4.ナツカシノカケラ
アイ「ふーんだ。......、もう一度、よく考えてみなよ。クロウリさん、桔梗様に拒まれたことだけに目を奪われて、肝心なことが見えてないんじゃないのかな」クロ「去れと言っておろうが......!」アイ「はいはい。もう、変なのに捕まっちゃったなぁ......」クロ「............桔梗............俺は............」八月十五日。あの妙な妖と出会ってから、三週間ほどが過ぎた。コウちゃんには、その出来事を話していない。怖い思いをさせてしまいそうだから、黙っていたんだ。それと、神社解体の件についても、私とコウちゃんの話題には上がらなかった。なるべくそれを思い出さないよう、お互いに遠慮していたんだと思う。だって、神社がなくなる時......それは私達の、別れの時だから。コウちゃんと出会ってから今日まで、毎日一緒に遊んだ。駄菓子屋さんに行ったり、川辺で水遊びしたり、秘密基地で過ごしたり、普段遊ぶ友達の誘いを断ってまで、彼女と同じ時間を過ごした。そして、楽しい時間の経過は早いもので......いつの間にやら、桔梗祭が、明日に迫っていた。コウ「あの、アイちゃん」アイ「ん?どうしたの?」コウ「えっと......明日、ね......」アイ「あ!それ私から誘おうと思ってたんだぁ。コウちゃん。明日の桔梗祭、一緒に回ろうよ!」コウ「え?」アイ「担任の先生いわく、桔梗祭って今年が最後なんだって。神社の境内にばあーって屋台並んでさ、ヤグラも建てて、音頭踊って。まさに夏の一大イベントだし、二人でならとっても楽しいと思うんだ。......ダメかな?」コウ「ご、ごめんねアイちゃん。お祭り中は、巫女としての仕事があるから......せっかく誘ってくれたのに、本当にごめん!」アイ「......ううん、気にしないで。そうだよね、コウちゃん忙しいもんね」コウ「ごめん。ごめんね。お祭りが終わったら、会いに行くから......その......片付けが終わるまで、境内で待っていてくれる?」アイ「うん!いつまでだって待ってるよ!あっ、それで、さっき何を言おうとしたの?」コウ「えっと。あのね、お祭りの翌日には、もう解体工事が始まって、神社に入れなくなっちゃうんだ......」アイ「えっ。......うん。そっか」
コウ「だからね、色々兼ね合いがあって、解体当日にはもう、アイちゃんに会えなくなっちゃうの。だから、会えるのは、明日の夜が最後なんだ......。あまりその話をしたくなくて、今日まで伝えられなかったけど......お、怒ってない?」アイ「怒るわけないよー。コウちゃんってば、本当に優しいんだから」コウ「......ごめんね。本当にありがとう」アイ「えへへ。どういたしまして!」......その日、私とコウちゃんの会話は、弾まなかった。二人で、ぼーっと遠くを眺めて、やがて日が暮れて、私は家に帰った。アイ「あー......もう、何か変な感じぃ~」何とも言えないムカムカする気持ちに苛まれて、ベッドに寝転んで......ふと思い立って、桔梗様の日記帳を開いてみた。『七月二十日。立花コウちゃんという、不思議な子に出会った。神社の解体を知って、大ショック!でも、御神体は遷宮されるから、一安心だ』......え?これ......私の字?しかもこの内容、コウちゃんと初めて出会った時の......私、こんなの書いた覚え......ないよ?アイ「ま、まさかモデルさんですかっ?見慣れない制服だけど!」コウ「ち、違います!私、この神社の巫女です。立花コウっていいます」アイ「へえ、巫女さんなんだ。コウちゃん......名前も綺麗だね」コウ「うぇっ。あ、ありがとう。......あなたの名前は?」アイ「波多瀬アイカだよ。アイって、名前で呼んでくれると嬉しいな」コウ「え、ええと......アイ、ちゃん......?」アイ「うんうん!コウちゃん♪」コウ「......何だか恥ずかしい」わわわわっ。これ、日記の内容が......脳内に再現されてる!映像つきで!じゃ、じゃあ、もしかして次のページも......『七月二十一日。コウちゃんと駄菓子屋さんに行った。チーズおかきを二つ買ったら、なんとコウちゃんの可愛さに、相模じいさんが高い金平糖をおまけしてくれた!うらやましー』うわあ。目を離そうっ。また回想が始まっちゃう。でもすごいこれ......そっくりそのまま、あの日の出来事が思い出せるんだ。なにこれなにこれ、不思議だけど、ちょっと怖い......。えっと、じゃあ、その前のページは......?前に見た時は、ページがボロボロだし文字も霞んで読めなかったけど......
