者の方を向き) 【汽子】「記者さん。とても興味深いお話をまことにありがとうございます。 汽子ひとりでは難しいご依頼かと思いますけれど、マスタアと一緒ですもの。 きっと果たしてみせますね。どうぞ、ご期待くださいまし」 ;3/右(マイク向き) 「それではマスタア、参りましょう! 蒲郡線沿線の素敵な音を探し求める、小さな旅へ!!」 ;SE 足音、大きく強く :環境音 F.O.