Track 4

4.最低の会話

おい、お前さぁ、......この前、許可とれって言わなかったっけ。言ったよね。言ったはずだよ。今日もあそこ座ってやがったな......。何してんのマジで。直接文句言おうと思ったけどさぁ、今日、何気にひと多かったしさぁ、ただでさえ静かな図書室で騒ぐわけにもいかないから、おとなしく帰ったんだ。おかげさまで本読めなかったんだけどね?なあ?ねえ?......言い訳くらいは聴いてやるよ。ほら言え。正直に。真摯に。包み隠さず。ぁあ?......、......。は......。うっわ!き、きっも!なにそれ、温もりって何?私の?残ってるわけないだろ、あんな椅子に!えっなにそれ、えっえっお前っ。きっも、きっも!何言い出してんのキモイキモイ。ほんとキモイ。キモすぎてゲロ吐きそう!っていうか死んで!?心底キモいから!......ッ......、ふぅ。本当の理由、言えよ。何か、あるんだろ......。何かさ......。え......?......あ、......た、確かに、面と向かって......はいないけど、キモイなんて......本気で誰かに言うの......これも初めてだな。......割と、爽快感あるな。気持ち飲み込むよりずっと気が楽で......。お前になら言っても大丈夫な気がして。ま、本当に心底キモイと思ったけど。......あっ。まさかもしかして、お前、前にした告白の話......覚えてたのか?あの、キモイって思っても口に出せないって奴......。それで私に気ィ遣ったわけ?......フン。あっそ。馬鹿じゃないの。べっつに、何とも思わないわ。ありがた迷惑だ、うん、ありがた迷惑。気遣えばいいってもんじゃない。そんなの優しさとは程遠いし。まあ、......気遣おうとしたその気持ちだけ、受け取っとく。何か、悪いし。......あーでも、どうしよ。お礼言うとお前、犬みたいに喜ぶからなぁ。ここはあえて何も言わないでおくよ。ふふっ。......ほしかった?お礼ほしかった?ねぇねぇ。......あげないよ、バーカ♪ふふッ......あはははッ。ククッ。やーっぱり、私の方が一枚上手だろ?最初はさぁ、お前の一言一言に振り回されたけど、何て事なかったね、お前は前々から私を分析してて、逆に私はお前について知らなかったからな。そのアドバンテージも種が尽きる頃だろ?手に取るように分かるぞ~?話せば話す程、お前は私から逃れられなくなっていく。私を振り向かせる為にしてるどころか、ずぶずぶ私に依存して......。まーあ?私、可愛いし?賢いし?優しいからね、仕方ないと思うよ。ただ依存されても困るんだよね。私にしてやれる事って言ったら、そりゃ、サンドバッグしかないわけ。それでもいいのカナ?ふふふ。......、ねえ、......お前さ、私のどこに惚れたの。一切接点なかったし。一度だって話した事ないじゃん。まさか一目惚れ?そんなベタベタな理由じゃ冷めちゃうよ。いやいや、元々熱なんてないけどさ、お前の事だから、またおかしな理由つけるんじゃないかなって思って。......言ってみ?......、......ふうん。全部っていうのも、......意外というか何というか。全部って、全部?顔とか、......身体とか?......このスケベ野郎。え、ぇえ......?それって、声も仕草も口調も、何もかも......?う、......いや、なんか、キモイし、正直無理って思うけど、ううん、全部お前に見られてて、観察されてたんだな......。呆れるというより、もはや尊敬に値するよ......。......、......いやでも待て。お前それってさ、 表側の私の話だろ?今ここで話してる私じゃないだろ?へ。......え、表じゃないの......?もしかして、全部......裏の話?あ、あぁあ......そうか。そうだったのか。ふうん......。よく考えれば、お前、私の心を見抜いてたわけだもんな......。表が好きだったら、そこで幻滅するはずだよね......。うぇッ?......し、しないんだ......?へ、へえ、そりゃ守備範囲が広いな。あ、あー。なんか、今日はもうやめとくわ。これからご飯だし。じゃあな。