3-1.『指名手配中の魔法使いに催眠魔法をかけられたら』
――この家ですね。
妙な模様が刻まれた壁です……。
建物を包囲しましょう。
一階と二階……それぞれの窓の前にも、人をつけてください。
相手は、指名手配中の魔法使いです。
数年前から手配されているというのに……あらゆる騎士団から逃れ続けながら、殺人未遂や宝飾品の盗難を続けています。
おそらく……何か、人の認識を眩ませるような魔法を使うのでしょう。
肉体を透明化してくるかもしれません。
何もいないと思っても、決して油断はしないように。
皆、準備はいいですね?
合図をしたら一斉に踏み込みます。
三、二、一……
――行きます!
ソヌリ騎士団です!
あなたは完全に包囲されています!
魔道具を捨てて、投降しなさい!
…………。
……あなたですね?
てっきり、隠れているものかと思いましたが……
正々堂々姿を現すとは、いい心がけです。
両手に何も持っていないことを示しなさい。
そのローブの中を見せて。
…………。
……副団長。
手配書よりも若い。
それに……強い圧力を感じます。
おそらく、魔力量は一級魔法士に相当するはず。
警戒するように。
何も持っていないようですね。
今、近づきます。
先ほども言った通り――
この建物は、既に騎士団が包囲しています。
抵抗しても無駄です。
よろしい。
では、手を差し出して。
この、耐魔の手枷を付けさせていただきます。
…………。
……どうしたのですか。
手を差し出しなさい。
……なんですか? その笑みは。
早くしなさい。
早く!
…………。
……今の外の声はなんですか。
副団長! 確認を――
……副団長?
目がうつろになっている……
まさか、これは……
さ、催眠魔法……?
ですが、どうやって……
魔力が発動した気配はなかった!
……足元?
何を……
……これは。
床に……魔法陣、が?
まさか……
建物の壁に刻まれていた模様は――!
この周辺全てに、既に魔法がかけられていたというのか……!?
き、危険です!
意識を強く持ってください! でないと――!
あ――
ぅ――
い、いけません。意識が……
な、何をする、つもりです、か……
ち、近づいてこないで……
私……
私は……