Track 3

3.神様なんて信じない。

すぴー......すぴー............あぇ?ぁ......ごめぇん、また寝てた。わあ~、もう空が青黒いじゃんさ。真っ暗じゃんさ。んぁー、起こしてくれればよかったのに。見せるねぇ、余裕見せるねぇ。......あ、そうなん。ありがとね。でも、そんな寝顔してた......?......はぁ?......そんな事をさ、言ってさ、私に何を期待してんのさ~。まあ、その、ありがと。寝顔とか褒められても、別に嬉しくないけどー。って、なんであんたが照れてんの。間抜けだなぁ。マイペースだなぁ本当。......んん~~~......!ふぅぁ。眠気が醒めたから、そこは感謝って感じかな。......お?なにそれ、その手に持ってるやつ。......木の実ぃ?ああ、なんか、木にたまに生えてるやつ。ほー、それが......ゴハン?だっけ。ていうわけ?どう?......あらら。それも違ったか。うーん、雲行き怪しくなってきたなぁ。でもさ、変わらないんだよね?......はあ、そっか。そっか。ふうーん。......ん。あんたはさ、私の事ばっかり心配してさぁ。変わってんなぁ、もう。ん~~~。ねえ。好き。お?おおう、びっくりした。あはは~、何だその顔。ごめんよ、ごめんよ~。や~、ひょっとしたらって思ってさ。どうよ。............あっそう。違ったか。いやさ、言ってもらってばかりじゃ悪いし。何も感じないか。そっか。で、水もゴハンも要らなくて。でもココロは減らない。いつまでも生きていられる。ふんふん。じゃー、やっぱりー、そうなのかなー。あんね。さっきさ、目的があるのかって聞いたじゃん。私は、神様を探してるんだ。いるのかどうかも分からなくてさぁ。でも、たぶん、この世界をさ、知らん顔して、どこかからずーっと見てる、偉いひとがいるんじゃないかなって思ったわけ。それってたぶん、私達みたいな欠陥品じゃないんだよねぇ。ココロとかなくならない、歩き続けたって平気......。きっと私の事も見てて、生かさず殺さず、なんにも教えてくれないの。......ちょうど、今......目の前にいるよね。そういうひと。目的の二つ目を言ってなかったね。それはね、神様を......終わらせる事。ねえ終わってくれる?たぶんあんた、神様なんじゃないかなぁと思うんだ。......おっとっと、そんなに慌てなくてもいいじゃないか。分かってるよ。記憶がないんでしょ。どうしてここにいるかも、名前すら分からないんでしょ。そりゃあ、神様って自覚なくたっておかしくないよ。おかしくないから、それはそれでいいから、はい、おしまい。ひとまず私は、私の目的を達成するために、あんたを終わらせまーす。んふ~。怯えてるね。落ち着こ?まず落ち着いて、ほら、深呼吸。ん~?あっはは。否定しまくりだね。そりゃあね、びっくりするさぁ。そうそう実はねぇ、あんたに嘘ついちゃったの。嘘と言うか、意地悪かな。 この世界はぁ、「好き」って言葉にしちゃうとねぇ、終わりが早くなるんだ。正確に言うと、意識した事を吐き出すと、その分ココロが減るんだよ。言霊って知ってる?言葉の力。言葉の生命力。思っていてもいなくても、「好き」だなんて言ったら、ほら、意識しちゃうでしょ。そういうね、言霊を糧にして、消費して、奪い合って生きるのがこの世界。ここは――言霊の世界。それを知る為にね、終わらない為にね、私の「旅路」は、いろーんなひと達を終わらせてきた......軌跡なんだ。ずっとあんたの事もォー、試してたんですー。がっかりした?ねえ。きひゃひゃひゃひゃッ。ごめんごめん、あんたは優しいから。疑いひとつ持たずに、私に好き好き言ってくれたね。ありがとね。感謝してる。でもそのやさしさが、あんたの正体を暴くキッカケになっちゃったねぇ。......そろそろ終わらせるね。今までどうも。楽しかったよ。バイバイ。......おいおい、命乞いしないの?本気じゃあないって、たかくくってる?あーあー、舐められてるな私ぃ。あんたは神様だから、ココロは終わらないかもしれないけどさぁ。刺せば終わるでしょ。脳天かち割れば終わるでしょ。ひとの形してんだから。試す事で生きてきた私だから、またその時が来ただけさ~。......ふふ~。それ言うと思ったぁ。神様を終わらせたところで、何が変わるか、そりゃ私にも分からんよ。だから、ほら、試すんだ。試しに終わってみておくれよ。そもそもねぇ、あんたがくれる「好き」は、ちょっと異常なんだよぉ。ココロ満たしすぎ。言霊つよすぎ。そのくせあんた終わらないじゃん。それっておかしいじゃん。言霊は、使えば使うほど終わりが早くなるんだよ。つまりそういう事だよね。ひとならざる力だね。神様だ。......、はあ、命乞いはしないのに、神様である事は否定するの、おかしいなぁ。変だなぁ。だって私以上にさ、納得できる理屈は用意できるのかな。かなぁ。おー?......ふん、ふん。はあー、ほうほう。そりゃあね、私は私の知りうる事しか知らないから。私、目に見えたものしか信じないからさ。それ以外は全部、架空だよ。いやー、でもそうしたら矛盾してるかな。神様も見た事ないもん。そうだね、それが唯一、私が......半信半疑を追っかけてるものかなぁ。............、......ほーう。あんたの命乞いは、「好き」ってわけ?今まさにさ、終わらされそうになってるってのに、それでもあんた、私のココロ満たそうとしてくるんだ。そうなんだ。ごめんねぇ、えびちゃん無慈悲だから~。無慈悲......だからねぇ。あはは~、どうしたんだろ。どうして私、一歩も動かないのかなぁ。おかしいねぇ。おかしいおかしい。早く終わらせなよ、迎ェ火。望んでた事でしょう?目の前にあるんだよ。目的が突っ立ってるよ。早く、終わらせないと。ね。そうだね。......、......もしかしてそれ、作戦なわけぇ......?そんなさー、なんかさー、好き好き好き好きって言われてさー、好きってさー、好きって......好き......うぅ、うぅう。あぁあ~~、ずる~いなぁ~~~。ずるずるだなぁ~。ずるオだなぁ~。言霊なくならないのを良い事にさぁ、好き放題言ってさぁ~......。言霊もらう回数、好きをもらう回数......記録更新だよぅ。こっちの気も知らないで......私が......どんな思いで今まで......。......、あはははは......。そうか、そうだね、そうだった。好きって言えって、言い出しっぺは私だったかな。自業自得かな、私。ちくしょ~~~......。くそ~~~~......。はぁあ~~~~......。......なにさ。神様探し、手伝ってくれるの?あんまり調子乗んないでよ?私は、あんたがそうだと思ってんだから。でも、うん。あんたが、言霊を吐き出す事が、ココロを満たすってんなら、言霊もらってココロを満たす私とは、助け合う関係なのかもねぇ。あんたに、好きって言われ続けるだけで、お互いずっと終わらないもんねぇ。まあ、そうだねぇ、それなら、神様見つかるまで付き合ってもらうよ。 はい、じゃあ......仲直りしようか。知ってる?仲直りの仕方。手と手をね、こうして、......ほら。......なーんか、ぽわぽわしてんね、あんたの手。はーあ、こうしてると、ひとにしか思えないんだけど......。それに、どうしてだろうね......。ココロ、満たされる気がする......。少しの間、こうしてても......いいかな?