Track 2

2.淫行(手淫、拘束耳舐め)

家に帰るとほのかな甘い匂いが鼻をついた。もっと嗅いでいたくなるような、不思議な匂い 見知らぬ誰かが家に入ったのかもしれない。ロウソクに火をつけると、そこに、いた 「あら、おかえりなさい」 先程の女だった。警戒心が鎌首をもたげる 女はゆっくりとした動きで近づいてきた。自分の肩ぐらいの身長の女は上目遣いで、媚びるように見上げてくる 「昼間は本当にありがとうございました。今夜はたっぷりと、お礼を差し上げようと思いまして」 そう言うと女は、はらりと服を脱いで落とした 肌着一つ付けていない女は精緻(せいち)な彫刻のように美しい 「うふふ」 女が意味ありげに笑った瞬間、長い舌が鎖骨の辺りに押し付けられた。唾液をふんだんに纏った舌は柔らかく生温かい そのままつーっと首をゆっくり、ゆっくりと這い、舐め上げてくる まるで軟体生物が這ったような跡を付けながら、舌がゆっくりと顎まで這い上がり唇に軽く接吻して離れた 「ちゅっ」 女の目が情欲に火照っている。舌が這った箇所がたまらなく、熱い 「私のお礼、受け取ってくれますよね?」 熱く濡れた唇がゆっくりと近づいてくる。いつの間にか巻き付いた腕が首を抱き込むようにしていて、逃げ道はない 豊満な胸が押し付けられて自分の胸板で潰れている。柔らかく弾力がある感触がたまらなく心地良い 「んっちゅっ」 柔らかく細長い舌が、ねっとりとした動きで口の中に侵入してくる 女の舌というのはこんなにも柔らかく、こんなにも甘い味がするのだろうか 口の中に女の舌が一方的に侵入し、舌同士が絡み合う。容赦なく蹂躙してくる舌に為す術もなく、ただ受け身でじっと耐えた 「私、隣町の行商の娘なんです。昼間こちらの村へ仕入れに来ようとしていたんですよ でも滑って転んだ拍子に動物用の罠にかかってしまったみたいで……。そこをあなたが通りかかってくれたんです」 女の目を見ていると、警戒心が解けていく こんなにも可憐で美しい女を鬼か魔物かと疑ったことを恥じた 「あのまま、あなたが通ってくれなければ、私は死んでしまっていたかもしれません あなたは命の恩人ですわ。さあ、こちらへ」 促されてベッドに座った。握られた手の平が温かく柔らかい 「今夜は一晩中、私の体を使って下さいませ」 潤んだ目がじっとこちらを見つめる。火も焚いていない部屋の温度が上がった気がした 「まず手でご奉仕します。これ、行商で取り扱ってる品の潤滑剤です。 私の懐で暖めておきましたから生ぬるい温度になっていますよ。これをあなたのペニスに……あら? ねぇ、あなたのペニス、もう完全に勃起しています。どうしてこんな風になってるのかしら? うふふ、準備が早いんですね。素晴らしいわ」 女が生暖かい潤滑剤をペニスへと垂らす。細長い指がまるで宝物を扱うかのようにペニスを触った 亀頭を手の平で擦ったり、裏筋を指でくすぐるように撫で上げたり、筒を作って上下に動かしたりする 「気持ちいいですか? あまりこういう事に知識がないものですから」 そう言いながらも女は撫で方、触る部位、指や手の平を使い分けて、ペニスを絶妙な強さで刺激する すっと細まった目は、まるでどこを撫でれば気持ちいいのか、どんな撫で方をすれば反応するのかを観察しているかのようだ 「んーちゅっ」 柔舌が首に押し付けられた。またしても何かを観察するように、上目遣いでじっとこちらを見上げながら舌を這わせる 唾液を塗りつけるように首筋を舐め上げ、そのまま耳元へと粘液を纏った舌が這い上がった 耳元へ吹きかけられた吐息は熱く、かすかに香る吐息はとんでもなく甘い香りがした 女の吐息とは本当にこのような甘い香りがするものなのだろうか 「うふふふ」 女の舌が当たり前のように耳穴に挿入された。細く柔らかい舌がうねりを帯びて耳穴の奥へ、奥へと侵入していく 脳に届く程奥まで侵入した舌は引き抜かれ、今度はのたうち回りながら再度耳奥へと挿入されていく 熱い、耳穴が熱い。まるで灼熱の塊を入れられているようだ ようやく女が舌を抜くと同時に、耳たぶから唾液が一滴、滴り落ちた。酒を飲んだ後のように視界が少しぼやけている 舌が反対の耳へと挿入される。少しでも反応すると女はそれを決して見逃さず、反応した場所を重点的に舐め回してくる 耳穴を舐めながらも女は手の動きを決して止めない 先走りと潤滑剤が混じった液体を手に纏わりつかせながら、最も感じる部分を撫でられ、擦られ、扱かれる 既に女は最も感じる部分を正確に把握しているようだった。弱点だけを執拗に、ねちっこく、何度も何度も責め立てる 「だいぶ蕩けてしまったようですね」 女は優しく、目を覗き込んでくる 反対に手だけは、まるで別の生き物のようにねっとりと、時には激しくペニスを愛撫し続けている 見つめ合っている間、ぐちょぐちょとペニスを愛撫する音だけがいやらしく響いた 「あなたのペニス、猛々しく反り返っていて素敵です。この熱く滾ったものを私の中で扱けるのが愉しみですわ 舌が再度口の中に侵入してくる。