Track 5

【幽世の癒し:耳かき(左)】

左の耳も桃源郷に変えましょう。 十分にほぐされておりますので、すでに下地は十分。 (耳かき:侵入) 慎重に、一歩。 ゆっくりと、一歩。 桃源郷へと侵入いたします。 注意深く……、 ややもすれば、じれったく…、 耳の穴の中をさすり進む。 耳の中の和毛の林を縫うように、さすり進む。 絵筆でスパッタリングしたように散らばる耳垢と…邂逅。 細かく散らばるそれらを、 耳かきの先をクレーンのように巧みに操り、すくいあげていきます。 耳かきを中から、外。 外から、耳の中。 耳の壁に当たらないよう、繊細な動きで往復。 器用で優雅。 耳かきの所作が美しい。 耳毛が擦れて、電流が走る。 耳垢が取れて、電流が走る。 すべてが…快感。 全部が…心地いい。 愛撫されているように…心地いい。 (3分) 蕩けてなくなってしまうような、かつてない体験。 (3分) 口から漏れるのは、喘ぐような感嘆の吐息。 (3分) まさに、桃源郷。 現世の楽園。 幽世の極楽。 どうぞ、存分に、 どうぞ、心置きなく、 どうぞ、心ゆくまで、 お楽しみ下さい。 (3分) そして…、 次第にそれは広がり始めます。 耳の中の桃源郷は、そこだけに収まらず、 耳から溢れ、 体を、 意識を、 飲み込んでいきます。 貴方の全てを飲みこみ、意識を白く霞ませる。 恍惚の白。 貴方の全てを飲みこみ、意識を白く霞ませる。 愉悦の白。 耳かきの終わりと共に、意識はホワイトアウト。 10数えると、意識はホワイトアウトします。 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。 快さにより得られた、満足感。 貴方様を占めるのは、満足感。 それは、しっかりと刻まれました。 お疲れ様です。 耳かきはこれにて終わりになります。