・トラック06「お坊ちゃま、耳かきのお時間です」
;ボイス位置 9
【千代】
「お疲れさまでした。ささ、私の膝に頭を預けておくつろぎください」
;SE 頭を膝の上に置く音(右耳がお腹側、上を向いている状態)
【千代】
「ふふっ。ほかほかですね、お坊ちゃま」
【千代】
「手で扇いで差し上げますね。ふふっ」
【千代】
「扇子もありますが、そちらの方がよいでしょうかね」
【千代】
「最初はゆっくりと冷ましていきましょう。湯冷めするといけませんからね」
【千代】
「ふふ。今は普通に冷ましているだけですが、昔もこのような事がありましたね」
【千代】
「あの時は、坊っちゃまがのぼせてしまいましてみなで慌ててしまう中、私の膝の上でぐったりとされていたんですよ」
【千代】
「坊っちゃまは朦朧とされていましたが、覚えていらっしゃいますかね。私としては、坊っちゃまと一番最初に長く触れ合った時間にございましたから、とても鮮明に覚えております」
【千代】
「それからは度々、この千代の膝に頭を預けてくださるようになりました」
【千代】
「たまに耳かきをするようにもなりましたが、あれは……いつからの事でしたでしょうか。すぐには思い出せませんね……」
【千代】
「耳かきをすれば、思い出すかもしれません。どうです、本日の耳のお掃除も私にお任せいただけますか?」
【千代】
「ありがとうございます。では」
;SE 右耳をさする音
【千代】
「こちらの耳を上にしてくださいませ」
;SE 右耳を上にするため体を半回転させる音
;ボイス位置 11
【千代】
「はい。ありがとうございます。では、まずは耳の表面をケアさせていただきますね」
;SE 耳かき 中
【千代】
「耳はツボがたくさんございますからね、耳垢というわかりやすい汚れはありませんが、適切な施術はとても効果的なんですよ」
【千代】
「もちろん坊っちゃまにお喜び頂けるように、勉強いたしましたのでご安心ください」
【千代】
「先ほど肩をお揉みした際に、大変凝っておりましたから肩こりのツボを集中的に刺激いたしましょうか。ちょっとぐりぐりしますね」
【千代】
「ぐり……ぐり……痛いですか? 少しご辛抱ください」
【千代】
「この痛みの後には、解放感が待っておりますよ」
【千代】
「ぎゅっ……ぎゅ……はい。いかがですか? 少し楽になったでしょう?」
【千代】
「では、他のツボも刺激してまいりますね」
;SE 耳かき 中
【千代】
「耳は結構実用的なツボが多いんですよ、中には酔い防止のツボなんかもあったりして、個人的によく押しております」
;SE 耳かき 中
【千代】
「さて、耳のツボ押しはこのくらいにしておりましょうか」
;ボイス位置 3
【千代】
「そろそろ内側をかいていきますね」
;SE 耳かき 中
【千代】
「カリカリ、カリカリ」
;ボイス位置 11
【千代】
「ふふ。眠って頂いても大丈夫ですよ。お風呂上りですから、気持ちよくうたた寝ができることでしょう」
【千代】
「耳かきが終わってお眠りになっているようでしたら起こしますので、ご安心ください」
【千代】
「千代は子守歌代わりに昔の話などをしますから」
;SE 耳かき 中
【千代】
「さて、どこからお話しましょうか」
【千代】
「坊っちゃまとの出会い、初めて膝の上に坊っちゃまの頭を乗せたお話も、もういたしましたよね」
【千代】
「思えば、坊っちゃまとの間には様々な初めてがございましたね」
【千代】
「初めて殿方と遊んだのも、初めて喧嘩をしたのも、初めて約束したのも……これまでの全てがお坊ちゃまでした」
【千代】
「初めてが一つ一つが増えていく度に、私自身の成長を感じます」
【千代】
「坊っちゃまの右腕に相応しく在れるように。これからもどんどんと、どんどんと高みをめざしてまいります」
【千代】
「これからもよろしくお願いいたします」
