Track 5

【イヤシの三:双子の膝枕と耳かき(右)】

「「イヤシマを囲む海のイヤシを堪能した後は、再び、お部屋に戻ってのイヤシ。 それは、私たちが仕える神も絶賛のイヤシ。 海のイヤシとはまた別の素晴らしさがあります。 それがどんなものか…。 気になってますね。 わかります。 (ゆっくり探るように) 貴方のはやる気持ち、 貴方の猛る気持ち、 私たちの胸に…こう、ビン、ビン、と、伝わってきます。 わかりますが、 その気持ちは一旦、抑えて。 深呼吸。 イヤシを感じて、あくまでも自然体に。 はい。 いいです。 いいですね。 そうしたら、 ゆ(溜め)っくり、体を横にしてみて下さい」」 (SE) 「いえいえ。 横たわるのは、ベッドではありません。 (ポンポン) ここ。 私、ナーサティヤのふともも。 ふとももです。 (ポンポン) ここに、頭を乗せて下さい。 ふとももを、枕に見立てるさまを、膝枕、と言います。 膝枕こそ、一番イヤシに近いと言われる枕。 本来なら、私とダスラ、二人のふとももで膝枕をしたいのですが、 それだと、寝心地が快適とは言えません。 膝枕は、寝るのもするのも、一人が理想的。 ですので、 ダスラは一時、お休み。 先に、膝枕の大役を務めるのは私からになります。 さぁ、遠慮はいりません。 どうぞ、(ポンポン)お乗せ下さい。 膝枕の寝心地を味わって下さい。 (SE) (慈しむように) 貴方の頭を、受け止めました。 ふんわりとした私の太ももが、しっかりと、受け止めました。 (SE) 張り。 柔らかさ。 ぬくもり。 そして、馥郁(ふくいく)とした香り。 全てが、普通の枕ではありえない、気持ちよさ。 太ももに触れている貴方の頭を、優しく包みます。 (ゆっくり) まずは、どうぞ、そのまま。 膝枕の寝心地を、堪能して下さい。 その、張り。 その、柔らかさ。 その、ぬくもり。 そして、かぐわしい香り。 全てが、普通の枕ではありえない、心地よさ。 太ももに触れている貴方の頭を、穏やかに包みます。 どうぞ、そのまま。 膝枕の寝心地を、味わって下さい。 張り。 押したら返す、弾力。 柔らかさ。 泡に触るように融(と)けてしまいそうな、柔肌。 ぬくもり。 南の国の暖かい夜を思わせる、ぬくもり。 香り。 花弁のようにこぼれ落ちる鮮やかな、香り。 そうして、 寝心地にひと心地ついたら、 そ…っと、頭を撫で始めます。 優しい、愛撫。 ふとももは、じんわりと、貴方を包み込む。 母のような力強さは、勇気を与えてくれる。 それは、この先、どんな困難に出会っても、乗り越えていける。 そんな風に思わせる、安心感。 ぬくもりが、貴方の力になる。 穏やかな、愛撫。 ふとももは、しっとりと、貴方を包み込む。 母のような暖かさは、慰めを与えてくれる。 それは、この先、どうしたらいいか、どう生きていったらいいか。 そんな人生の指針をも指し示す、安堵感。 ぬくもりが、貴方の支えになる。 太ももは、単なる肉体の一部ではありません。 精神的で、宇宙的。 寝ている貴方を蕩(とろ)けさす、イヤシの宿る場所。 だからこそ、 膝枕で見る夢は、格別…。 格別なのですが、まだ、尚早。 さらなるイヤシを重ねた後のお楽しみ。 この、み、み(耳)。 貴方の、この耳を使って、イヤシを重ねていきます。 実は、この耳こそ、イヤシのためにある。そう言っても過言ではありません。 人体に隠されたイヤシの扉。 それを開け放っていきます。 耳の裏。 小指で、そっと、触れる。 いえ、触れるか、触れないか。 そのくらいの力加減で…撫で始めます。 外側から、内側に。 円を描くように、撫でます。 耳の付け根。 下から上に向かって、優しく、擦る。 擦ります。 耳の裏から、耳の表に移動。 耳の縁(ふち)。 ここを、上から、下へと、擦ります。 もちろん、触れるか、触れないか、微妙な距離で、擦る。 擦ります。 続いて、うねくる耳の溝を、強弱をつけて、擦る。 擦ります。 さらに、耳たぶ。 ここは、指で…挟むようにして、優しく引っ張る。 