Track 4

關門海峡の船たち/海峡の音+行き交う船達の音

;SE 足音、玉砂利を踏む ;1/前 【しろがね】「ここです。マスター」 ;環境音 関門海峡を船が行き来する ;SE コンクリの階段を一段おりてしゃがむ ;9/前遠 【しろがね】「この石段が、しろがねの秘密の特等席なんです。 んしょ――はい、マスターの分もハンカチ敷きましたから、 お隣、もしもマスターがイヤじゃなければ……(呼吸音)(呼吸音)――」 ;7/左 【しろがね】「よかった。ありがとうございます。 唐穫(からと)に行って、人道また歩いて戻ってきてで結構歩きましたもんね。 マスターの足も、きっとちょっと疲れちゃったんじゃないかな、って――ふふっ」 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あ、はい。神社です。布刈(めかり)神社。 ――しろがね、詳しくは知らないんですけど、なんと西暦200年。 大火の改新(たいかのかいしん)よりも400年以上前に創建された神社なんだそうです」 【しろがね】「多分、門次港で……っていうか、日ノ本全部をみまわしたって、一番古いくらいの神社なんじゃないんですかね。わかんないですけど。 で、しろがね的にここの一番のお気に入りのポイントは――」 ;7/左(マイクと同じ視線) 【しろがね】「(一分ほど、海を見つめ続ける呼吸)」 【しろがね】「……こんなにたくさんの船が、門次港と下關、歩いて渡れるほどにせまーい海峡を、ひっきりなしに行き来していく。 ……この光景は、この音は。きっと、門次港・下關――關門海峡ならではなんじゃないかなって、しろがね、思うんです」 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――いろんな色の、いろんなかたちのお船たち。 おっきな文字で書いてあるのは、お船と会社の名前なのかな。 シン……トランス? アンド、シーエスシー。コスコ、かな? シッピング。チュン・ハン……んん? 表記は詠語(えいご)ですけど、仲国(ちゅうごく)とか藩国(はんこく)のお船ですかね――あ」 【しろがね】「……あのひらぺったいお船、おっきなクレーンがついてますね。 オオエフジェルタンカー……あのクレーンで、何を積み込むんですかね…… 積み込み風景、みてみたいなぁ」 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――あ、うん、そうですね。 言われてみたら、結構しろがね、お船、好きなのかもです。 なんでかな――理由とかはよくわかんないんですけど……」 【しろがね】 「ここは……うん。ときどきくるんです。お天気がよくて、することなくて、のんびりしたいときとかに ――あ……ぽんぽん船(せん)」 ; 09:50あたりからの、ぽんぽん船が通り過ぎていく音か再現かでいただけますと幸いです ;7/左 (マイクと同じ視線) 【しろがね】「(一分ほど、ぽんぽん船がゆったり通過していくのを見守る呼吸音)」 【しろがね】「……うふふ、のんびりしていてかわいいですよね、ぽんぽん船。 ……って、あのタイプのお船のことです。ぽんぽんぽんって音をたてながら走ってくお船。 正式名称じゃないと思いますけど、しろがねは、ぽんぽん船って呼んでます」 【しろがね】「ああいうの見てると、なんか、むつかしく考えちゃってたこととかが、ほぐれていく気がするんです。 こう……うーんと……(少し考え込む) ――『やる前に心配しすぎてもしょうがないか。やってみてからまた考えよう』みたいな感じで」 ;7/左 (マイク向き) 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――です。しろがね、やっぱりちょっと心配性みたいで。 ついつい、どうしても考えすぎちゃうから、その度、ここに。 ……はじめて来たのは、あの……ええと、はずかしいから、内緒話で」 ;7/左 (耳打ち・ひそひそ) 【しろがね】「一番最初は、お守り買いにきたんです。しろがね。レイルロオドなのに――おかしいですよね」 ;7/左 (通常・マイク向き) 【しろがね】「……しろがね、だって。急につれてこられたから……。 それまでは本当に平凡に、東峡道(とうかいどう)線走ってたのに……關門海峡トンネルが開通したから、そこの牽引専用機に、とか突然命令されて」 【しろがね】「海の底のトンネルだなんて、水が入ってきて沈んだり、そこまでいかなくても錆びたりしたらどうしようって、心配で心配で怖くて怖くて。だから、新しい機関区に一番近くてできるだけ古い神社で、安全のお守り買いたいなぁって」 【しろがね】「それでここのこと調べて、来て。お守り買って帰ろうって思ったら、この石段から海が見えるの気がついて。お船がすごい数行き交うのについ……みとれちゃって」 【しろがね】「(微笑まじりの吐息)――みとれるうちに、気持ちが軽くなったんです。 お船、ものすごい、山みたいな荷物積んでるのとか、おんぼろでいまにも沈みそうにみえるのとか、 そういうのも全然平気で、すいすいすーいって海を渡っていって」 【しろがね】「……人間の技術ってすごいなって、それで思って。 しろがねも、しろがねのEF10も、關門海峡トンネルも、そういうふうに安全につくられてるんだって思って。 そうしたら、きっとだいじょうぶって――えへへ、しろがね、単純ではずかしいんですけど――ふんわり気持ちが軽くなって」 【しろがね】「実際は着任したら、やっぱり浸水はあるし、トンネル内で立ち往生しちゃうこも出るしで―― あはは、いろいろ大変でした、ほんとに。 だけど、だんだんよくなって、安定してって――」 【しろがね】「大廃線で帝鉄がなくなっちゃって、どうなるのかなって思ったときも、 第三セクターになって存続できたし……それに、えへへ」 【しろがね】「マスターともずっと一緒で――しろがね、それがなにより一番すごい安心だなって―― (呼吸音)(呼吸音)――あ! そう考えると、ここのお守りのご利益がものすごいのかもですね。気が付かなかった」 【しろがね】「こういうのって、えと――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あー、そうなんですね。 お礼参りっていうのをするといい」 【しろがね】「それじゃあしろがね、お礼参りします。 マスター、やりかた教えてもらっても……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――えへへ、ありがとうございます」 【しろがね】「それじゃあ――んしょ」 ;SE 立ち上がる→海を背中にして石段あがって、玉砂利の足音数歩 ;SE 神社の鐘がらがら ;3/右(マイクと同じ視線) 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)、お賽銭をいれて、ニ回お辞儀して、ニ回拍手して、こころの中でお礼をいって、一回お辞儀しておしまい」 【しろがね】「しろがね、覚えました。そうしたら――」 ;SE 賽銭なげこみ 【しろがね】「(マイク前で2拍手お願いします)――ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」 ;超小声でささやき 【しろがね】「本当にありがとうございます。これからもどうか安全に、マスターとずうっと――(呼吸音)――」 ;3/右(通常) 【しろがね】「ふうっ。お礼参りもできてよかったです。 それに、音も――(呼吸音)(呼吸音)――えへへ、ここならばっちり關門海峡線沿線の音ですよね。 マスターにもそう思ってもらえるなら嬉しいです」 【しろがね】「そうしたら、あと一箇所だけ――海周りの音が続いたから、ちょっと変化をつけた音。 しろがね、候補思いつきました」 【しろがね】「……結構道路が近いから、紹介にいいかどうかはわからないんですけど。 でも――単純にいいところだし、のんびりできるところだから、マスターといってみたいなぁって」 【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――えへへ! いいですか。 そうしたら、バス停にいってエアクラバスにのっちゃいましょう!」 【しろがね】「歩くと結構遠いんですけど、バスでならすぐ着いちゃいますから!」 ;環境音 F.O.