2.歌い鈴
歌い鈴」亀鳴く。鳥の巣。風光る。よもぎ。八十八夜。朧月(おぼろづき)。春。春。季節が走る。生き物。けもの。なにかあたたかいもの。物静かに、あまりに物静かに。ひんやり、ぽかぽか、昨日とあしたが、
言い争って。ふたつがひとつになったとき、晴れ晴れとした青空に、眠りについてしまいそう。あなたのこころは、まどろみに。変わる季節は足早に、しどろもどろ。もどろうか。それとも、起きましょうか。どちらにしたって、時間のなかで。あなたのこころは、雪解け水。ささいな抵抗は捨ててしまおう。焦る春は間違いだよ。さようならは、まだ、遠すぎるから。あの日もこんな空だった。ささいな決意と夢と希望。聞こえは良いとは言うけれど。それこそ未来と過去の狭間で。そよ風さえいつくしむ詩人のように。雨雲に寄り添うあのひとのように。いつでも、いつまでも、僕はここにいます。夕日が昇れば顔を伏せ、朝日の頃に笑うから。そして、旅立ちを。鈴を片手に歩き出す。懐かしの欠片を口ずさむ歌うたい。歌い鈴。