圓福寺で写経体験(写経の音)
;7/左
「……あ…………」
;圓福寺環境音(空調) F.I.
;7/左(ひそひそばなし)
「マイスター、どうしよう。このボクジュウというのはリキッドタイプだ。
せっかくの貴重な機会、アルジェはTVで見たやつ――ソリッドタイプのをごりごりやるのを試してみたいのだけれど……」
「(呼吸音)(呼吸音)――‘スミヲスル”――なるほど、‘スミヲスッテミタイ”とリクエストしてみれば、あるいは叶うかもしれないのか」
;7/左
「ダンケ、マイスター。リクエストしてダメならもちろんあきらめるけれど、リクエストしないであきらめれるのは、アルジェの好まないところだ。だから――こほん」
;7/左(体ひねってマイクと反対向き)
「すみませーーーん!
このボクジュウではなく、スミヲスルで写経体験をさせていただくことは可能でしょうか。
アルジェは、スミヲスッテミタイ、のです」
;SE たたみの上、足袋の足音が近づいてくる
「あ、お坊様……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ダンケ! ありがとうございます。
アルジェはとても嬉しいです。
それで、具体的なやりかたは――」
;参考動画
https://youtu.be/tTBuS1ugFzg
;SE 机の上に小さな水差しと墨のはいった桐箱がおかれる
;7/左(マイクと同じ視線/机の上に目を落としている)
「おお、なんとかわいいらしいポット! アルジェは大変に興奮している。
それと、木のハコ?……(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、キリバコ」
;SE 桐箱、アク
「ああ! キリバコの中にスミが! すばらしい! TVで見たのと、まるでおんなじ形をしている」
「あ、はい、お坊様。アルジェは、写経のことにもスミのことにもまったく知識を有していないので、ぜひ教えてください。
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――なるほど」
「スミをする台が、スズリ。
小さなポットの名前は、ミズサシ。スズリの中の平らな部分が、スミをするためのスペースがリク。スズリの凹んだ――スミをすりおえた水が流れ込み、たまるための構造になっている部分が、ウミ」
「――ありがとう。アルジェは用語を覚えました。では、実際の……(呼吸音)(呼吸音)――はい、ご指導をいただきまなら、アルジェはスミをすっていきます」
「まず、スズリのリクの部分――平たい部分に、ミズサシから必要量の水を注ぐ。アルジェは了解しました。ん……」
;SE 水差しから水をとぷ、くらい
「(息を慎重に水を注ぐ呼吸音とニュアンス。1~2呼吸)」
「あ。これだけですか。アルジェが予想していたよりも少ないです」
「次に……ああ、この水の上でスミを擦っていくのですね。スミをスズリにあてる確度は、垂直――
なるほど。そうすれば一番接地面積が多くなるからですね」
;SE すみをスズリにあてる
「(呼吸音)――ん……そうしてスミを――こころを鎮めて優しく優しく、力をいれず、ゆっくり気長に擦っていく。
スミを擦る動きは……(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、ひらがなの”の”を書くように」
「それではアルジェはやってみます。(深く息を吸う)
こころを鎮めて、優しく優しく力をいれず、ゆっくり気長に、ひらがなの”の”を書く動きで――」
;SE スミをする(継続)
「ん……(慎重な呼吸音とニュアンス、一分ほど)」
「ぁあ……だんだん、色が濃くなってきました――(呼吸音)(呼吸音)――
ねばりもでて――(呼吸音)(呼吸音)――
それに、香りが――(呼吸音)(呼吸音)――
とても優しい、豊かな香りがしてきました――(呼吸音)(呼吸音)」
「アルジェは、これが――(呼吸音)(呼吸音)――
スミをするのが――(呼吸音)(呼吸音)――
かなり好きかも――(呼吸音)(呼吸音)――
しれません――(呼吸音)(呼吸音)」
「とても、落ち着き――(呼吸音)(呼吸音)――
色と粘りが――(呼吸音)――増すごとに――(呼吸音)――
香りが豊かに――(呼吸音)――なるにつれ――(呼吸音)――
アルジェの、こころも――(呼吸音)(呼吸音)――っと」
;SE stop
「(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、このくらいの濃度になったら、スミをいったん押し出してウミに流し込む。
こう、ですね――」
;SE スミを押し出しウミに流す
「(呼吸音+ニュアンス *8)――うん。アルジェはきれいに流し込めたかと思います」
「そうしたら……(呼吸音)(呼吸音)――はい、これを繰り返すのですね。写経に必要な量になるまで。
では、終了のご指示があるまで、アルジェは同じことを繰り返します」
;SE 水滴注ぎ
「まずは、リクに水を――(呼吸音)(呼吸音)」
;SE スミ摺り
「そうしたら、力をいれて、こころを鎮めて、ひらがなの”の”を書く動きで、ん……
(集中してスミをするニュアンスと呼吸。一分ほど)」
;呼吸音F.Oしていって、スミをする継続SEだけ、一分ほど
「っ!? ああ、これでスミの量は十分ですか。
アルジェは、いま――アルジェはいま、完全に周囲の状況がわからなくなっていました。
世界に、スミとスズリとアルジェしかない――そんな感覚を味わっていたものかと認識します。
不思議です。センサの故障でしょうか」
「(呼吸音)(呼吸音)――ああ。“そこまで集中できていた”ことの証拠であるなら、
それが素晴らしいとご評価いただけることであるなら、アルジェは大変嬉しく誇らしく思います」
;$=SE セリフ合わせ
「この次は――(呼吸音)(呼吸音)――はい。
擦り終わったスミを、ティッシュにちょんちょんとつけてかわかし――$――(呼吸音)(呼吸音)。
そのスミを、もとの桐箱の中にしまう――$――よし、と」
「そうしたらその次は――(呼吸音)」
;SE 紙ペラ
「これは? (呼吸音)(呼吸音)――なるほど、お手本ですか。
このお手本となるお経を書き写していくから、写す・お経で、写経。なるほど、アルジェは了解しました」
;$=SE セリフ合わせ
「筆先を?……(呼吸音)(呼吸音)――はい、そうっと優しく、擦ったスミへと軽く浸して、整えて――$――(呼吸音)(呼吸音)――ん……」
「そうしたら、こころをしずめてひたすらに写経していけばいい――わかりました、お坊様。ご指導、まことにありがとうございました」
;SE 足音去っていく
「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
;7/左(マイクに顔向け)
「と、いうことだマイスター。それではしばらくおしゃべりするのは中断し、写経を開始しようではないか」
;7/左(接近囁き) ‘では”で→;7/左(マイクと同視線)
「アルジェがどれほど見事に写経するものか――ふふふっ、大いに期待していてほしい。(息を吸う)――では」
;SE 写経(継続)
「ん……(集中して写経する呼吸とニュアンス、60秒ほど)」
「(集中して写経する呼吸とニュアンス、60秒ほど)」
;SE 写経、環境音 F.O,