Track 5

トラック05 『中間テストの勉強』

■トラック05 きゃぷてーん……。下校の時間だよー……。私はー……もうダメだぁ……。 あ……、話聞いてくれる……? 体重が、体重がぁ……。ご……55kgに……なりましたぁ……。 尻尾の重さを考慮しても、ちょっと危機感を感じる数字になっちゃったよぉ……。 んんー?? 「なんで天狐の体重が、また1kg増えたのか分からない」ぃぃい……??? そーれーはーねー! 君が未だに小テストで私に負け続けて、おしるこを奢ってくれるからだよぉおおーっ! ダイエットしなきゃって言ってる女子に、なぜ大好物を贈るだなんて拷問をするの……っ! 「毎回おしるこ貰って、はしゃぐ天狐が子犬みたいで楽しいからつい……」? よ、よりによって子犬!? 私、妖狐なのに!  さすがにこれ以上体重を増やしちゃいけない……。と、いうわけで! 小テストの勝者はジュースを奢ってもらうという悪しきルール……変えるべきだと思うの! 私、考えてみたんだけど、もうすぐ中間テストじゃない? だから中間テストの合計点数で勝った方が負けた人に一回命令できるってのはどう? うん、命令は何でもいいよ。うん、妖狐の術を使わせるのも良いよ。 えっ、嫌だなって思うお願いでも良いかって……? き、君は何を命令しようとしてるのかな……? まぁでも良いよ、女子に二言は無いよ! 不真面目エースのキャプテンがどこまで私に対抗できるか楽しみだなー。 お、さっそく家に帰って勉強するって? 了解ー、じゃあまた明日ねー。ばいばーい。 ……。 あのキャプテンが、妖狐の術の為に自ら勉強するなんて……。勝ったら私に何を命令する気なんだろ……? 妖狐の術で、人にも有名なのって……。やっぱり変化の術……、だよねぇ。 化け狐って言葉も人の間で有名だもんね。 でも嫌だなって思うお願いってキャプテン言ってたよね……。 ……。 はっ! まさかえっちなお願い……とか? 変化の術で可愛いクラスメイトに私を変身させて、ちょっとえっちなことをしたりとか……!? つ、辻褄が合う……! 妖狐の術で他に有名なものって無いし、私が嫌がりそうってキャプテンが考えるであろうお願い! これしかないよ! うーん、キャプテンもしっかり男子なんだなー。でも変化の術って苦手で使えないよー……。 キャプテンが中間テストで勝つ可能性もゼロじゃないし、変化の術が使えないなんてことでガッカリさせたくないよ……。 中間テストの結果が分かるまでに変化の術を使えるように特訓しておかないといけないね。 は、恥ずかしいけど恩返ししたいし……! よーし。変化の術の特訓、頑張るぞー! ……あれ? 勉強してる暇あるのかな? まぁいいか、キャプテンのためだし! 絶対に変化の術を習得するぞー! ……あとできればダイエットもするぞー。おー! <-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------->  場面転換。別の日の放課後――。 <--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------> ねぇキャプテン。家へ帰る前に少しお話しない? ……え、今日も家で勉強する? あ、うん……、ばいばーい……。 ……。 はぁ……。もう2週間以上、キャプテンが勉強に夢中だよー! 全然お話できてないよー! このまま友達の仲が疎遠になっちゃったらどうしよう……。気が気じゃなくて食事も喉を通らないよ……。 そのおかげで体重は順調に減って、ダイエットは成功しそうなんだけどね……。あはは……。笑うに笑えないよぉ……。 あ……、先生。こんな放課後に教室へ何か用ですか? 先生「んー? ただの校内見回りー。そういう天狐さんはどうしたの?」 天狐「うー……。最近キャプテンと話せなくて、ちょっと……いえ、かなり学校がつまらなくて……」 先生「そうなの? 最近の天狐さん、少しずつクラスの皆と話せてるじゃない? 先生としては安心していたのだけれど」 天狐「あ、そうですね。キャプテンと話してるのを皆見てたみたいで、クラスの皆も話しかけてくれるようになった……かも」 先生「そういえばこの前もクラスの皆と、今度の文化祭の出し物を何にするかで盛り上がってたじゃない?」 天狐「はい、劇をやりたいって人が多かったですね。もう台本を書いてる人がいるみたいですし、このクラスは劇で決まりじゃないでしょうか」 先生「らしいわねー。ふふっ、劇をやるなら不真面目エースのキャプテンが面倒臭がりそうねぇー」 天狐「あはは、簡単に想像できますね」 先生「それじゃあ、私は職員室に戻るわね。帰る時は教室の扉だけ閉めてくれればいいから。じゃあ天狐さん、また明日」 天狐「はい、また明日ー」 ……。 文化祭も気になるけど、今は変化の術の特訓をしなきゃ。 ……もう中間テストなのに、こんな調子で私、大丈夫かな? ま、まぁダイエットは成功してるし、も、問題なし! テスト勉強は……うーん……。キャプテンと話せないことが気がかりで、あんまり集中できてないんだよなぁ。 もう今回の中間テストはぶっつけ本番で行こー! おー!