【海宮の癒し:時忘れの耳かき(右)】
心地よさに、さらに追い打ちを掛けましょう。
貴方様の右の耳…しばらく、私にお貸しくださいませ。
貴方様の国では耳を使ったお癒やしが盛んのようですが、
海宮でも同様のおもてなしがが不変不動の人気なのでございます。
私も…この珊瑚でしつらえた耳かきで、幾人もの客人様を蕩けさせ、時を忘れさせて参りました。
そんな風に言われると、期待してしまいますか?
ふふ、
構いません。
心の底から期待なさって下さい。
その方が、私も腕のふるい甲斐がございます。
必ずや貴方様に、時を忘れさせてご覧に入れましょう。
まずは…、
(擦るSE)
耳の穴へと至る、複雑に入り組んだ耳の小径(こみち)を進みます。
うねくる谷と山を道なりに進みます。
(撫で擦るSE)
(ゆっくり)
撫でながら…、
擦りながら…、
揉みながら…、
ほぐすように…、
さするように…、
進みます。
そうして…、
ようやく辿り着く、耳の穴の麓(ふもと)。
そのまま中に入る前に…、一旦停止。
確認作業。
中を確認致します…。
(覗きながら)
まぁ…。
これは…これは、
穴の中に…黄色い珊瑚が…沢山…見えますね。
ひとかきで…溢れるくらい取れそうでございます。
(SE)
これは、予想以上…。
予想以上に…ひとかきで…ザク、ザク。
宝の箱を開けたかのように…、ザック、ザク。
実に、素敵。
実に、素晴らしい。
これは、
私も、高まってしまいます。
耳かきを振るう手が…止まりません。
ザクザク。
ザクザク。
海宮に新しい…珊瑚の森ができる勢いでございます(笑)。
思わず、感心…。
これは、たまりません♪
これですから、耳のおもてなしはたまりません。
される方もたまらないと思いますが、
実は…おもてなしをする…私も…たまりませんのです///
耳かきが…鯛やひらめのように、軽やかに舞い踊ると、
幾片もの珊瑚が…ひらひら…積み上がっていきます…、
快感。
耳かきを振るう度に、胸の…鼓動が激しくなります。
あぁ…。
耳の中が綺麗になるまでに、どうにかなってしまいそう…。
(SE)
あぁ、
いよいよ…。
ついに…。
あれほどありました珊瑚が……、
尽きてしまいます…。
良いことなのですが…、残念です。
(身悶えしつつ)……っ。
ぁと……あと、ひとかき。
次のひとかきで…おしまいですね……。
この……ひとかき。
これが、
最後の…ひとかきで…ございます。
(SE)
(喜びと悲しみ)
あ………ふぅ…。
こちらの耳は……無事に…綺麗になりました。
なってしまいました…っ。
ですが…っ、
反対の耳がまだございますので…。
(嬉しそうに)
心地よさは…まだ。
まだまだ、続きます。
まだまだ、時を忘れていただきます…っ。