Track 6

■トラック6「睡眠――僕と一緒に寝ないか?」(添い寝)

//SE:ドアを開ける音 //ボイス位置:1 【あやめ】 「ただいま、眷属くん。お留守番は上手にできたかな?」 //心配そうに、 【あやめ】 「……どうしたんだい? ずいぶん怖い顔をして」 //探り探りに、 【あやめ】 「あー……もしかしてあれかな。君を眷属にしてから、一度も外に出していないこと……違うかい?」 【あやめ】 「確かに僕は、君をかごの中の鳥のように扱ってしまっていたからね。それについては申し訳なく思っているよ……だが、君もまだ本調子ではないし、主人としてはどうしても心配で……」 【あやめ】 「え、違う? それじゃあなぜ……?」 【あやめ】 「あ……もしかして、僕が日の光で死なないかと心配していたのかな? はぁ……自分の鈍(にぶ)さが嫌になるよ」 【あやめ】 「眷属くん、こっちにおいで」 //SE:抱き寄せる //ボイス位置:3(接近して) 【あやめ】 「心配をかけてしまったね。本当に、ごめんなさい」 【あやめ】 「僕なら大丈夫だよ。この前も言っただろう? 太陽は得意じゃないだけで、日の光を浴びても灰になったりしないって」 //優しくも強い感じで、 【あやめ】 「僕は君を残して、どこかに消え去ったりはしないよ。約束する」 //ボイス位置:1(元の位置) 【あやめ】 「あと、ずっと部屋に閉じ込めていることも申し訳ないと思っている」 【あやめ】 「ただ断っておきたいんだけど、別に君を監禁したかったわけじゃない」 【あやめ】 「今は冬だろう? これだけ寒いと、どうしても人間の気分は暗くなりがちだ。そんな人々の陰気(いんき)を狙って悪さをする奴が多くてね」 【あやめ】 「最近は眷属くんとずっと一緒にいて、しばらく外出していなかっただろ? だから今日は、久々に夜の街に繰り出してみたんだ」 【あやめ】 「そしたら案の定、そういう連中が人間のフリをして堂々と歩いていてね……。僕ひとりなら平気だけれど、君がいたらと思うとさすがに震えたよ」 【あやめ】 「君に何かあったら、僕は悔やんでも悔やみ切れない。だから君には黙って外出したわけだ」 //申し訳なさそうに、 【あやめ】 「でも……結果的に心配をかけてしまったね。本当に、申し訳ないと思っている」 //甘えるような感じで、 【あやめ】 「……許してくれるのかい? ふふ……眷属くんは優しいね、ありがとう。それじゃあ、そんな優しい眷属くんに、ひとつ甘えてもいいかな?」 【あやめ】 「さっきも言ったように、今は外がとても危ない。だから神経を張り巡らせていたわけだけど、おかげでとても疲れたんだ」 【あやめ】 「だから今日は、僕と一緒の布団で寝てほしいな」 【あやめ】 「断っておくけど、君に何かしようとか、寝ている最中にこっそり血を吸おうだとか、そんなことは考えていないよ」 【あやめ】 「ただ、僕と添い寝してほしいんだ……一緒の布団で、君と一緒に眠りに落ちたい。ただそれだけさ」 //嬉しそうに、 【あやめ】 「……ありがとう。それじゃ、寝間着に着替えてくるよ。ちょっと待っていてくれ」 //SE:歩いていく音 //SE:衣擦れ音(遠くで、10秒ほど) //SE:戻ってくる音 //恥ずかしそうに、 【あやめ】 「……ど、どうかな? 流石に寝間着を見せるのは初めてだからね。百歳をゆうに超えている吸血鬼が、年甲斐もない恰好をしている自覚はあるけれど……どう、だろう?」 //照れた感じで、 【あやめ】 「ボーッとこっちを見つめているけど……そ、そんなに変かい?」 //愛おしそうに、 【あやめ】 「もしかして……見とれているの? あはは……君は本当に可愛いなぁ。言葉より先に、思っていることが顔に出てしまうのだから」 【あやめ】 「でも、見とれてくれるのはありがたいが……僕だって女なんだぞ? こういうときは、ちゃんと言葉で可愛いって言って欲しいんだ。