そして、揉むようにしてほぐします。 最後に、耳の穴。 この耳の穴は、穴の縁を擦るように…、 一周。 また一周。 また、一周。 もう、一周。 さらに、一周。 十分、擦り終わったら、 指先を…穴の中に、挿入。 ただ、挿れるのではなく、小刻みにする。 小刻みに、出し挿れ。 こうすることで、 イヤシが、近づいてきます。 一歩。 そして、また一歩。 さらに一歩、近づいたところで、 一気に、抜き去る。 ふ~~~~っ。 すかさず、不意をつくかのように、耳への息。 これで、貴方の耳に近づいていたイヤシを、がっちり、捕まえる。 耳から感じる…確かなイヤシ。 このイヤシをさらに、高める。 高めて、積み重ねる。 そのために、さじにも似た、この小さな棒きれを使います。 耳かき。 耳の中を掃除するための道具です。 これこそが…イヤシの、 いえ、言葉で説明するのはやめておきましょう。 実際に味わってもらえば、すぐにわかります。 右耳が真上になるよう、体を横向きに。 (SE) 私の目の前に貴方の耳の穴。 露わになった耳の穴。 こんなにも、丸見え。 丸見えです。 丸見えなので、耳かきを入れやすい。 このまま。 じっと、動かず。 そのままの態勢で。 そうすれば、問題なく、耳かきを迎えることが出来ます。 (挿入) 静かに、あくまでも、静かに、耳かきが、耳の穴の中に、入っていきます。 耳の中のうぶ毛をかき分けながら、中に入っていきます。 元々、この耳かきは耳の中を掃除する事にも使うもの。 ですが、それ以上に、イヤシを呼ぶ魔法の杖。 いえ、杖ではありませんね。 これは、イヤシを招く、魔法のさじ。 ゆっくり、 耳の中を探るように、さじの先を潜らせる。 貴方の全身の神経が、耳の穴に集中。 さじの先は、 穴の浅いところを、覗くように、軽く、潜って…、 一旦、穴の外へと…引き返す。 こうする事で、  貴方の全身の神経が、さらに、耳の穴に集中。 改めて、耳の中へ、 貴方の、体の内側に、入る。 貴方の、無防備な身体の内側に、入る。 耳垢だらけの、耳の中へ、入る。 大小様々の耳垢が潜む、耳の中へ、入る。 瞬間、 ぞくぞくっと、体が震える。 イヤシが、耳にやってくる。 耳の中の浮いた耳垢を、かき出す。 瞬間、 ぞわぞわっと、体が震える。 イヤシが、耳から走り抜ける。 耳の中の浮いた耳垢を、かき出す。 ゾクゾク、体が震える。 イヤシが、耳から駆け巡る。 耳の中のこびり付いた耳垢を、剥がし取る。 ゾワゾワ、体が震える。 イヤシが、全身へ走り抜ける。 耳の中のこびり付いた耳垢を、遅滞なく、剥がし取る。 ゾクゾク、体が震える。 イヤシが、全身へ駆け巡る。 耳の中で、耳かきが踊る度に、イヤシが高まる。 耳の中で、音がする度に、イヤシが高まる。 まだまだ、これから。 まだまだ、始まったばかり。 (SE) そして、 耳かきはさらに、奥へ。 耳の中の奥へと、入り込む。 耳の中の壁に、さじの先を、敢えて、あてる。 瞬間、 ぶるっと、体が震える。 イヤシが、耳から走り抜ける。 耳の中の壁に、さじの先が、敢えて、触れる。 瞬間、 ぶるっと、体が震える。 イヤシが、耳から駆け巡る。 耳の奥に張り付いた耳垢を、剥がしていく。 (ぺりぺり)    かさぶたを剥がす時のような、音。 耳の中で壁紙と化した、大きく、薄い耳垢を剥がしていく。 (ぺりぺり) イヤシが高まる。 イヤシが膨れあがる。 剥離させた耳垢を、 ピザ生地のように薄くて大きい耳垢を、 耳かきのさじから、落とさないよう、 慎重に、 ゆっくり引き上げ、 外へと、出…す。 耳垢を抱えた耳かきが、外へと出た瞬間、 外気が耳の穴に入り込む。 (囁き) ひんやり。 耳の通りがよくなり、 音がより、聞こえる。 私たちの声も、より、聞こえる。 その、爽快感。 爽快感で、イヤシが頂点」 イヤシが高まりきって、頭の中が真っ白になる。 イヤシは空のように、無限に広がっていきます」 【イヤシの四:双子の膝枕と耳かき(左)】 「続いては、反対の耳。 当然ですね。 両方の耳にイヤシを招きます。 