Track 3

ぽんぽこ沼

;使用環境音:茂林寺沼.wav ;1/前 【りいこ】「ついた。ぽんぽこ沼。 ここね、いい音するんだよー」 【りいこ】「えへへっ、近すぎてびっくりしちゃった? さっきの場所――ぽんぽこ寺の境内から歩いて…… どのくらいかかったかな。三分……五分、たったそれだけでついちゃうけど。でも」 ;3/右(接近囁き) 【りいこ】「ね、マスター。耳をすませてみて」 ;3/右 【りいこ】「(耳を済ませて周囲の音を聞く密やかな呼吸音。一分ほど)」 【りいこ】「すごいでしょう、ここ。音が、たくさん。 生きている音。自然の音」 【りいこ】「鳥も、魚も、虫もわんさか。 りいこの好きな空を飛ぶ虫の仲間だと、ちょっとだけ珍しい、ウチワヤンマとかミドリシジミとかもいるよ」 【りいこ】「(耳をすませる、30秒ほど)」 【りいこ】「ね にぎやかでいい音でしょう ジジジジーっていってるのが、雀の地鳴き。 ケーケーケーケーって、笑ってるみたいに聞こえるのが、マガモの鳴き声」 【りいこ】「こここここって聞こえるのはね、アマガエル。 遠くにけろけろ、ヌマガエルの声も聞こえるね- ――あ!」 【りいこ】「早いの! 歌うみたいにてかろやかなの。 ハクセキレイ。珍しい。マスター、ラッキーだね」 【りいこ】「ハクセキレイなんて、一年に何回見かけるかどうかなんだよ! すごい、すごい! マスターといっしょだと、楽しいこといっつもたくさんでうれしいな! えへへっ」 【りいこ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん。 別にりいこ、鳥のことにもカエルのことにもくわしくないよ。だけど――(呼吸音)――」 ;SE 制服の袖ごそごそ 【りいこ】「この制服、腕まくりしづらいったらないんだよねー。 硬いし、ひらひらついてるし……ん、っと……」 ;SE 制服腕まくり 【りいこ】「……インタビューなんかなかったら、虫取り服で来たし、捕虫網ももってきたのにさー――。 っと、腕まくりできたー!」 ;SE しゃがみ→沼の水に手をつける ;3/右 (しゃがんでるので低いとこ) 【りいこ】「ひえっ! 沼の水冷たっ!! ん ……(呼吸音)――あはは、平気。 汚くないよー。汚かったら、こんなにたくさんの虫とか魚とか鳥とかがいるわけないもん」 ;SE 沼の水、静かにちゃぷちゃぷ(継続) 【りいこ】「それに、ぽんぽこ沼は群真県(ぐんまけん)の天然記念物で、 環境保全がしーーーーっかりされてるから、平気。 ああっ、それにしても冷たいなぁ」 【りいこ】「(呼吸音)(呼吸音)……あー、うん。 えとね、冷たいのに手をつけっぱなしにしてるのはね、 ふたつ理由があるんだよ。 ひとつは、やけどしないように――(呼吸音)(呼吸音)」 【りいこ】「あ、やけどっていうのは、りいこがじゃなくって、虫が、やけどをしちゃわないように」 【りいこ】「あのね 水生昆虫の中には、レイルロオドとか人間の手のひらの熱さが高すぎるこがいるの。 そういうこをいきなりつかまえちゃうと、きっとりいこたちで言えば、焼けたトングでつままれたのととおんなじくらいな感じになって、やけどさせちゃうの」 【りいこ】「りいこが捕まえたせいで、虫が弱って死んじゃったらヤだから、冷たいのくらいは我慢しなくちゃ。 ……(呼吸音)(呼吸音)――ん、そろそろいい感じに冷えたっぽい――」 ;SE stop 【りいこ】「(30秒ほど、じっと息をひそめる)」 ;3/右 (囁き) 【りいこ】「来た。……うふふっ。 あとひとつの理由はもちろん。――んっ!」 ;SE 水中で虫を捕まえて、捕まえたその手をそーっと水面の上にあげる 【りいこ】「かわいいでしょ。マルチビゲンゴロウ。このこも環境省の準絶滅危惧種だから、すぐに逃してあげないとねー」 ;SE 水中に手をつけ、5秒ほどであげる 【りいこ】「えへへ、ばいばーい! 元気でねー。 もうつかまっちゃだめだよー――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 ;3/右 【りいこ】「うーーーー、冷えちゃった。 あっ」 ;3/右(手をにぎってもらってる距離) 【りいこ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――えへへ、あったか。