トラック②『...私の気持ち』
ふぅ、んん…
なかなか、汚れ、取れない…ん、くぅ…
あ…お疲れ様、です…
…んぅ…はふ…んん…?
…ええと、わ、若旦那様
…何か、ご用でしょうか?
見ての通り、掃除をしていた、だけで…
もし…ここにいると、邪魔なら、先に他の場所をして、きます。
…えっ?
それ…あの、手話、ですよね?
できる…のですか?
べ、べ、ん、きょう…始めた…私と、話す…
手話を、勉強してくれたんですか?
私の為に。若旦那様が…
こ、こ、に…お願い。
…ええと…は、はい、解りました。ここに、います。
掃除の続き、しています、から…大丈夫です。
…若旦那様?
そんなに急いで、どうしたのですか?
私…言いつけ破ったり、してません…
ずっとここにいましたから。急ぐ必要、無かったです。
この靴、どうしたのですか?
わ、私に…?
…履物は、気づいたら、無くなっていたので…
勝手に、旅館の物を使っては行けないと、ここの中居さん達に言われました。
…足は、後でちゃんと洗ってから中に入りますから、大丈夫です。
でも…その事を気にしてくださるなんて
手話のことも、靴も…あの、あ…
ありがとう、ございます。
あ、あの…若旦那、様
今、失礼しても、よろしいでしょうか…?
お仕事、お疲れ様です
若旦那様のお部屋、毎日遅くまで、明かりが付いていますね。
…これ…お礼です。
昼間、靴をもらい…えっと、いただき、ました。
そのお礼をしなければと、思いまして…
きちんとした形で、お礼できればいいの、ですが…
私…若旦那様に、差し上げられるような、上等なもの…何も、持っていないので
お夜食、作ってきました。
食材なら…少しですが、自由に使えるものが有りますので、それを…
この旅館に来るまでに、料理はずっとやってましたから…
でも、若旦那様のお口に合うか分かりません。
こんなものしかできませんが…お腹の空く時間かと、思って。
ご迷惑でしたら、片付けます…
えっ…?
食べて、くれる…の?
ふ、ふふ…若旦那様ったら、すごい…ふふふ…
いえっ…ああ、すみません。
馬鹿にしたりとか、そういう意味で、笑ったわけでは…ないのです
お気に障ったら、すみません。
黙っています…
…ん、全部食べてくれた
…ありがとうございます。
お粗末様、でした
それでは、私はこれで
お仕事中に失礼しました…
あの…若旦那様。袖、掴んで…
えっと、他にも何か…私にお申し付けが?
文字…
あ、は、はい、筆談ですね。
大丈夫です、読めます
難しいのは、解らないかも、ですけど…
基本、的な読み書きなら…できます。
…お。いしか、った?
また作って…
ほ、本当ですか?
私の作ったもの、そんな風に、言ってもらえるなんて…
初めてです…
嬉しい、ですっ、ふふふ…
はい?今度は何ですか…
綺麗な…声?
私が…ですか?
…何と言っていいのか…あの、その…ありがとうございます。
…んん、人前で…あまり、喋らないのは…
自分でどう、喋っているのか、ちゃんと解らないので…
すぐに、言葉が、詰まってしまい…ます
やっぱり、変ですよね。
…聞き苦しいのでは無いかと…思います
今まで、色々、そうだと言われて、きました。
自分でも、理解…納得?をしています。
だから…必要なこと、だけで…それ以外は、黙っていた方が、いい…はずです
そうしないと、また不快に…思われたり、怒らせたりして…
困ったことに、なって、しまうから。
それは…良くないです。
…もっと聞きたいと言われても…
何を喋れば…いいのか、わからないです。
あまり…お話できるような、ことも、無くって。
お仕事のこと、とか…でしょうか?
うーん、ええと…後はお天気について、くらいしか
…私の気持ち
そんなことでいいんですか?
きっと、つまらないですよ…?
お仕事の話の方が、まだ良いのではないかと。
…若旦那様が、それを聞きたいと…言って…仰って、くれるのなら
…若旦那様の前で、だけなら…
少しずつ、お話…して、みても、いい…
いえ、してみます。
どうか、お許し、ください。
…焦らずとも、よい、ですか。
はい、あ、ありがとうございます
では、まず…
わ、若旦那様と、お話ができて…とても、いい夜でした。
夜食も食べてもらえて、本当に、嬉しく思いました
いただいた靴、大切に、使います。
こんなところ、でしょうか
…お返事?
あり、が、とう。
また、夜食、作って…もらいたい。
若旦那様が、そう言ってくださるなら、また明日も…作って、きます。
あの、お仕事の邪魔、して、寝不足にさせては、いけないので…
今度こそ私…行きますね。
おやすみなさいませ
お仕事…頑張って、ください