【イヤシマのふたご姫】
(海の音:BGM)
陸地から遠く離れた絶海。
海面から突き出るような大きな岩の上にその城はあります。
小さいながらも作りは立派で趣きのある白亜の城。
四方を海で囲まれる様子は、まさに絶海の孤城。
城を訪れるには、空を飛ぶか、海を泳ぐしかないといいます。
その城の名前は、イヤシマ。
名付け親は、城の主(あるじ)でもある双子の姉妹。
そう、貴方の目の前にいるふた粒の真珠です。
瓜二つ。
まるで合わせ鏡に映したかのような、双子の姉妹。
白い肌に黒真珠の如き艶(つや)やかな黒髪と白いワンピースの裾が爽やかな風に揺れています。
イヤシマの噂が人々の口の端(は)に上(のぼ)るようになってから、幾年月(いくとしつき)。
その頃から、今も、美しい。
美しいままの、双子の姉妹。
姉妹の細い体に似つかわしくない豊かな胸が、同時にゆるやかに盛り上がると、
可憐な唇が微かに開き、こう言葉を紡ぎます。
「「ようこそイヤシマへ」」
見事なハーモニー。
甘露のような声は、聞くものの耳を蕩かせ、頬を染め、心を躍らせます。
「「“空の月が満ちる時、イヤシマには必ず人が訪れ、空の月が欠ける時、帰路に立つ”
今日、貴方がここにいるのは、イヤシの神の御心。
イヤシマは、自分の意志では決して訪れることができません」」
姉妹は、貴方の目を優しく見つめ、言葉を続けます。
「「突然のことでなにがなにやらわからず、驚いていますね?
今の貴方と同じ顔を、何度も見てきました。
大丈夫。何も心配はいりません。
月が欠ける、その時まで、貴方をイヤシ続けます。
それが、
イヤシマで暮らす…、
ナーサティヤ。
ダスラ。
イヤシの神に仕える、私たちの務め」」
見つめながらの微笑み。
それは、まるで、天使か女神。
貴方の心と体は、抗うことなく一瞬で虜にされます。
「「改めて、ようこそ、イヤシマへ」」
鏡のようにきらめく碧い海と雲一つない青い空のみで構成された景色。
それに姉妹を重ねると、美しさが極限にまで高まります。
「「それが、「イヤシ」。
今、貴方の中に生まれた感覚が「イヤシ」」」
息が止まる。
それ程に美しい。
「「イヤシマは目の前の海と比べたら、ほんの小舟程度かもしれません。
それほどに、小さく。
それほどに、ちっぽけです。
ですが、
だからこそ、「イヤシ」が生まれる。
この星にはなかった「イヤシ」が生まれるのです。
姉妹は白魚のような手を貴方に差し出します。
「「さぁ、中へ。」」
左右それぞれの手で姉妹の手を掴み、貴方は足を一歩踏み出します。
イヤシの一歩を踏み出します。
「「奇蹟の邂逅を経て、貴方は「イヤシ」が素晴らしい事を知ります」」
人類は今、大きな一歩を踏み出すのです。
「「心の底から蕩ける「イヤシ」を貴方に」」
(扉SE)