何もしないって、約束してくれます…?
温泉までは、どれくらいあるんですか?
(男:すぐ近くだよ)
それなら、少し歩いているうちに着きますね。
ふぅ…。この森っていいですよねぇ。
気分転換にはぴったりの場所だと思いません?
私、普段は街の学校に通ってるんですが、
時々、気分転換にここの別荘に来て、森を散策するんです。
ここは自然が豊かですし、木が多すぎないというか、
あまりうっそうとしていないのがいいところだと思います。
…貴方も、ときどきここへ来るのですか?
(男:いや、初めて)
えっ、初めてなんですか?
(男、事情を説明)
…なるほど、お爺さまと交代で、これから貴方がこのあたりを管理されるのですね。
ということは…今から向かう温泉も初めて見るのですか?
(男:初めて)
やっぱりそうなんですね。
どんな温泉なのか、ワクワクですね?
(男、うなずく)
ふふっ。
あ、あの奥に見えるのが、そうじゃないですか?
あの、木の板の壁に覆われてるところ。
中が気になりますねっ。
あぁ、温泉っぽい匂いも漂ってきました。
水が流れる音も、うっすらと…。
…? …えっと、あの温泉は、貴方のお爺さまが一人で作られて、
でもそのお爺さまは、今はここにいなのですよね?
ということは、今、温泉は無人なんですよね…?
温泉のお湯が出続けていても、大丈夫な仕組みになってるんでしょうか…?
(男:そのはず…)
そ、そのはず、ですか…。
ま、まぁ、見てみればわかりますね。
ふぅ、着きましたね。
えっと、入り口は…。あぁ、ここが扉になってるんですね。
あの、私があけてみてもいいでしょうか?
(男:どうぞ)
はい、では…!
うわぁ…。いいですねっ、きれいです!
思ってたより広いですし、景色もいいですねぇ…。
私、さっきの木の板の壁で四方が囲まれてるのかと思ってました。
でも、奥は壁がなくて、遠くまで見渡せるようになってるんですね。
ね、奥の景色、見てみましょうよっ。絶景ですよっ。
(男:足元注意してね)
え? あ、はい、足もと、濡れてますもんね。注意します。
滑らないように、ゆっくり進みま…ん、ぅわぁ!
(男、とっさに助けようとするが一緒に転んでしまう)
ぃたた…。あ…ありがとうございます。すみません、もう大丈夫です。
ごめんなさい、注意していただいたばかりだったのに…。
あなたも、服が濡れてしまいましたよね? すみません…。
(男:すぐ乾くよ)
…ありがとうございます。お優しいんですね。
でも、どうしましょうか…。
お互い、濡れたままだと風邪を引いてしまいそうですし…。
(男:着替えとか持ってる?)
…? いえ、着替えなんて持ってきてません。
(男:服を干しながらお湯に浸かって待つ?)
…? 干しながら、お湯に浸かって待つ…?
そ、それはちょっと…!
確かに、ここだと日が当たってますから、服を干していたらすぐに乾きそうですけど。
でも、さすがに男性のかたと一緒に入るのは…。いろいろご迷惑でしょうし…。
…。
うーん…。
…。
あ、タオルは備え付けがあるのですね。
…。
…んんっ…えぇっと…、もし入るとしたら、
タオルを着用していただけますか…?
(男:もちろん)
ありがとうございます。
それともう一つ…。その…、何もしないって、約束してくれます…?
(男:もちろん)
ふふっ、ありがとうございます。
それでは…ありがたく入らせていただきます。
実は、ここを一目見たときから、入ってみたいなって思ってたんです。
こんなにいい場所ですからね。まさに秘湯というか…。
(男:入るなら早くしたほうが)
…? あ、そうですね、話しているうちに風邪を引いてしまっては、
元も子もありません。
…えっと、ここって、脱衣所のような場所なんて、ない…ですよね…?
(男:ない)
ですよねぇ。
えっと…、では、お互い隅っこのほうで脱ぐしかないのでしょうか?
(男:そうするしかない)
はい、では私はあちらの方で。
…あの、こちらを見てはだめですからね?
(男:もちろん)
はい、よろしくお願いします。
あ、たぶん貴方のほうが早いと思うので、先に入っていてください。
ではっ。