ありがと。マスター」 ;3/右 【りいこ】「でね? さっき話した、水の中に手をつけてた理由のふたつめは。 水生昆虫かなにかをつかまえて、マスターに見せてあげようって思ったから」 【りいこ】「どうして見せてあげようかって思ったかっていうと……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あれ」 【りいこ】「あれ あれれ ええっと――うーんと―― ね なんでだったっけ……(呼吸音)(呼吸音)」 【りいこ】「あ! そうだった! 『りいこが鳥にもくわしい』って、 マスターに誤解されちゃいそうって思ったからだったー」 【りいこ】「あのね りいこ、鳥のこと詳しくなくて、だけど虫は大好きだから。 虫がどんな鳥に食べられちゃってるのか、気になって調べてただけなんだよ」 【りいこ】「気になるたびに調べてたら、いつの間にか見分けられるようになって、鳴き声とかも覚えちゃったの」 【りいこ】「植物とかもおんなじで、 『オオルリハムシを捕まえた場所を記録しとこー』って思ったら、何の葉っぱの上にいたかもしらべなくっちゃいけないでしょう? それで自然と、この葉っぱがカヤツリグサで、あのお花はウシハコベとか、みわけられるようになったんだよ」 【りいこ】「だから、りいこは全然鳥も植物もくわしくないの。 りいこがちょっとはくわしいのは、虫のことと機関車のことと――(呼吸音)(呼吸音)――あとは、えへへっ! マスターのこと!!」 ;3/右→;1/前 【りいこ】「だからね、りいこ。マスターがどんなにりいこのことをいっつも助けてくれてるか、わかってるの。 わかってるから、りいこももっと、マスターの役にたちたくて……」 ;考え込む 【りいこ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 【りいこ】「……役にたちたいんだけどなぁ。 お仕事の方もこのくらい、虫のこととおんなじくらい熱心にできたら素敵だよねー」 【りいこ】「りいこもね そうしたいんだよ そうしたいけど、がんばってるけど―― なんか失敗しちゃうんだー」 【りいこ】「安全に関してだけは、絶対失敗しちゃいけないから、 そこにぎゅーって気持ちを集中するでしょう そうすると、りいこ、他のことにまでは気が回らなくなっちゃって……」 【りいこ】「だからちっちゃいミスとかポカとか、ときどき……結構しちゃうし。 マスターにフォローしてもらうばっかりで…… (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――えへへ」 【りいこ】「それでもいいんならうれしいな。 りいこが甘えて、『一緒にあそんでー』っておねだりするのが、マスターのいい気分転換になれてるんなら、ほんとにうれしい」 【りいこ】「それなら、えへへ! いっしょにどんどん楽しくなれるね! マスターはりいこと遊んで気分転換できて、 りいこはマスターに遊んでもらえるとたのしくて、 それだけじゃなく、りいこだと背が届かない高いとこの虫も捕まえてもらえるし」 【りいこ】「前ね、虫取り手伝ってもらったとき、 マスターがまさかのコロギス捕まえてくれたのも、とーってもうれしかったんだよ。 りいこ、ちょっととろいから、コロギス捕まえられたことなかったし――(呼吸音)(呼吸音)」 【りいこ】「えへへ。 コンビネーション! とっても素敵な言葉だねー。 コンビネーション! コンビネーション!!」 【りいこ】「マスターとりいこ、コンビネーションがいいんだね。 やったぁ! うれしい。 りいこ、自信がついちゃった! ほんとにありがと、マスター」 【りいこ】「なんだかりいこ、虫取りしたくなっちゃった。 ね、マスター、このまま湿原の方いってみない 捕虫網ないけど、あそこだったら――あっ」 ;環境音 雨をプラス ポツポツ ;空をみあげながら 【りいこ】「やだなぁ、降り始めてきちゃった―― あ、じゃないや! 降ったら降ったで、いい音集め、ラクできるんだ!!」 ;1/前→;3/右 (お隣に並んで、腕を引っ張る) 【りいこ】「そんな急には土砂降りにならないっぽいし、ちょうどいいかな――うん!」 【りいこ】「それじゃあ、マスター! このまま森の方にいこ!」