Track 5

圓福寺で写経体験(写経の音)

;7/左 「……あ…………」 ;圓福寺環境音(空調) F.I. ;7/左(ひそひそばなし) 「マイスター、どうしよう。このボクジュウというのはリキッドタイプだ。 せっかくの貴重な機会、アルジェはTVで見たやつ――ソリッドタイプのをごりごりやるのを試してみたいのだけれど……」 「(呼吸音)(呼吸音)――‘スミヲスル”――なるほど、‘スミヲスッテミタイ”とリクエストしてみれば、あるいは叶うかもしれないのか」 ;7/左 「ダンケ、マイスター。リクエストしてダメならもちろんあきらめるけれど、リクエストしないであきらめれるのは、アルジェの好まないところだ。だから――こほん」 ;7/左(体ひねってマイクと反対向き) 「すみませーーーん! このボクジュウではなく、スミヲスルで写経体験をさせていただくことは可能でしょうか。 アルジェは、スミヲスッテミタイ、のです」 ;SE たたみの上、足袋の足音が近づいてくる 「あ、お坊様……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ダンケ! ありがとうございます。 アルジェはとても嬉しいです。 それで、具体的なやりかたは――」 ;参考動画 https://youtu.be/tTBuS1ugFzg ;SE 机の上に小さな水差しと墨のはいった桐箱がおかれる ;7/左(マイクと同じ視線/机の上に目を落としている) 「おお、なんとかわいいらしいポット! アルジェは大変に興奮している。 それと、木のハコ?……(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、キリバコ」 ;SE 桐箱、アク 「ああ! キリバコの中にスミが! すばらしい! TVで見たのと、まるでおんなじ形をしている」 「あ、はい、お坊様。アルジェは、写経のことにもスミのことにもまったく知識を有していないので、ぜひ教えてください。 (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――なるほど」 「スミをする台が、スズリ。 小さなポットの名前は、ミズサシ。スズリの中の平らな部分が、スミをするためのスペースがリク。スズリの凹んだ――スミをすりおえた水が流れ込み、たまるための構造になっている部分が、ウミ」 「――ありがとう。アルジェは用語を覚えました。では、実際の……(呼吸音)(呼吸音)――はい、ご指導をいただきまなら、アルジェはスミをすっていきます」 「まず、スズリのリクの部分――平たい部分に、ミズサシから必要量の水を注ぐ。アルジェは了解しました。ん……」 ;SE 水差しから水をとぷ、くらい 「(息を慎重に水を注ぐ呼吸音とニュアンス。1~2呼吸)」 「あ。これだけですか。アルジェが予想していたよりも少ないです」 「次に……ああ、この水の上でスミを擦っていくのですね。スミをスズリにあてる確度は、垂直―― なるほど。そうすれば一番接地面積が多くなるからですね」 ;SE すみをスズリにあてる 「(呼吸音)――ん……そうしてスミを――こころを鎮めて優しく優しく、力をいれず、ゆっくり気長に擦っていく。 スミを擦る動きは……(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、ひらがなの”の”を書くように」 「それではアルジェはやってみます。(深く息を吸う) こころを鎮めて、優しく優しく力をいれず、ゆっくり気長に、ひらがなの”の”を書く動きで――」 ;SE スミをする(継続) 「ん……(慎重な呼吸音とニュアンス、一分ほど)」 「ぁあ……だんだん、色が濃くなってきました――(呼吸音)(呼吸音)―― ねばりもでて――(呼吸音)(呼吸音)―― それに、香りが――(呼吸音)(呼吸音)―― とても優しい、豊かな香りがしてきました――(呼吸音)(呼吸音)」 「アルジェは、これが――(呼吸音)(呼吸音)―― スミをするのが――(呼吸音)(呼吸音)―― かなり好きかも――(呼吸音)(呼吸音)―― しれません――(呼吸音)(呼吸音)」 「とても、落ち着き――(呼吸音)(呼吸音)―― 色と粘りが――(呼吸音)――増すごとに――(呼吸音)―― 香りが豊かに――(呼吸音)――なるにつれ――(呼吸音)―― アルジェの、こころも――(呼吸音)(呼吸音)――っと」 ;SE stop 「(呼吸音)(呼吸音)――なるほど、このくらいの濃度になったら、スミをいったん押し出してウミに流し込む。 こう、ですね――」 ;SE スミを押し出しウミに流す 「(呼吸音+ニュアンス *8)――うん。アルジェはきれいに流し込めたかと思います」 「そうしたら……(呼吸音)(呼吸音)――はい、これを繰り返すのですね。写経に必要な量になるまで。 では、終了のご指示があるまで、アルジェは同じことを繰り返します」 ;SE 水滴注ぎ 「まずは、リクに水を――(呼吸音)(呼吸音)」 ;SE スミ摺り 「そうしたら、力をいれて、こころを鎮めて、ひらがなの”の”を書く動きで、ん…… (集中してスミをするニュアンスと呼吸。一分ほど)」 ;呼吸音F.Oしていって、スミをする継続SEだけ、一分ほど 「っ!? ああ、これでスミの量は十分ですか。 アルジェは、いま――アルジェはいま、完全に周囲の状況がわからなくなっていました。 世界に、スミとスズリとアルジェしかない――そんな感覚を味わっていたものかと認識します。 不思議です。センサの故障でしょうか」 「(呼吸音)(呼吸音)――ああ。“そこまで集中できていた”ことの証拠であるなら、 それが素晴らしいとご評価いただけることであるなら、アルジェは大変嬉しく誇らしく思います」 ;$=SE セリフ合わせ 「この次は――(呼吸音)(呼吸音)――はい。 擦り終わったスミを、ティッシュにちょんちょんとつけてかわかし――$――(呼吸音)(呼吸音)。 そのスミを、もとの桐箱の中にしまう――$――よし、と」 「そうしたらその次は――(呼吸音)」 ;SE 紙ペラ 「これは? (呼吸音)(呼吸音)――なるほど、お手本ですか。 このお手本となるお経を書き写していくから、写す・お経で、写経。なるほど、アルジェは了解しました」 ;$=SE セリフ合わせ 「筆先を?……(呼吸音)(呼吸音)――はい、そうっと優しく、擦ったスミへと軽く浸して、整えて――$――(呼吸音)(呼吸音)――ん……」 「そうしたら、こころをしずめてひたすらに写経していけばいい――わかりました、お坊様。ご指導、まことにありがとうございました」 ;SE 足音去っていく 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 ;7/左(マイクに顔向け) 「と、いうことだマイスター。それではしばらくおしゃべりするのは中断し、写経を開始しようではないか」 ;7/左(接近囁き) ‘では”で→;7/左(マイクと同視線) 「アルジェがどれほど見事に写経するものか――ふふふっ、大いに期待していてほしい。(息を吸う)――では」 ;SE 写経(継続) 「ん……(集中して写経する呼吸とニュアンス、60秒ほど)」 「(集中して写経する呼吸とニュアンス、60秒ほど)」 ;SE 写経、環境音 F.O,