【イヤシの一:イヤシの始まり】
イヤシマの小さな孤城の中、
定期的に訪れる者のためにしつらえられたスイートルーム。
その豪奢(ごうしゃ)な部屋へと案内されます。
「「扉を開けるだけで目の前に海が広がり、数歩進むだけで美しい海の中を冒険する事も可能です。
バルコニーからの眺望は…、もはや、説明は不要ですね(微笑)。
ともかく、
まずは、お座り下さい。
イヤシをもたらすためには、心と体、共に落ち着かせねばなりません。
(コップ)
(炭酸SE)
どうぞ、召し上がれ。
短くはないイヤシの日々の始まりはこの飲み物から始まります。
私たちもこれに目がなく、欠かした日はありません。
天然の炭酸水に果実の搾り汁をくわえたものですが、
爽やかで涼やかな飲み心地が、貴方の体の中から…イヤシをもたらします。
(乾杯:チン)
(一口:ごくり)
す~っと、口の中に溢れる、果実のかすかな甘味と酸味。
かすかに弾ける炭酸とはほどよいバランス。
飲み下すと、涼しい流れのまま、喉を降りていき、
口の中に残る、微かなすっきりとした後味と余韻。
それが消える前に、さらに一口。
(二口:ごくごく)
ふたたびの、涼やかな流れ。
口の中から、喉の奥へ、
爽やかな清涼感が広がっていきます。
一口が呼び水になって、
さらに… 。
(ごくごく)
止まらない。
一口が、さらなる一口を呼びます。
(ごく)
喉の渇きとは関係なしに。
(ごくごく)
止まらない。
(ごくごく)
さらなる一口が、終わらない。
(ごくごく)
繰り返し、繰り返す。
(ごくごくごくごくごくごくごくごくごく)
次第に、
貴方の全身にまで、清涼感が広がっていきます。
(ゆっくり)
お腹から、胸、腰、ふともも、膝、すね、足の裏。
お腹から、胸、肩、上腕、肘、前腕、手のひら。
お腹から、首、耳、鼻、目、額、髪の毛。
(囁き)
貴方の体、
すべての細胞が、ひと心地。
清々しさに、包まれていきます。
(ごくごく)
貴方の体、
細胞が一つ残らず、ひと心地。
爽やかさが、染み入っていきます。
(ごくごく)
爽やかで、清々しい気分。
それが、イヤシ。
(ごく)
爽やかで、清々しい気分。
これが、イヤシ。
(最後の一口:ごくりっ)
……。
これが、始まり。
爽やかな美味しさから始まる。
イヤシの下地を整えた…今。
これからが、真の始まりです。
真(しん)なるイヤシへ、さらなる一歩を踏み出しましょう」」