いい機会だから、是非とも覚えてくれたまえ」 【あやめ】 「じゃあ、僕の部屋に行こうか」 【あやめ】 「体が冷えないうちに布団に入ろう。僕が明かりを消すから、君は先に布団に入っていてくれ。いいかい?」 //愛おしそうに、 【あやめ】 「ん、いい子だ。なでなで……」 //SE:歩く音 //SE:布団に入る音 //ボイス位置:15 【あやめ】 「では、明かりを消すよ」 //SE:明かりを消す音 【あやめ】 「それじゃあ、僕も失礼して……」 //SE:布団に入る音 //気持ち良さそうに、 //ボイス位置:7 【あやめ】 「ふぅ……ふふ、あったかい。この時期は布団に入っても、温もりを感じるまで少しかかるが……眷属くんがいるおかげで、最初からポカポカだ」 【あやめ】 「うん? じっと見つめてどうしたんだい?」 【あやめ】 「……え? あ、赤くなってる? 僕が?」 //恥ずかしそうに、 【あやめ】 「そ、そうか……いやなに、照れているわけではないんだが……」 【あやめ】 「いざこうやって、君と添い寝をしてみると、なんだかこそばゆくてね……」 【あやめ】 「おっと。だからといって、別々に寝ようなんて言わないでくれよ? 主人がこうして頼んでいるのだから、今日は僕が目覚めるまで一緒にいておくれ」 【あやめ】 「さぁ、寝よう。もう少しで朝日が昇ってくる。僕は大丈夫だけど、眷属になったばかりの君には少々毒だからね」 【あやめ】 「毛布を被って。目を閉じて、また次の夜が来るまで眠ろう」 //SE:毛布を深く被る //抱き寄せて耳元で //ボイス位置:7(更に近づいて) 【あやめ】 「おやすみ、眷属くん」 //20秒ほど無音 //60秒ほど、 //ボイス位置:7(元に戻って) 【あやめ】 「(寝息)」 【あやめ】 「……寝てくれたか? ……よかった」 【あやめ】 「(深呼吸、1回)」 //落ち着いた感じで、 【あやめ】 「これはただの独り言だから、もし起きていても聞き流してほしい」 【あやめ】 「僕には……吸血鬼になる前の記憶がないんだ。元は人間だったかもしれないし、あるいは、最初から吸血鬼だったのかもしれない」 //楽しい思い出を振り返る感じで、 【あやめ】 「いずれにせよ、僕は物心ついた頃には既に吸血鬼だった。なぜか太陽の下でも平気で……昔は人間と同じように、晴れた日に外を散歩するのがとても好きだった」 【あやめ】 「そんな時、たまたま出会った吸血鬼の女の子がいた」 【あやめ】 「もうずいぶん昔のことで、その子の名前も何だったか覚えていないんだが、彼女とは不思議と馬が合って、夜な夜な一緒に遊んでいたんだ」 //淡々と、 【あやめ】 「けれどある日、すっかり時間を忘れて、二人で朝を迎えてしまって……彼女の身体は突然燃え上がり、あっという間に灰になってしまった」 【あやめ】 「それ以来、僕は日の光の当たる場所には、めったに行かなくなったんだ」 //物悲しそうに、 【あやめ】 「僕は……怖かった。太陽がとても恐ろしかった。どうして自分は、太陽の下にいても平気なのだろう? 昨日も今日も平気だった、明日もきっと……だけど、ある日突然そうじゃなくなったら? 明日目が覚めて、窓から差し込む光を浴びた途端、体が灰になってしまったら? ……そう思うと、怖くて眠れなくなった」 【あやめ】 「きっと君も、あの時の僕と同じような思いで、僕の帰りを待っていたんだろう? だからあんなにも不安そうな顔で……本当に、すまなかった」 //落ち着いた感じで、 【あやめ】 「でも、今はもう大丈夫だ。僕には君がいるし、君には僕がいる。だから僕らは安心して眠ることができる」 //愛おしそうに、 【あやめ】 「共に眠ろう。そして共に、次の夜を迎えよう。何も心配することはない。僕たちはもう離れられない。ずっと一緒だよ……ふふっ」 //ささやきで、 【あやめ】 「……おやすみ、眷属くん……また明日……」 //2分ほど、 【あやめ】 「(寝息)」