Track 5

3-1.『指名手配中の魔法使いに催眠魔法をかけられたら』

 ――この家ですね。  妙な模様が刻まれた壁です……。  建物を包囲しましょう。  一階と二階……それぞれの窓の前にも、人をつけてください。  相手は、指名手配中の魔法使いです。  数年前から手配されているというのに……あらゆる騎士団から逃れ続けながら、殺人未遂や宝飾品の盗難を続けています。  おそらく……何か、人の認識を眩ませるような魔法を使うのでしょう。  肉体を透明化してくるかもしれません。  何もいないと思っても、決して油断はしないように。  皆、準備はいいですね?  合図をしたら一斉に踏み込みます。  三、二、一……  ――行きます!  ソヌリ騎士団です!  あなたは完全に包囲されています!  魔道具を捨てて、投降しなさい!  …………。  ……あなたですね?  てっきり、隠れているものかと思いましたが……  正々堂々姿を現すとは、いい心がけです。  両手に何も持っていないことを示しなさい。  そのローブの中を見せて。  …………。  ……副団長。  手配書よりも若い。  それに……強い圧力を感じます。  おそらく、魔力量は一級魔法士に相当するはず。  警戒するように。  何も持っていないようですね。  今、近づきます。  先ほども言った通り――  この建物は、既に騎士団が包囲しています。  抵抗しても無駄です。  よろしい。  では、手を差し出して。  この、耐魔の手枷を付けさせていただきます。  …………。  ……どうしたのですか。  手を差し出しなさい。  ……なんですか? その笑みは。  早くしなさい。  早く!  …………。  ……今の外の声はなんですか。  副団長! 確認を――  ……副団長?  目がうつろになっている……  まさか、これは……  さ、催眠魔法……?  ですが、どうやって……  魔力が発動した気配はなかった!  ……足元?  何を……  ……これは。  床に……魔法陣、が?  まさか……  建物の壁に刻まれていた模様は――!  この周辺全てに、既に魔法がかけられていたというのか……!?  き、危険です!  意識を強く持ってください! でないと――!  あ――  ぅ――  い、いけません。意識が……  な、何をする、つもりです、か……  ち、近づいてこないで……  私……  私は……