Track 3

猫吠埼湧水(湧き水の音)

;7/左 「あ……あ……あ……暑い」 ;環境音 犬吠埼湧水(周囲) 「マイスター、アルジェは電機──電気機関車のレイルロオドだ。 気温50度でも涼しい顔をしている蒸気機関車レイルロオドたちとは、文字通りに作りが違う」 「いま、気温は何度だろうか。アルジェの体感では40度はある。 制服も制帽も黒基調のアルジェには、この陽射しはことのほか、キツイ」 「……やはり若ぶって猫吠崎灯台の上まであがったりしなければよかった。 あそこから見える景色はたしかに絶景ではあるが、アルジェには見慣れたものではあるし、音はすべて風の音だし」 「それに──九十九段の階段の登りきったあとの、あのはしご! 知っていて、覚悟していてもやはり大変厳しいものだとアルジェは感じた。人工筋肉、関節各部が、あの負荷ではっきりと熱をもってしまった」 「とはいえ──ふふっ。猫吠崎灯台からの景色を楽しむマイスターの横顔は、悪くなかった。 アルジェには、景色よりもさらに綺麗なものと──む」 ;7/左(密着) 「マイスター、顔色が随分赤い……ああ、これはアルジェがうっかりしてしまっていた。 電機レイルロオドのアルジェよりも、生身の人間であるマイスターの方が、さらに熱や日光に弱いということは、わかりきっていたことだというのに」 「マイスター。アルジェの肩につかまるといい。もう少し。 もう少しだけ先へ進めば、マイスターとアルジェを冷やし、潤してくれる場所へとたどり着けるから」 ;足音数歩 ;環境音に犬吠埼湧水そのもののの音プラス 「……(安堵の息)──到着した。ここだ。猫吠埼湧水」 「ここの水は天然水の、淡水の湧水。もちろん飲用にも向いていて──あ」 ;5/後 「(ものすごい勢いで水を飲むマイスターを、微笑ましげに見守る呼吸音とニュアンス。30秒ほど)──ふふっ」 ;7/左 「……素晴らしい飲みっぷりだとアルジェは感心する。が、それほどまでに乾燥・加熱させてしまったことには反省しきりだ。 次以降は、もっとマイスターの水分補給にも気をくばるよう、改善しよう」 「あ……(呼吸音)(呼吸音)──うん。 アルジェにも給水が必要であることも確かだ。それでは、少し失礼して──ん……」 「(ごくごくと水を飲むお芝居。息継ぎいれつつ、20秒ほど)──ぷあ」 「ああ……アルジェも乾燥していたのだな。これほどまでに真水を美味しく感じるとは── いや、実際にこの湧水が非常においしいものなのかもしれない。無味無臭であるとしか判断できなけれど…… アルジェの貧弱な味覚・嗅覚センサでは感知しえない、もっとなにか、ふかいところで──と、いうか、だ── この湧水は水温も低い。いっそ、こうして頭から──」 ;SE アルジェ、頭に湧水をかける 「(幸せそうな吐息)──あああ、なんたるここちよさだ。アルジェもやはり、相当に加熱してしまっていたのだな。 うぅ……リアルタイムで冷却されていくことに、実に大きな安堵と幸福感とを覚える── (満足そうな呼吸、10秒──)──うん」 ;SE 犬のように頭を振って水気を飛ばす 「(上記動作にふさわしいニュアンス)──っと」 「ん? ああ、アルジェはタオルをもってきている。 この間出たばかりの新商品、デキ3マフラータオルだ。 今春(いまばり)製の品質確かな商品なので、このくらいの水は──」 ;SE アルジェ、タオルで自分の頭をごしごし 「(頭をタオルで拭くニュアンスと息、15秒ほど。あっさりめ)」 「ふう。アルジェくらいの髪の短さであれば、このように一瞬で乾かすことができる── というか、マイスターも汗だくだな。水をかぶるにせよかぶらないにせよ、よければアルジェが汗をふくが」 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──ふふっ」 ;1/前(密着) 「では、吹こう。アルジェの手の届く高さまで頭を下げて──(呼吸音)──グート、いいこだ。 そのまましばらく、動かずじっとしていてほしい」 ;SE タオルで顔→首をすじ→頭を丁寧にふいてあげる 「まずは、顔──(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──っと、くすぐったくても我慢してほしい──ん――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 「で、首筋もゆっくり、丁寧に――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ん、と――もう少し――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うん」 「あとは頭だ。すぐに乾くし、頭は多少雑でもよかろう――(呼吸音)(呼吸音)――ふふっ、冗談だ。ちゃあんとやるから、どうか安心してほしい。んしょ――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――で――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――よし」 「ふふっ、これでアルジェもマイスターも、猫吠崎湧水をめいっぱい味わったことに、ああいや」 ;3/右 「もうひとつだけ忘れていた。このマフラータオルを、こうやって、湧水にたっぷりひたして――」 ;SE マフラータオルを湧水で濡らす 「(その作業をする息とニュアンス、30秒ほど)」 ;$=SE タオル絞り 「……うん。このように全体がまんべん無く濡れたなら――ぎゅーーーーーーーっ――$ タオルを―― $固く――んっ――$絞って――(呼吸音)(呼吸音)――$――しぼ、って――(呼吸音)(呼吸音)――よし!」 「これでこのタオルを首にまく――と――うひひっ! 冷たい。グーーート。アルジェの想像どおり、大変によい冷却材になる」 ;3/右 ‘ほら”から→;1/前 「では――ほら、なにをぼーっとしているんだ、マイスター。 アルジェが巻いてあげるから、またかがんで高さをあわせてくれないと――うむ?」 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――そんなことは説明するまでもないだろうと思うのだけれど。 電機とはいえ、アルジェはレイルロオドだ。人間であるマイスターよりは、耐熱性能にすぐれている。 ゆえに、この冷却材はマイスターが使う方が理にかなっている」 「それに、だ。アルジェのマイスター。 仮にマイスターが倒れてしまったとして、アルジェがマイスターを救急搬送することは不可能になってしまうが――(微笑)」 ;3/右 (接近囁き) 「マイスターさえ無事でならば、アルジェは必ず助けてもらえる。――そうだろう?」 ;環境音 F.O.