;SE 耳かき 中
【千代】
「初めて遊んだ時の事、坊っちゃまは覚えていらっしゃいますかね」
【千代】
「お屋敷の中で鬼ごっこをいたしましたね」
【千代】
「捕まれば交代の鬼ごっこ。当時の坊っちゃまと私の実力差は同等で、交代しては走り、交代しては走りを繰り返しておりました」
【千代】
「屋敷の中を走っているのを坊っちゃまのお母さまと私の母に見つかった時は大変でしたね、二人から逃げるために屋敷中を二人で手をつないで駆け抜けました」
【千代】
「結局、最後は捕まって夜になるまでお説教されてしまいましたが、いい思い出です」
;SE 耳かき 中
【千代】
「初めて喧嘩した時の事、喧嘩をしたのが初めてというのは覚えているのですが、何を理由に喧嘩したのかを思い出せないのですよね」
【千代】
「おそらく些細な事であったと思います。目玉焼きにかけるのは醤油かソースか、みたいな……」
【千代】
「目玉焼き……近いけど違いますね……卵……卵……」
【千代】
「ああ。ゆでたまごでございました! ゆでたまごにかける調味料!」
【千代】
「当時の私が醤油で坊っちゃまが……あれでしたよね」
【千代】
「懐かしいものです。坊っちゃまの今のお好みは何ですか?」
;SE 耳かき 中
【千代】
「初めての約束は、覚えていらっしゃいますか」
【千代】
「いえ、覚えていらっしゃらないのならそれはそれで良いのです」
【千代】
「私のかけがえのない思い出でございますから」
【千代】
「気になりますか? そうですね、では少しだけヒントを」
【千代】
「実は今も、約束と一緒に坊っちゃまから渡されたものを千代は肌身離さず持っております。もう指には通らなくなりましたので、ネックレスという形でございますが」
;ボイス位置 3
【千代】
「大事な、大事な宝物です」
;SE 耳かき 中
;ボイス位置 11
【千代】
「耳の内側の部分はこのくらいで良さそうですね」
【千代】
「では、最後に奥の方をやってまいりましょうか」
;SE 耳かき 中
【千代】
「いかがですか? 昔初めて奥の方を掃除した際は、坊っちゃまに痛がらせてしまいましたが、今は、痛みなく耳をかく心地良い音と感触だけが伝わるでしょう?」
【千代】
「これが千代が編み出した奥義……耳掻快感楽園(みみかき・かいかん・らくえん)にございます……」
【千代】
「とくとご照覧あれ」
;SE 耳かき 中
【千代】
「最近は私が坊っちゃまの耳をお世話することが少なくなっておりましたから、奥は実に」
;ボイス位置 3
【千代】
「溜まって、きておりますね」
;ボイス位置 11
【千代】
「ですが、本日は私がご奉仕させていただきますから、塵の一つも漏らさず、お掃除いたしますね」
;SE 耳かき 中
【千代】
「少し、塵を飛ばしましょうか」
;ボイス位置 3
【千代】
「ではいきますよ。すーーーーっ」
【千代】
「ふーーーーーっ、ふーーーーっ」
【千代】
「ふふっ、坊っちゃまはこうやって耳を吹かれるのがお好きですか?」
【千代】
「ではいつもよりも長くふーふーさせて頂きますね」
【千代】
「ふーーーっ、ふーーーっ」
【千代】
「ふっ! ふっ!」
【千代】
「ふー……」
【千代】
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ!」
【千代】
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
【千代】
「これで……塵も十分飛びましたね」
【千代】
「では最後にちょっとだけ、気持ちよくなるためだけの耳かきをいたしましょうか」
【千代】
「本日は休日ですからね。特別です。ふふふっ」
;SE 耳かき 中
【千代】
「よし……と。これでこちらの耳の耳かきは終わりでございます」