トラック5:『耳かき、左耳、月明かり』
;ボイス位置:3
【真夜】
「じゃあ、ぼちぼち反対側を掃除しますか」
【真夜】
「動かしますね。どっこらせっと」
;SE:頭を動かす音
;SE:顔に手でぴたっと触れる音
;ボイス位置:7
【真夜】
「ふふ。あったかい」
【真夜】
「お兄さんも生きた人間なんすねぇ……」
;ボイス位置:7 囁き
【真夜】
「美味しそう」
;ボイス位置:7 普段の感じで
【真夜】
「ははっ、冗談っすよ。あまりにも無警戒すぎるからからかってみただけっす。食べたりしませんて」
【真夜】
「ほら、肩の力を抜いてください。すー、はー。すー、はー」
【真夜】
「じゃあ、耳かき、始めますね」
;SE:耳かきの音
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
【真夜】
「うん、蒸れてすくいやすくなってますね」
【真夜】
「さっきよりも早く終わっちゃいそうなので、もう少しゆっくりやりましょうか」
;ボイス位置:7 囁き
【真夜】
「お兄さんも、じっくり楽しみたいでしょう?」
;SE:耳かきの音 ゆっくりめ
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
;ボイス位置:7 普段の感じで
【真夜】
「お兄さんは、月が綺麗って言われて何を思い浮かべますか」
【真夜】
「やっぱり、愛の告白とかになっちゃいますよね」
【真夜】
「でも、考えてみて欲しいんすよ」
【真夜】
「月ってもともと綺麗じゃないっすか」
【真夜】
「なのに、同意を求めただけで愛の告白になるって、滅茶苦茶不便じゃないっすか」
【真夜】
「変えたいですけど、もう大衆がそうだと認識したものはどうしようもないんすよね。人間はちっぽけだから」
【真夜】
「はぁ。世界を変える力が欲しいっすわ」
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
【真夜】
「今度は内側の方をぞりぞりしていきましょう」
【真夜】
「こっちもゆっくり目にね」
;SE:耳かきの音 ゆっくりめ
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
【真夜】
「耳垢が月明かりに照らされて綺麗……でもないっすね。耳垢は耳垢でした」
【真夜】
「まあ、好きな人からもらう塩は甘いみたいな言葉もありますし、綺麗だと思うようになってしまう事もあるかもしれませんが」
【真夜】
「そう考えると、恋は盲目というのもあながち間違いではないんでしょうね」
【真夜】
「多分、語られていないだけで、盲目以外にも色々な症状が出ているにちげぇねぇっすわ」
【真夜】
「ボクはまだ実感した事が無いっすけどね」
【真夜】
「人が人を愛するという事が、ボクにはまだ理解できないんすよ」
【真夜】
「恋愛系の創作物を摂取するのは好きなんすけどね」
【真夜】
「だから、今お兄さんの耳かきをしているのは、お礼であると同時に、実験でもあるという事なんすよ」
【真夜】
「知り合いなら尾を引くし、見ず知らずの人間だとどうなるか分からない」
【真夜】
「その点、お兄さんの事は前からよく見ていたので、大丈夫そうだなと」
【真夜】
「お兄さんもボクの事、コンビニで何回か見たりしてたでしょ? 気づいてなかったかもしれないっすけどね」
【真夜】
「まあ、お兄さんさえよければ、この夜の間は付き合ってください」
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
【真夜】
「んー、耳垢だいぶ取れてきましたね」
【真夜】
「月明かり程度じゃ耳の奥までは見れないんで、まだ残っているかわかんないすけど……」
;ボイス位置:7 囁き
【真夜】
「お兄さんがもうちょっとやって欲しそうだから、サービス、しちゃいますね」
;SE:耳かきの音
【真夜】
「(一分ほど息遣い)」
;ボイス位置:7 普段の感じで
【真夜】
「よし。こんなもんすかね」
【真夜】
「お疲れさまでした」