『八月一日。今日も、あのひとが来た。苦しくて、切なくて、顔を見られない。ああヒイラギ、それ以上、私を見つめないで』な、何だろう、これ。桔梗様の字なのかな。『八月十日。あのひとは、私のために、私だけのために、ひとから、ひとならざる者へと身を落とした。なぜ、どうして、そうまでして私を追い求めるのか。愛しい。あなたが愛しい。しかし、私は、あなたと結ばれてはならない。これは、常世のしきたり』『八月二十二日。八百万の神々が、あなたを奈落へと突き落とした。真実は、永遠に伝えられぬであろう。お赦しください。罪深き私を、お赦しください』『九月一日。我が愛を、せめてこの地に。たったひとり。ヒイラギのために。桔梗の花は、枯れ果てた』クロ「待ってくれ、桔梗!何故俺を拒む!」桔梗「駄目っ、駄目なの、ヒイラギ!来ないで!もう私に会っては駄目っ!」クロ「俺の愛を、受け入れてくれたじゃないかっ!桔梗ぉっ!」神々「何とも卑しい外道めが。まるで桔梗の花を喰らうハムシの如し醜態。今日から貴様はクロウリだ。ヒイラギの名は我らが貰い受けようぞ。去れ、クロウリ!二度とその姿、この境内に晒すでない!」クロ「うッぁ――」......今の、は......もしかして。メイ「お姉ちゃーん、お友達から電話だよー。桔梗祭、一緒に行かないかってー」アイ「あっ、う、うん!今行くから!」......桔梗の花は、枯れ果てた。それって......。今年の桔梗祭は、結局、近所の友達と一緒に回ることになった。皆から、夏休み前半は何してたのーと質問攻めにあったけど、旅行だなんだって適当に誤魔化しておいた。コウちゃんとの関係は、秘密なの。どうしてかって聞かれると、答えに困っちゃうんだけど......何だろうね。おとぎ話みたいにさ、うっかり喋っちゃったことで、それが消えてしまうような......そして、二度と戻ってこないような、そんな気がしたんだ。アキ「ほらほら、恒例の金魚すくい対決しようよ!一番とれた数が少ない人、みんなに林檎飴をおごるんだぞー!」
アイ「ぅええ!私がそれ弱いの知ってるでしょ!」アキ「聞こえませんなぁ。今日まで私たちの誘い蹴っ飛ばしてきた罰だよ、ばーつー!」アイ「もぉお!」ミコ「早く行こ?アイちゃん」アイ「ううう、分かったよぅ。......、......げぇえ!」ミコ「はいアイちゃんの負けー!」アイ「ひぅ......鬼ぃ。うう、金欠なのにぃ......」アキ「まぁまぁ。なけなしの林檎飴は、しっかり味わってやるからさー」アイ「調子いいこと言って......。買ってくるから、ちょっと待ってなさい!」二人「はぁーい」アイ「ん?あれは......足柄先生?おーいっ、先生ぇー」足柄「波多瀬か。どうだ、最後の桔梗祭。楽しんでるか?」アイ「ええ、まあ。あの、どこかでコウちゃ......いや、巫女さん見ませんでした?」足柄「巫女ぉ?おいおい、桔梗神社に巫女なんていないぞ」アイ「え?でも」足柄「ここは神主一人で切り盛りしてるからな。......おや?さてはお前、まーた金魚すくいに負けたな?」アイ「う、うるさいですね。別にいいじゃないですか」足柄「はっは。ま、あまりはしゃぎすぎないようにしろよ。って、さっそく怪我したのか、その手」アイ「違いますー!この前転んじゃった時の傷ですから!じゃ、すみません。林檎飴買わなきゃなので、失礼します!」足柄「......何だあいつ。様子が変だな......?」アイ「巫女さんが、いない......でも、コウちゃんは............これって、もしかして......」ミコ「アイちゃーん!花火打ち上げるってさ!ほら早く早く!」アイ「えっ?あっうん!」アキ「そらっ。林檎飴いただきーっ!」アイ「ああっもう!もっとありがたみなさいよー!」アキ「おいしーおいしー。さすがアイの買った林檎飴だー」
