Track 5

■トラック5「食事――夜のおやつタイム」(咀嚼音)

//ボイス位置:7 【あやめ】 「調子はどうだい? 君が眷属になってそれなりの日数が経ったけれど……マッサージをして、お風呂にも入って。僕のそばにいるのもだいぶ慣れてきたんじゃないかな?」 【あやめ】 「っと、眷属くん。ちょっと顔を僕の方に向けてごらん」 //ボイス位置:1 【あやめ】 「……うん、とても元気そうだ。君が元気だと、僕もとても嬉しいよ」 【あやめ】 「ところで。これまでは君から血をもらうたびに、僕の力を分け与えてきたけれど……そろそろ自力で栄養を摂取してもいい頃合いだ」 【あやめ】 「眷属である君は、普通の人間のように飢えて死ぬことはまずない。それでもお腹は空くし、自然と食べ物を欲するようになるだろう」 //SE:腹の虫 //愉快な感じ+愛おしそうに、 【あやめ】 「ぷっ、あはは! 食事の話をした途端に、お腹の虫が鳴き出すなんて! ふふ、正直でよろしい。そんな素直な眷属くんが、僕は大好きだよ」 【あやめ】 「はは、恥ずかしがることはない。吸血鬼の僕も、眷属である君も、人間と同じく生き物であることに変わりはない。空腹を満たしたいと思うのは、ごく普通の、自然の理(ことわり)だよ」 【あやめ】 「そんなわけで、今から一緒に食事をしようじゃないか。あちらのテーブルに色々と用意していてね。さあ行こう」 //SE:歩く音 //ボイス位置:3 【あやめ】 「どうだい? 君が好きそうなもの、たくさん集めてみたよ」 【あやめ】 「ちょっとした昔馴染みのツテでね。買い出しとか準備とか、いろいろ手伝ってもらったんだ」 【あやめ】 「……っと、勘違いする前に言っておくが、昔馴染みと言っても恋仲ではないよ。長い間生きていると、それなりに知り合いもいてね」 【あやめ】 「僕は日の光を浴びても灰になったりしないが、死なないだけで決して好きではない」 【あやめ】 「で、世の中には僕と似たような存在もいて、そうしたご同輩に、時々こうやって頼らせてもらっているのさ」 【あやめ】 「それに吸血鬼とて食事はする。血液が一番のご馳走であることは事実だけども、それだけを食べなければいけない決まりはないからね」 【あやめ】 「世の中には様々な食べ物があって、それぞれに独特の味わいがある。もちろん人間の血液も千差万別だ。そうした違いを楽しむことが、長い生を楽しむちょっとしたコツなんだよ」 【あやめ】 「……おっと、長話が過ぎたかな。そろそろ食事を始めるとしよう。まずはトマトジュースから……」 【あやめ】 「……なんだいその目は? いかにも吸血鬼らしいものを出してきたな、みたいな顔をするんじゃない。別にいいだろ? 単純に味が好きなんだ」 【あやめ】 「いただきます」 //SE:トマトジュースを飲む //しみじみと美味しさを味わいながら、 【あやめ】 「……ん~っ、やっぱり美味いな、トマトジュースは……! みずみずしくて、口の中にトマトの酸味と香りが広がっていく……」 【あやめ】 「これじゃあすぐに飲み終わってしまいそうだ。ボトルがなくなる前に、ちゃんと食べ物も食べないとな」 //SE:ビニール袋をがさごそと漁る 【あやめ】 「じゃーん。野菜スティックだ。にんじんと大根、きゅうりが入っているよ」 【あやめ】 「けっこう好きなんだ、生野菜。最初は血に似てるトマトを食べたところから始まって……いつしか毎日、野菜をポリポリと食べるのが習慣になってきてね」 【あやめ】 「それに最近は、野菜スティックなる便利なものも出てきた! 本当にコンビニエンスストアというのは偉大な発明だよ。吸血鬼でも気軽に入れるんだからな」 【あやめ】 「ただ、コンビニの難点は……君みたいに美味しそうな人間がうようよといることだ。自制心のない吸血鬼だったら、つい誘惑に駆られて血を吸ってしまうだろう」 【あやめ】 「その点、僕は分別(ふんべつ)があるからね。見ず知らずの人を襲うなんてことは絶対にしない。高貴なる吸血鬼、伏見あやめの名にかけて誓うよ」 【あやめ】 「……と言いつつ、死にかけだった君の血を吸って眷属にしたりはするけれど。まあそれはほら、事情あってのことだし……君の命も助かったわけだし、ウィンウィンってことで……ね?」 【あやめ】 「さあ、気を取り直して、まずはにんじんからだ。味噌マヨネーズをつけて……」 //SE:にんじんスティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「ん~……このポリポリって食感、とても好きなんだ。味も好きだけど、火が通ってしなしなのやつはあまり好みじゃない。僕はこの食感込みでにんじんが好物でね」 【あやめ】 「もう一本いただこう。あーん……」 //SE:にんじんスティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「うん、美味しかった。次は大根を味わうとしよう。これも味噌マヨネーズで……」 //SE:大根スティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「ん、いける。にんじんよりも水分が多いわりに、なかなか歯応えがあって好みだな」 【あやめ】 「個人的には糠漬けなんかも好きだけど、こうやって生野菜として食べるのも悪くない。もう一本……」 //SE:大根スティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「ふう……さて、最後はきゅうりだ。これは味噌マヨネーズも美味いが、僕は塩を振った方が好みかな」 【あやめ】 「こうしてパラパラっと……ん、ちょうどいい量だ。いただきます」 //SE:きゅうりスティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「ふふふ。やっぱりきゅうりはこのシャキシャキ感がたまらないな。塩との相性も抜群だ」 【あやめ】 「もう一本食べることにしよう。あーん……」 //SE:きゅうりスティックを食べる音(10秒ほど) 【あやめ】 「ごちそうさまでした」 【あやめ】 「ん? あぁ、問題ないよ。ごはんの量はこれくらいがいいんだ」 【あやめ】 「今の君にも言えることだが、そもそも吸血鬼ってものは、人間とは身体の作りが異なるからね。これだけでもお腹は十分に満たされる」 【あやめ】 「それに、少しくらい空かしておいた方が、君の血を吸うときに都合が良いだろう?」 //楽し気に、 【あやめ】 「……ふふ、冗談さ。誰かと一緒に食べるご飯、久しぶりで美味しかったよ。ありがとう、眷属くん」