細く長い舌が口の中の隅々を舐め回し、甘い味が口いっぱいに広がる 甘く温かい砂糖菓子を溶かしたような粘液を、口の隅々にまで舌で塗りつけられる 舌同士が絡み合い、むせ返るような甘さのそれは吐き出すことを許されず、舌でかき混ぜられて嚥下させられてしまう 「私の唾液甘いでしょう? 家ではお菓子ばかり食べてるからですかね。うふふ」 冗談を言う女の目は笑ってない。その目はゴクリと女の唾液を飲み込む、自分の喉を見ている―― 腹の中が熱い。溶けた鉄を飲んだような熱さを感じる 「あなたの弱い所もだいぶ把握できましたから、今度は両手で扱き上げますね」 潤滑剤を付け足した女は両手でペニスを軽く握って離す 手とペニスの間に先走りと潤滑剤が混じり合った液体が、何本もの糸を引いて切れた 「いきますよ」 扱き方が一変した 今までの優しさが混じった扱き方とは全く違う。繊細な指使いは、相手を責め立てる為の暴力的な指使いに取って代わった 両手で扱くことでペニスに当たる面積は二倍近くになり、快感も増大する。竿を扱きながら亀頭を手の平で円を描いて撫で回したり、筒を作って高速で上下したりする 凄まじい暴力的な快感が脳へと叩き込まれ、思わず暴れまわる自分の体に細長いゴムのような物が巻き付いた 両腕を巻き込んだそれは頭にも巻き付き、まったく身動きが取れなくなる。その状態のまま女の方へ耳を向けてグイグイと引き込まれていく 細い割に筋肉の塊のようなそれはどれだけ抵抗してもビクともしない そして女の口元へゆっくり、ゆっくりと引き込まれていく 何かおかしい。女の両腕はペニスを愛撫しているはずだ 両腕を拘束し、抵抗できない状態にして引き込むなんてことができるはずがない 「暴れちゃだめですよ」 そしてまた、耳穴に舌先が挿入された 唾液をふんだんに纏った舌先が、かき混ぜるように耳穴を舐め回す 女の舌が耳穴をねぶり、こそぎ、かき回し、擦り付ける 何かおかしいと湧き上がってくる違和感は、舌先によって片っ端から溶かされていく 女の手がペニスを撫で回し、ヌルヌルの指が亀頭を擦り、裏筋をまるでペットの首を撫でるようにくりくりと指先でなで上げる 絶え間なく与え続けられる快感に、気持ちいい所だけを刺激される快感に、何も考えることが出来ない 「あら? うふふふふ」 あまりの刺激に鈴口から白濁液がどくどくと噴出するのを女の笑いによって気付かされた 甘い快感が背筋を走り陶酔感が体を支配する しかし女はそれすらも掬い取ってペニスに塗りつけ、扱くのをやめない 「堪え性のないペニスですね。お仕置きです」 最も敏感な状態のペニスを容赦なく扱かれる 女は竿を扱きながら片方の手の指の腹で鈴口を円を描くように刺激する 少し間違えれば激痛が走る行為に冷や汗が止まらない 「射精したばかりのペニスを扱かれて気持ちいいですか? あなたの弱い所はもう完全に把握できました。まだまだお礼を差し上げたいのでたんと受け取ってくださいね」 女は嗜虐的な笑みを浮かべると膝上へと座った ペニスを扱きつつも耳元に口を寄せて耳を舐め回し始める 最も敏感な状態のペニスを扱かれ、同時に耳穴を舌で穿られる快感 暴力的ともいえる快感が容赦なく叩き込まれ、体が勝手にジタバタと動こうとする しかし薄闇の中相変わらず巻き付いた何かと、膝上に乗っている女の体重で全く身動きが取れない 体はピクリとも動かず、快感の逃げ道は一切絶たれて女の愛撫をただ受け入れるしかない 呼吸だけが浅く激しくなっていく中、肩にかかった女の髪は柔らかくいい匂いがした 「あなたのペニスとっても素敵です 精液でてるのにまだまだこんなに固いなんて」 指摘されて違和感に気づいた。射精した後の萎えるような気持ちがまったく湧いてこないのだ それどころか女の手がペニスを弄り回す度に、硬さや大きさがさらに増していくような感覚さえ覚える 尋常な事態ではないのに女の愛撫が、匂いが、感触がそれを強制的に忘れさせる しなやかな手がペニスを這い回る度にさらに呼吸は荒くなり、耳穴に舌が這い回る度に視界がぼやけていく 「うふふ。あなたのペニスパンパンですよ。逞しくてどんどん素敵になっています また射精しそうなんですね。いいですよ。 出して下さい。我慢なんかしないで 出るんですね? いいですよイッて下さい さあイッて? イッて下さい。私の手の中に、出して、出してッ。出しなさいッ」 視界がチカチカと点滅する最中二度目の射精をした。脈動の度に精液がドクドクと放出される 女の手は今度は優しく、射精したペニスをねぎらうように撫でる 「偉いですね。こんなに出してくれるなんて」 女は手についた大量の精液を舐め、しゃぶり、吸い取る。 舐め取っていく内に表情はどんどんと紅潮し、まるで極上の甘露を舐め取るような艶(あで)やかさだ 本来なら下品なはずのその行為が、何故かこの上もなく上品に見えた 女が精液を舐め終わった頃、体を拘束する圧迫感がフッと消えた 細長いゴムのような物が女の臀部に吸い込まれるようにして消えた――ように見えた 「さて次にいきましょうか」