アイ「棒読みだね......。――わっ」ミコ「ぉおお、綺麗だぁ」アキ「今年はいつもより気合い入ってる感じするね。最後の桔梗祭だからかな?」アイ「......そうだね」アキ「それじゃっ、また明日ねー!」アイ「うん、ばいばーい!......さてと、神社に戻らないとね。コウちゃんが待ってるはずだから」クロ「最期の桔梗祭も灯りが消えたか。さぞ派手な祭だったろうな」アイ「あっ......クロウリさん」クロ「まだそのいかがわしい書物を持て余していたか。まったく人間とは、忠告を聞かん生き物だな」アイ「あなたがそれを言う?」クロ「何?」アイ「あなたは、ヒイラギという名前の人間だったんだよね」クロ「ッ!......知らんな」アイ「全部、書いてあったよ。これにね」クロ「それは......もしや、桔梗の......日記帳なのか?」アイ「うん。私も最初は中が読めなかったけど、あなたの言ったように、これには不思議な力があったんだ。私の思い出を、断片的に記録していくの。いつの間にか、夏休みの日記が出来上がってた。そしたらね、桔梗様が昔書いた日記の内容が、読めるようになってたんだ」クロ「貴様の所有物となった証だな......。そこに、私を貶す内容が書かれていたということか。桔梗めが、どこまで陰湿な神なのだ」アイ「違うよ!ここには、あなたを待つ桔梗様の想いが書かれてたんだよ!桔梗様は、自分の意思であなたを追い出したわけじゃない!八百万の神々がヒイラギを奈落へ落としたって、書いてあったもん!真実は、永久に伝えられないだろう......って!」クロ「見え透いた嘘だ」アイ「嘘じゃない!私が嘘つく理由なんて、どこにあるの?」クロ「わめくな。貴様の甘言など......信じられんよ。証拠も何もない。その日記帳は私が読めるものではないのだからな」アイ「信じられないなら、神社を見てみるといいよ。この階段を上って、桔梗神社の......その最後の姿を、見てあげて」クロ「私は追放された身だ。境内に立ち入ることはできない。
その階段にすら、私は足を延ばせないのだ」アイ「そう思うなら、ずっとそう思っていればいい。日記の最後の一文は、『桔梗の花は枯れ果てた』、だった。桔梗様は、死んじゃったんだよ。でもね、鴨田山の守り神様は......あなたへの愛を、あの神社に残してくれたみたいだよ。見に行かなくていいの?」クロ「もう、いい。それ以上、貴様の話を聞きたくない。放っておいてくれ。私を、ひとりにさせてくれ......」アイ「決心がついたら、上がっておいでよ。待ってるからさ」アイ「......私ね、ヒイラギさん。桔梗様の残してくれた愛が何なのか、分かる気がする。ずーっと気づかなかったけど、この日記帳のおかげで、ね」アイ「あれれ。もう皆、帰っちゃったんだ?」コウ「片づけも終わったみたい。ごめんねアイちゃん、夜遅くになっちゃって。花火、すごかったね。一緒に見れなかったのは残念だけど......」アイ「そうだね。私も一緒に見たかったなぁ。......ねぇ、コウちゃん。懐かしいって感覚、不思議だと思わない?」コウ「へ?どうしたの、急に」アイ「ふと思ったんだ。懐かしいって、心の中にあるもので、目に見えたりするわけじゃないよね。ひとによって、色んな思い出があるし、何を懐かしいと思うか、それもひとによってバラバラなんだよ」コウ「アイちゃん......?」