Track 2

2.こんこんこんばんは・後

.....あは、うふふ、クククッ......。入れてくれてありがとう。今度は私に入れさせてあげるよ。クスッ......。なんて、ね......。そんなに怯えるな。私、本当に恩返しをしに来ただけだぞ。 貴様は命の恩人......。生涯かけても返しきれないがね。ほんとだぞ?ほんとほんと。信じて?しかし、中に入れろと無理を申したのはこちらだが、ひととして不用心すぎるんじゃあないかね、青年。精々私以外のモノの口に耳を貸すんじゃあないよ。どうなっても知らないぞ。......と言ってもな、もう貴様は私のモノだ。誰の手にも触れさせやしないさ。いいか、よく聞け。貴様、この耳に意識を集中してるな。そのままでいろ。こちらもいつでも狙ってるぞ。貴様をどうこうするは私の裁量であり気まぐれよ。うふふふッ......。古来より恩返しの一口噺は多い。いわゆる報恩譚ほうおんたんという奴だ。しかし言伝ことづてや手記による他人の物語などは、単なる絵空事に過ぎぬ。今宵は、さながら信憑性そのもの、夢うつつ白昼夢のひとときを、それを......。貴様にくれてやる。私を全部くれてやる。