3.いたずら夜もすがら
ほう、ふうん、良い家だ。狭くも広くもない。落ち着く。......が、貴様は落ち着いていないようだな。そう警戒するな。私は私でしかない。今は貴様へ恩返しする、ただの狐だよ。始めはどうしたものか路頭に迷ったものだがね、これが一番良いと思った。さて、まずはそこな居敷いしきに掛けてもらおうか。楽にしたまえ。喜撰きせんと塩大福を傍かたわらに拝む、新雪しんせつの夕刻のようにな。フフフ。どうした青年。顔が強張こわばってるぞ。楽にしろと申したろうが。......もしや、獣の匂いが鼻につくか?仕方なかろう。私は狐だ。ん、何だ、違うのか。......ほう。甘い......香り......ね。予想だにせん返事だ。......そうか、そうか。しかし貴様。鼻息が荒いぞ。息を深く吸うがいい。吸って。......吐いて。また吸って。吐いて。うん、良い子だな。素直、正直、実直である事は、余計な争いの芽を摘む。ただそれが嫌味にならぬよう、従来より言葉遣いには気をつけろ。だがね。私は貴様を知っている。あの時、私に食べ物を恵んでくれた貴様の言葉は、優しかった。嫌味の欠片も感じぬ、芯からの善意だと解せるものだったよ。この口だ。心地いい声と温もりの言葉を吐き出す、この口。私は貴様の口が好きだ。どれくらいかと言うとだな、それはな。奪ってしまいたいくらいにだ......はむッ。んッ......ふ......んふふ♪ぅんッ......ん、れぉ......んんッ......、んぅ......♪んッ......、......ぷはッ――もっかい、もっかいしよ。んふ♪......んぅう......ッ......れろ......くちゅッ......ん......。......あふッ......んッ、ん......、ふ、ぅ......はアッ、貴様、意外と、はァッ、舌は乱暴なんだな......、......くすッ♪ッん......んぅ......♪......んくッ......んッ......ぅ、ふ......♪れぉ......れろォ......。んんー......ぅ......ぷ、はァっ......。......ん、ふふ♪これが......接吻、か。噂に聞くより、ずっとずっと、気持ちの良いものだな。......相手が貴様だからか?......おい、聞け。呆けたツラを晒しおって。まったくひとの心とは度し難い......。私以外に見せるなよ?そんな間抜けヅラ。うふふッ♪ふう。楽しくなってきたじゃないか。なあ青年?ん?......おいおい。果たしてここには獣一匹だとばかり思っていたが。そ、こ。はち切れんばかりになってるぞ、このケダモノが。
ねえいつから?どうして?私としちゃったから?それとも私の匂い?私の姿?......どうあれ私が元凶だな。つまり「それ」の責任は、このナガヌキにあるという事。違うか......?......貴様はどこまでも正直な奴だ。正直ついでにもうひとつ申告してもらおうか?「僕はナガヌキに興奮して、勃起してしまいました」。聞かせろ。ほら。私の耳に、その舌先がえぐり込むように。言え。言え、変態。......、............馬鹿か?本当に言う奴があるか?変態という問いかけに答えたも同然だな。貴様は変態なんだな。分かった分かった。貴様は変態だ。変態。変態。変態。だが......、言ってくれて嬉しいよ♪変態な貴様がだぁい好きだぞ♪すーきぃ♪好き好き好き好き好き♪んちゅッ......。......ふふ。じれったそうだな。まったく、嗜虐を煽る顔つきをしおって。ばーか。悪いが、私は貴様と違って素直じゃあないんだ。そんな表情されたら......。......する?さっきの、もっかい。......うん♪んっ......む、んふ......♪くちゅっ......れろ......、んちゅ......んっ......んん......んー♪ぅんんッ......、......ん♪ん......、はぁ......はぁ......、......クスッ♪好きだぞ......。貴様も好きか?......そうか、分かった。......分かった。この部屋は、暑いな。ただ貴様と触れ合うだけで、滝のような汗だ。ん......?何だ、どこを見ている。......んん?......腋?が、どうかしたのか......?何だ、何を言って......、......腋が見たいのか?んー......、ほら、どうだ。これで良いか。......おい、目、目が、何だその、まさしくケダモノのようだぞ。貴様、こんなものに興奮しているのか。やはり度し難い......。が、致し方あるまいて。趣味嗜好はひとそれぞれと聞く。ほら、見ろ。そして興奮しろ。私をその、品性の欠片もない視線で。犯せ。目で犯せ。いくらでも、満足するまで。私はその下賤極まりない欲望に、どこどこまでも寄り添おう。......、......はぁ......はぁ......、......ん......目は口ほどにと言うが、貴様のはまさしくそれだな......。私まで妙な気分になるではないか。なあ......?......満足したか?いや、むしろ高揚......。はぁ......はぁ......、そろそろ貴様、我慢できなくなってきたんじゃないか。いい、皆まで言うな。分かるさ。分かるとも。どうやら貴様のそれは、顔を出したいと嘆く有様だが。ああ。そうだな。おちんちん、出そうか♪