アイ「この日記帳は、そんな懐かしい思い出を、目に見えるカタチで記録してくれる。まるで記憶のカケラを拾い集めるみたいに、ひとつひとつ、どんなに小さなことでも......。分かったんだ。どうしてコウちゃんがこれを渡してくれたのか。そして、コウちゃんが何者なのか。この日記帳を見るたびにね、コウちゃんと過ごした思い出が、頭に浮かび上がるの。照れた顔も、笑った顔も、全部。......それってさ、つまり、コウちゃんは――」コウ「その先は、言わないで。アイちゃんが分かってるなら、口に出さなくても、ちゃんと伝わってるから」アイ「......お礼を言いたいな。私にこんな素敵な贈り物をしてくれて、ありがとう。そうだ、もうひとりいるんだよ。あなたにお礼を言いたいひと」コウ「え?」アイ「ほら、隠れてないで出ておいでよ」クロ「......どこまでも、お節介な小娘だ」コウ「あなたは......?」
アイ「このひとはねぇ、桔梗様のお婿さん!」クロ「なッ」コウ「えっ......!あ、あなたが......?」クロ「お、おいっ!その言い方はやめろ!」アイ「えー?ちがうのぉ?」クロ「ち、違うとか、そういう話じゃなかろうが」アイ「わー、照れちゃって!可愛いところもあるんだね」クロ「黙れ!......ちっ......懐かしい香りだ。そうか、貴様が、桔梗の......。私がこの地に足をついているということは、やはり、桔梗はもう......」コウ「......お母様......先代桔梗には、子がいませんでした。死期を悟った先代は、自らの肉に刃を入れ、滴る血潮は、私という新しい神を生み出したのです。彼女は死に際に、私に言いました。『あのひとが、きっと来るから』と。私には理解できませんでしたが......そっか、あなたが......」コウ「......お父様」クロ「なっ......何を?」コウ「私は、あなたと桔梗の愛によって、生まれたのです。あなたが、私のお父様ですよ」クロ「......。やれやれ桔梗め、最後の最後で洒落た置き土産というわけか。大して驚きもせんがね。はっはっは......」クロ「波多瀬......といったか。全て君の言う通りだったな。俺は......馬鹿だ。馬鹿にも程がある。君には悪い事をした......」アイ「そんなことないですよ。あなたはきっと、長い孤独に支配されていただけだと思うから。でも、これでもう大丈夫だね。コウちゃんと一緒なら、どこへ行ってもひとりじゃないし!」クロ「そうしたいところだが......どうやら、お迎えだ」アイ「え?」コウ「あっ!」アイ「わっ。ど、どうしたのッ?変な光が......ヒイラギさんを包んでる」クロ「俺はもはや、ひとでも妖でもない、成仏し切れていない怨霊なんだ。無念が、願いが成就されたならば......あとは、ただ消えるのみさ」コウ「お、お父様......!」クロ「桔梗。君ならきっと、立派な守り神になれるだろう。何せ、あいつの娘だからな。最後にひとつだけ、クロウリでなく、君の父親として伝えさせてほしい。