その前に、 ナーサティヤの太ももから」 「私、ダスラの膝枕に交代。 (SE) 寝心地に一切、変化はありません。 私たちは、名前以外、なにからなにまで、瓜二つなのです。 相変わらずの、気持ちよさ。 変わらぬ、心地よさ。 心の底から安心出来ます。 張りのある、弾力。 融けるような、柔肌。 暖かい、ぬくもり。 鮮やかな、香り。 変わらない。 ナーサティヤも私も同じ。 同じ楽園。 膝枕という楽園。 楽園はイヤシを呼ぶ。 この耳が、イヤシを…呼びます。 耳の穴の上の三角窩(さんかくか)を、 耳かきのさじで、なぞる。 ほどよい強さで、なぞる。 同じ場所を、なぞる。 弱い刺激、 弱い刺激だからこそ、全身の意識が集中。 集中していきます。 その集中が高まった頃合いを見計らって、 耳のツボを、刺激する。 ツボ…それは、人の体にある、経穴。 ここを刺激すると、血液の循環がよくなり、頭の回転が促進され、血液が体のすみずみまで行き届くようになる。 ストレスは解消され、内臓を丈夫にする。 さじでなぞりながら、力加減を調節し、耳のツボを刺激していきます。 その度に、 体がひくひく震える。 その度に、 体がぷるぷる震える。 すると、 耳かきのさじは、大きく進路を反れ、 耳の大外、耳輪の窪みをなぞっていきます。 堀の深い窪みを、ゆっくり、時には速く、時には、往復するかのように、なぞる。 なぞっていきます。 耳元の振動が、さらに、感覚を敏感にする。 耳に走る曲がりくねった小径を、なぞる。 なぞっていきます。 耳元の振動が、さらにさらに、感覚を敏感にする。 耳に走る曲がりくねった小径を、なぞる。 なぞっていきます。 そうして、ようやく、 耳の穴に、舵を取ります。 円を描くように、耳の穴の入り口を、なぞる。 地球を回る月のように、周る。 何度も、周る。 何度も、なぞる。 何度も、耳の穴の中に入りかけて、くるっと弾かれる。 何度も、周る。 何度も、なぞる。 耳の穴の浅いところで生えている耳の毛にわざと触れて、反転する。 入りそうで、入らない。 この、もどかしさ。 体中が、ぞわぞわする。 入り口を旋回するように、くるっとなぞる。 地球を回る月のように、周る。 幾度も、周る。 幾度も、なぞる。 幾度も、耳の穴の中に入りかけて、くるっと、弾かれる。 幾度も、周る。 幾度も、なぞる。 耳の穴の浅いところで生えている耳の毛にわざと触れて、反転する。 入りそうで、入らない。 この、切なさ。 体中が、ぞくぞくする。 それでも、動かないで下さい。 もどかしくても、このまま。 切なくても、じっとこのまま。 言い聞かせるように、 耳をぐいと引っ張り、耳の穴を広げる。 そして、今度こそ、 耳の中へ、舵を切る。 (挿入) 静かに、耳かきが入っていきます。 一面のすすき野原をかき分けるように、耳の中を進みます。 耳の毛を右に左に倒しながら、進んでいく。 その度に、 ぞくぞくっと、体が震える。 イヤシが、耳にやってくる。 (SE) 耳の穴の毛を擦る。 イヤシに震える。 イヤシが、耳を駆け巡る。 耳の穴の毛を撫でる。 イヤシに揺れる。 イヤシが、耳から走り抜ける。 耳の穴の毛をさする。 イヤシにおののく。 イヤシが、全身へ駆け巡る。 耳の中で、耳かきが舞う度に、イヤシが高まる。 耳の中から、耳垢がかき出される度に、イヤシがこみ上げる。 耳の中で、音がする度に、イヤシが高まる。 耳の中から、耳垢がかき出される度に、イヤシがこみ上げる。 耳かきが、耳の奥へと入り込む度に、イヤシが高まる。 耳かきが、耳の奥の耳垢を剥がす度に、イヤシが高まる。 粉状の耳垢。 平べったい耳垢。 薄黄色の耳垢。 頑固に張り付く耳垢。 あらゆる耳垢を、かき出し、 あわゆる耳垢を、剥がしていきます。 取りこぼしなんてありません。 完全に、綺麗。 完璧な耳の穴。 (囁き) 耳の通りがよくなり、 音がより、聞こえる。 私たちの声も、より、聞こえる。 その、爽快感。 この、爽快感で、イヤシが極まる。 極まって、頭の中が真っ白になる。 イヤシは宇宙のように、無限に広がっていきます」