Track 3

トラック03 『小テスト勝負の代償』

■トラック03 ふぅー、今宵のお風呂も気持ち良かったー♪ 善きかな善きかな♪ あ、そういえば久しく体重計に乗ってないなー。 お風呂上がりでちょうどいいや、体重はかってみよっと。 ……えーっと。体重は……。 ……。 わぁああぁー! ご、ご、54kgー!? ゆ、油断してた……。こんなに体重が増えてるなんて……! 原因は一つしか思い浮かばないよ……。そう、キャプテンとの小テスト勝負! もうかれこれ1ヶ月以上は続けてるけど、毎回私が勝って……、そしておしるこ貰って……。 全教科そんなことしてるからカロリーが大変なことになってたんだ……! これは対策を考えないと、もっと大変なことに……! 明日の放課後あたりに、キャプテンに相談してみよう! <-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------->  場面転換。放課後――。 <--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------> おーい、キャプテーン! 家へ帰っちゃう前に聞きたいことがあるんだけど! 最近の私……、どこか変わったでしょ? 遠慮なく言っていいよ! え? 「天狐、前髪少し切ったでしょ」……? うん、そうだよー。よく気付いたね。毎回ちゃんと前髪を整えてるんだよー。そういうとこ気付いてもらえるのって嬉しいな。 ……ってそうじゃないよ! いや、前髪切ったのは当たってるんだけど、そうじゃなくて! 体重が……! 体重がぁぁあ……! ちょっと耳貸して! 誰にも聞かれたくないから! ……えっとですね、昨日の夜に体重をはかったら……、ご、54kgありました……。 はい、ご清聴ありがとうございました……。 うぅ……、ショックだよぉ……。 んぅ……? 「天狐はスタイル良いから、そんなこと気にしなくても良い」……? いやいや、私スタイル良くないでしょ? 身長だってそんなにないし、体重も54kg……だし……。はぁ……。 ……? どうしたの、急に私から目をそらして。それになんだか顔も赤いよ? ……。 あっ! もしかしてスタイル良いって、む、胸のこと……言ってる……? 顔を赤くしながら目そらすくらいなら言わなければいいのに……。 なになに? 「天狐はフサフサの尻尾があるから、その分の重みもあるんじゃないか?」……だって? なるほど、良い指摘だね。 しかーし! 仮に尻尾が1kg……、いや、2kgの重さがあったとしても、差し引き52kg! まだ50kg台だよ!? 男子って50kg以上の女の子ってデブー!とか思ってるんでしょ? えぇー? 本当に50kg超えてても適正体重って思ってくれてる~? 仮に君がそう思っていたとしても! 女子としてはダイエットせざるを得なーい! というわけで、なにか痩せる為のアイディアをぷりーず! ん? 「天狐の家系って代々妖狐なの?」って? そうだけど急にどうしたの? ……えぇっ? 「妖狐一族に伝わる秘伝の妙薬とか無いの?」って言われてもなぁ。 そんな漫画やゲームに出てきそうな古めかしいアイテムなんて……。 あっ! ある……! お母さんたちが「まだ天狐には早い」とか言って、たまに寝る前に飲んでる丸薬があるよ! 夜中に目が覚めちゃった時に、その丸薬を飲んだ後のお父さんと居間で会ったことあるけど、すっごく汗かいてて顔も火照ってたよ! キャプテン……? 凄く目を輝かせてるけどどうしたの? 「俺もその秘伝の丸薬を飲んでみたい」……? 「なにか潜在能力を解き放つような効能があるかもしれない」……? 君は漫画に出てくる秘伝アイテムみたいなものが好きだねー。……でも夜中に汗だくってことは妖狐の術の修行でもしてたのかな。 修行の時に使う霊力活性の丸薬とかだったら、まだ私には早いって言われるのも納得だなあ。 わっ!? 急に私の手を握ってきてどうしたの!? 「修行の丸薬だなんて男のロマン溢れる秘薬、飲まずにはいられない。俺にも飲ませてくれ」……? うーん、今日はお母さんもお父さんも帰ってくるの遅いし、こっそり何粒か盗んじゃってもバレないとは思うけど……。 ……じゃあ、私の家に来てみる? ……な、なんちゃって。妖狐の家なんて怖くて来れないよねー。 え? 絶対行く? 親御さんが帰ってこないうちに、絶対に天狐の家に行く!? 目が少年のように輝いてるよキャプテン! ……あれっ、先生がこっちに向かってきたよ? 先生「あら、天狐さんとキャプテン。今日も仲が良いみたいだけど、いったい何の騒ぎ?」 天狐「聞いてください先生! 今日は両親の帰りが遅いって言ったら、何が何でも私の家に行くってキャプテンの剣幕が凄いんです!」 先生「ちょ、ちょっと……! 仲が良いのは構わないけれど、ふ、不純異性交遊はさすがに見逃せませんよ!」 天狐「ふじゅっ……!? あ、両親の帰りが遅いってそういう意味じゃなくてですね! その……うぅ……」 先生「なんですかキャプテン。……はい? これから天狐の家で修行を積んできます、岩を拳で粉砕できるようになっても驚かないでください……?」 先生「……ぷふっ。あはははっ。このキャプテンに限って不純異性交遊は無いわね! 何をするか知らないけど、天狐さんの家にいってらっしゃい」 天狐「な、なんだろ……。キャプテンにその気が無いというのもそれはそれで女子として自信を無くすというか……。うう、先生いってきます……」 先生「はいはーい、気を付けて帰るのよー。……ふふっ。キャプテンってば、まだまだ子供ねぇ」