Track 5

水平線の丸く見える丘展望館

;7/左 【西瓜】「ああ……」 ;環境音 地球音見える丘展望館(屋上) 【西瓜】「水平線の丸く見える丘展望台── 名は体を表す──日ノ本のことわざにあるとおりですね。 水平線が、地球全部がまるぅく見えます」 【西瓜】「このくらい離れてしまうともう、波の音さえ聞こえなくなるのですね。 聞こえるのはただ、セミたちの声と、風の音だけ……」 【西瓜】「(呼吸。30秒ほど)──夏、ですね、先生。 これが、日ノ本の……いえ、釣子の、夏」 【西瓜】「北琴の夏と釣子の夏は、少し似ているように思います。 気温が高く、けれどもとてもカラリとしている」 【西瓜】「……思い出したら、少し懐かしくなってしまいました。 ここから見るのは、どんな望遠鏡を使っても無理なことでしょうが── 北琴は、仲国は……ここからだと、西北西にあたりますね。ん──」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──森と町と海、ただそれだけしか見えません。 このずうっと向こうに、金澤があり、日ノ本海があり、長鮮半島があり、孛海湾(ぼっかいわん)があり──そこを越えて、ようやく北琴……」 【西瓜】「そう考えると、先生と西瓜は、随分と遠い旅路をご一緒してきているのですね。 ふふっ、西瓜はお供ができましたこと、とても嬉しく感じています。 幾度の視察を繰り返しても日ノ本は、常に新しい顔を見せてくれる、飽きぬ楽しい土地ですけれど」 【西瓜】「先生と一緒に尋ねる日ノ本は、いままでのどの視察より、魅力的で美しい姿を、西瓜に見せてくれました。 その上、音も──」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 【西瓜】「西瓜は、音が大好きです。 ですのでいままでも、日ノ本のたくさんの音を楽しんできたつもりでした」 【西瓜】「蒼森の、たくさんの人に踏み固められ、それでもどんどん新雪が振り積んでくる雪道を踏む、あのキシキシとした、小動物の鳴き声のような音」 【西瓜】「深い竹林で笹の葉が風に吹かれてさらさらと囁き合う音。強い風にしなった竹が竹とぶつかり、カァンと響く、びっくりするほど大きく、乾いた、澄み切った音」 【西瓜】「庭園の片隅にひっそりとしつらえられた水琴窟が、水滴の音をさまざまに重ねて奏でる音」 【西瓜】「どれも実に日ノ本を感じる、とても素敵な音でした。けれど、そうした音だけではなく、 釣子電鉄の沿線の、日常の、観光の中にいくらでもころがっているような音たちまでもがこれほど素敵なものだとは、西瓜は気づいていませんでした」 【西瓜】「先生はいかがでしたか? 日ノ本の旅、日ノ本の景色、日ノ本の音── 先生のこころを動かすものがもしひとつでもあったのならば、西瓜はそれが何であるのかを知りたいのです」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──ああ」 【西瓜】「やはり、日ノ本に来てよかったです。 先生とともにこの風を感じることができて、この風景を眺めることができて、西瓜は、とても幸せであると感じています。 もっとも──」 【西瓜】「焼け付くようなこの陽射しのキツさだけは──っ!!!!」 【西瓜】「先生、お肌が赤くなってしまっています! これは……日焼け──肌が火膨れを起こしてしまいかけているということですね」 【西瓜】「先生のお肌の状況に注意できていなかったことを、西瓜は恥ずかしく思います。 いまからでも対処を行い、火脹れの発生を未然に防がねばなりません」 【西瓜】「こんなこともあろうかと、西瓜は保湿できる乳液を用意してあります。 幸いにして、日ももう沈もうとしています。 まずこの乳液でお肌を冷やし保湿して。これ以上の火膨れをふせぎ。 お肌が十分落ち着いてからご入浴いただき。 しかるのち、明日の朝に日焼け止めのオイルを塗り直す──これが、最善の対処ではないかと西瓜は考えます」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──でしたら、ケアをはじめましょう。 先生、まずは首の後から失礼いたします。 乳液をたっぷりめに手にとって──ん──」 ;SE 乳液をたっぷり手にとり→のばす 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)。 うん。では、首の後ろにぬっていきます。アゴを胸につけるようにして、お首を曲げていただけますか」 ;1/前 ;$=SE=乳液ぬり 【西瓜】「ん……$ (呼吸音)(呼吸音)──お肌、ほてってしまっています──$ (呼吸音)(呼吸音) 背中の方まで塗り拡げましょう──$──(呼吸音)(呼吸音)──冷やして、保湿──$ この乳液が、必ず役立ってくれるはずです」 【西瓜】「首筋は……$──(呼吸音)(呼吸音)──ん……こんな感じでどうでしょうか。 少し、呼気(こき)で首筋のお肌を冷やしますね。(ふーーーーっ)(ふーーーーーっ)(ふーーーーーーーーっ)」 【西瓜】「うふふっ、ゾクゾクするということは、冷却がうまくいっているという証拠です。 西瓜は大変安心しました。では、手の方もこの方法を踏襲してやっていきましょう」 ;2/右前 【西瓜】「先生、右手を失礼いたします。……ああ、こちらも赤くなってきてしまっていますね。 たくさん、潤して冷やしましょう」 ;SE 乳液をたっぷり手にとり→のばす 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──っと。 では、いきますね。ん──$ (呼吸音)(呼吸音)──手の甲──$(呼吸音)(呼吸音)── 手首と──$──(呼吸音)(呼吸音)──二の腕……$──(呼吸音)(呼吸音)──腕の、つけね──$──(呼吸音)(呼吸音)──まで」 【西瓜】「ぬれたら、冷やす──(ふーーっ、ふーーーーっ、ふーーーーーーっ、ふーーーーーーーーーーっ)」 【西瓜】「(満足の息)……ふふっ。先生が潤されてらっしゃるのを見て、西瓜もほっとしています。 あとは左腕だけ、きちんとケアしてしまいましょう」 ;SE 乳液をたっぷり手にとり→のばす 【西瓜】「たっぷりしっかり乳液を──(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──うん。 では、はじめます」 【西瓜】「$(呼吸音)(呼吸音)──っ──$──(呼吸音)(呼吸音)──っと──(呼吸音)(呼吸音)── で──$……(呼吸音)(呼吸音)……あとは、付け根、で──$──(呼吸音)(呼吸音)──。ふふっ、よさそうですね」 【西瓜】「最後の仕上げにひやし、て──(ふーーーーっ)(ふーーーーーっ)(ふーーーーーーっ)(ふーーーーーーーーーーーーーーっ)」 ;1/前 【西瓜】「はい、これで随分冷えたしうるおったと思います。 このまま馴染むのを待って────あっ」 ;3/右 (接近囁き) 【西瓜】「ごめんなさい。西瓜、先生のお肌を少し、冷やしすぎてしまったかもしれませんね」 ;1/前 【西瓜】「けれど、乳液がお肌が冷やしうるおし落ち着けるその前に、お風呂などで流してしまっては本末転倒です。 この状況に対応するには──(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──ああ!」 【西瓜】「先生。どうぞご安心ください。 西瓜はなかなか素晴らしい解決策にたどり着けたかと思います」 ;環境音 F.O.