【幽世の癒し:耳かき(左)】
左の耳も桃源郷に変えましょう。
十分にほぐされておりますので、すでに下地は十分。
(耳かき:侵入)
慎重に、一歩。
ゆっくりと、一歩。
桃源郷へと侵入いたします。
注意深く……、
ややもすれば、じれったく…、
耳の穴の中をさすり進む。
耳の中の和毛の林を縫うように、さすり進む。
絵筆でスパッタリングしたように散らばる耳垢と…邂逅。
細かく散らばるそれらを、
耳かきの先をクレーンのように巧みに操り、すくいあげていきます。
耳かきを中から、外。
外から、耳の中。
耳の壁に当たらないよう、繊細な動きで往復。
器用で優雅。
耳かきの所作が美しい。
耳毛が擦れて、電流が走る。
耳垢が取れて、電流が走る。
すべてが…快感。
全部が…心地いい。
愛撫されているように…心地いい。
(3分)
蕩けてなくなってしまうような、かつてない体験。
(3分)
口から漏れるのは、喘ぐような感嘆の吐息。
(3分)
まさに、桃源郷。
現世の楽園。
幽世の極楽。
どうぞ、存分に、
どうぞ、心置きなく、
どうぞ、心ゆくまで、
お楽しみ下さい。
(3分)
そして…、
次第にそれは広がり始めます。
耳の中の桃源郷は、そこだけに収まらず、
耳から溢れ、
体を、
意識を、
飲み込んでいきます。
貴方の全てを飲みこみ、意識を白く霞ませる。
恍惚の白。
貴方の全てを飲みこみ、意識を白く霞ませる。
愉悦の白。
耳かきの終わりと共に、意識はホワイトアウト。
10数えると、意識はホワイトアウトします。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
快さにより得られた、満足感。
貴方様を占めるのは、満足感。
それは、しっかりと刻まれました。
お疲れ様です。
耳かきはこれにて終わりになります。