......生まれてきてくれて、ありがとう」コウ「......お父様。逝ってしまわれた......」アイ「とっても優しいお父さんだね。コウちゃんの性格は、あのひと譲りかな?」コウ「そうなのかな......?でも、何だか嬉しいな......」アイ「コウちゃんが日記帳を渡してくれなかったら、ヒイラギさんもコウちゃんに会うことができなかったんだよね。桔梗様の想いがコウちゃんに受け継がれて、知らず知らずのうちに、ヒイラギさんを招き寄せたのかもしれないね。あのひとは消えちゃったけど、でも、この日記帳に、私の記憶のカケラとして生き続けるよ、きっと♪」コウ「そうだね。私もいつか、アイちゃんの懐かしい記憶のカケラになれれば、嬉しいな」アイ「それはお互い様だよ」コウ「うふふ。......ね、アイちゃん」アイ「ひゃっ。コ、コウちゃん?」コウ「本当は離れたくない......ずっと一緒にいたいよ」アイ「......もー、甘えん坊さんだね。大丈夫だよ。ここでお別れでも、私達はずーっと、記憶の中では一緒だから。ほら、ね?大丈夫......大丈夫、だから......」コウ「ごめん、ね......私、守り神なのに、強くないといけないのに」アイ「そんなこと、ない。誰かのために涙を流せるコウちゃんは、立派な神様だよ。ひとの心を持ってる、やさしい神様なんだよ」コウ「アイちゃん......ありがとう」アイ「こちらこそ......。えへへ、コウちゃんったら桔梗の花の香りがするよぅ。このままこうしてたら、私も桔梗様になっちゃいそうだね」コウ「もう......最後の最後で恥ずかしいこと言わないで......」アイ「ごめんごめん。ちょっとユーモアを効かせてみました」コウ「ふふっ。やっぱりアイちゃんは、アイちゃんなんだなぁ」アイ「あーっ、それってどういう意味!」コウ「なんでもないでーす」アイ「もー!いじわる!」コウ「あははは」アイ「わっ!コウちゃんの身体......光って......まさか」コウ「......もう、日を跨ぐ時間、かな」
アイ「えっ?う、うん、零時一分前」コウ「もう、行かなくちゃ」アイ「ッ!コウちゃん......!え、えっと、事故とかには気をつけてね!夜はちゃんと歯を磨いて寝るんだよ?あとは、あとは、えーっと」コウ「アイちゃん。......優しくて愛しい、私の親友。大好きだよ......」アイ「コウちゃん......わ、私もっ!私もコウちゃんの事、大好きだよ!」コウ「ありがとう。......さようなら」アイ「......行っちゃった。あ、好き嫌いしないで食べてね、って、言い忘れたなぁ。あはは......」翌日の早朝から、桔梗神社の解体工事が始まった。取り壊す様子を見に行こうとしたけれど、階段の前にバリケードが設置されていて、その願いは叶わなかった。地元のひとたちが結構集まってきていて、その中には、足柄先生もいた。やがて先生は、こっそりと人だかりを抜け出して......肩を震わせ、泣いていた。夏が終わって、工事も終了して、桔梗神社は、更地となった。鳥居も灯篭も本殿も、跡形もなく消え去った境内。桔梗様の痕跡は、一切残ってなくて......メイ「おねーちゃーん、そこにいるんでしょー!午後からお友達とカラオケ行くって言ってたじゃん!私も行くことになったからさぁ、早く準備して行こー!」アイ「家で待っててー!すぐ行くからー!」アイ「......ふう。さてさて、いっちょ歌いますかぁー!」立花コウちゃん。彼女と過ごした日々は、ほんの少しだけ過去の事なのに、夢のような、遠い昔のような、ひどく懐かしさを感じる記憶になってしまった。この夏に起こった、ちょっぴり不思議な体験。それは、時が過ぎてバラバラになってしまっても、懐かしのカケラを拾い集めれば、まるで昨日の出来事のように思い出せるはずだ。それを手伝ってくれる桔梗様の日記帳が、ここにある。最後のページには、私の親友の、ちょっぴり寂しげな笑顔が、いつまでも......残っていた。......おやすみなさい。愛する君へ。