05
※
(団扇であおいでくれている)
ふーん、ふふーん、ふーん…
あら、目が覚めたかしら?
君、ちょっと眠ってたのよ。
時間は…君の寝顔みてたから、わからないわ。
さすがにずっとはつらいから、膝枕は外させてもらったわ。
でもずっと、穏やかな寝息で、いたから、ふふ。
はい、目が覚めたんだし、これでも飲んで。
のど、乾いてるでしょう?
ん、アイスティーよ。
私お気に入りの紅茶とミントを水出ししてみたの。
ちゃんと甘みも効かせてあるわ。
そんなに急いで飲む必要ないのに…外…そうね、すっかり夕闇色になったわ。
セミよりもひぐらしの時間ね。
くすんで一色(ひといろ)に溶ける世界を見て、満足かしら?
意地悪、ね…まぁいいじゃない。
私…あぁ、自分が対価を支払えたかって事?
そうね…
君の寝顔みたから、満足って事にしておいてあげようかって思ったの。
でも、耳かき中のふーふーも足りなかったし…それに、まだ、夏と私の違い、教えきってないからね。
ん、じゃあもう一度、ベッドに寝てくれる?
で…私も、君に沿って…君、もうちょっと横にずれて…んしょ…はい、ぴったり。
ふふ、これで膝枕より、ちゃんと私が伝わるでしょう。
で、こうする。
ふぅ~ふぅ、ふぅ。
ふぅ~、ふぅ~ふぅ~。
ちゅ、っちゅちゅ。
どうかしら、夏の暑さと私の違い。
ふぅ~ふぅ、ふぅ~。
てっぺんから照りつける太陽をあびて流れる汗と、心からわき上がる、ほっとする熱、違うでしょ?
夏でも、くっついてたいのが、人のぬくもり…。
ふぅ~ふぅ。
ちゅっちゅ、ちゅ。
いい匂い?
さっき飲んだアイスティーじゃない?
え、私の匂い…だといいわね♪
匂いほめられるの、くすぐったいけど、結構いいものよ。
ふぅ、ふぅ~ふぅ、ふぅ~。
ふぅ~~。
ちゅっちゅ、ちゅ、ちゅむむ、ちゅるる。
んんっ、気のせいよ。
何もしてないわ。
お家へ帰る小鳥さんでも鳴いてるんじゃない?
それより、人のぬくもり、好きになった?
まだかぁ…なかなか君も強情ね。
ふぅ~、ふぅふぅ、ふぅ~。
ふぅ~、ふぅ~、ふぅう~。
ちゅ、ちゅっ、ちゅっちゅ、ちゅぴ、あむあむ、あむはむ。
んん?
さっきから…?
やだわ。何もしてないわよ。
ふぅ~ふぅ。
ふぅふ、ふぅふぅ~。
ちゅ、ちゅっちゅ、はむはむ。
ふふ、だから、何でもないわ。
納得、しないの…仕方ないわね。
そう、あえて言うなら…小さな頃しなかった?
大好きなタオルケットの端っこをかみかみはむはむ夢の中…。
そういうようなものよ。
ほら、気にする必要ない、些事よ、さじ。
くまちゃんのぬいぐるみを抱くと、どうしてもしっぽを触るみたいな、かわいいクセよ。
ちゅちゅっちゅ、ちゅむ、あむあむちゅ♪
まったく、強情ね。
秘密は秘密のままであるのが、美しい事もあるのよ。
特に、女にはね…それを知りたいだなんて、君は困りものだわ。
でも、その知りたいっていう欲求が生まれたことは、いいことなの。
だって君、何も知らなくていい、知りたくない、知る必要もない…そう、世界と自分は関係ないって、下を向いてたでしょ?
ふぅ~、ふぅ、ふぅ、ふぅ~。
でも、耳から得たものは、知りたがってる。
ちゅっちゅ、ちゅ、はむはむはむ、ちゅ。
ふぅふぅ~、ふぅ。
ちゅっちゅ。
その探求心、男の子よ。
そしてその答えをあげるのも、私、紬愛莉の使命。
ふぅ~、ふぅ、ふぅ~ふぅう。
ちゅっちゅはむはむ。
さっきから、君が気にしてる、これ。
ちゅっちゅ、ちゅっちゅ。
私ね、耳たぶ大好きなの。
自分好みの耳たぶを見ちゃうと、我慢できないのよ。
…ね、お気に入りのタオルケットでしょ?
こうして、はむっはむはむ、あむあむ、ちゅっちゅ、って、お耳をちゅうちゅうはむはむしたくなっちゃう。
ちゅっちゅ、はむはむ、ちゅむ。
ふ~、ふぅふぅ、ふぅ。
あむあむ、ちゅっちゅ、ちゅむはむはむ。
はい、種明かしはおしまい。