3.黒崎愛ドル
ぁあ、ぁあぁぁ......、あ......、も、ももももしもし。愛だよ、愛。い、いいいいいま、あのあのあの、げ、芸能......プロダクション?の、ひとから、名刺、もらって......うぁああ。アイドルになりませんかって、おかしいおかしいおかしいおかしい。今日は生きる世界間違えた......絶対間違えてるよ。おかしいもん。なんで、なんで私?あのひと、ええと、名刺......姫神さん......だ。姫神さん、視力がマイナスに振り切れてるんじゃないかな。ほんと。私のどこを見てアイドル......?それとも何か聞き間違えたかな?時期が時期だし、そうだ、焼き芋、アイドルと、「お芋焼いとる」を聞き間違えた可能性もぉお......――ハッ。ぁ、ああごめんごめん。一方的に喋りすぎちゃった......。あ、き、君もおかしいと思うでしょ?ね?思って?現実感なさすぎて、私、灰になって消えちゃいそう。サラサラ~~......。......へ?な、なに、やっぱりって何が。え?ひえっ。か、かかか可愛くないよ!う、あ、君にそう言ってもらえるのは、ほんと、すっごく嬉しいし、うん。でも、でもでも、それは君だからで、君以外にそういうのは相当アレで、アレだから......アレなの。ひぇえええ。頭の中、真っ白......、......あの、君の声もっと聴かせて。君の声が私の精神安定剤だから......。......ん......うん............。......、......ふうう。ありがとう。少し落ち着いたよ。ええと、まあその、私がどうこうというのは置いておいて。アイドルって私、よく分からないんだけど......きらきらしてるひとたちだよね。歌って踊って、可愛くて、綺麗で......いつでも笑顔で。女の子の理想だよね。あ、君、詳しいの?知らなかった。その、好きなアイドルとか......いるの?......、......ふーん......誰かな......?うん?名前教えて?調べるから。教えて?誰?可愛いの?ハッ。い、いや、それも一旦後にしよう......ああ、やっぱりむりむりむりむり。でも、お返事しないと。名刺に電話番号あるから......ごめんなさいしなきゃ。あぁ......断るの苦手だよぉ。でもでも、断れるひとにならなきゃ......。ん......ごめんね、ありがとう。好き......。へ?なに......?......うぁ。あ、う、うん......。き、君だけのアイドルになら......なりたい、かも。君の為に......なる。うん......。そう断ろう。もう私には、最高のプロデューサーさん兼パートナーがいるんです、って。えへへ。言えるかなぁ......?恥ずかしくて口ごもりそうだけど。うん、じゃあ、ちょっと失礼します。終わったらまた電話していい......?ん♪また、あとでね♪......あ、もしもし。あのね、断ったよ。......うん、ちゃんと出来ました。姫神さん、残念がってたけど......でも、すんなり受け入れてくれたよ。よかったぁ......。でも、もし仮に私がその方面に進んでもさ、私、運動神経よくないし、歌だって、全然歌った事なくて......、......え、カラオケ?あ、その、行った事ないや......。なんか、怖いし......。何がってわけじゃないけど、その、雰囲気......?え、いやぁあっ、むりむりむり。君の目の前でそんな、歌うだなんて、そんな、
恥ずかしさ極まって沸騰しちゃうよ私ッ。あ、ず、ずっと聴いてる側でいいかな、あはは。君ってすごい良い声だしっ。心地好い声だしっ。いつまでも聴いていたいもん。......う、あぅ。......そう、だね。それじゃ楽しくないもんね。よし、私も......頑張って歌えるようになるから。うん、君だけのアイドルになるって決めたから。歌い方とか、教えてほしいな......。えへへ......。お、音痴でも笑わないでねっ。約束だよ?......うん、ありがと♪