Track 3

いつだって、お姉ちゃんなんだから

「真優」: 真衣?何かして欲しいことない? 「真衣」: うぇ?あ、改まって言われるとな~。そんな大怪我わけじゃないし。 「真優」: いいから。 「真衣」: え?何で怒られてるの? 「真優」: す、好きな相手のために、何かしてあげたいってだけ。 「真衣」: おぁははっ、今日はもう、今まで満足だけど。 「真優」: 私はまだ出来てない。 「真衣」: んじゃ、部屋の片付けとか。 「真優」: んー、そういうのじゃなくて。 「真衣」: あ、うん、なんかごめん。でも、何かして欲しいとかじゃなくてさ。なんかこう、一緒にいてくれるだけでいいというか。んー、どう言ったらいいのかな。 「真優」: はっきりしなさいよ、らしくないわね。 「真衣」: いや、なんていうか、こういう感じ慣れなくて。 「真優」: 一緒にはいてあげるし。ほら、傍に座って、足見せて。取り敢えずは、絆創膏を替えてあげるから。 「真衣」: ん、んじゃ、お願い。 「真優」: 。。。んっ? 「真衣」: やっぱ、自分でやろうか? 「真優」: 不器用とか言わないでよね。 「真衣」: 言ってないよ。 「真優」: もうちょっと待って。 「真衣」: ん。 (いつも一生懸命で、決めたことが負けないっていうか、ちゃんと最後までやり通すって感じ。そういうところ、信じられるーって思うなぁ~。) 「真優」: ん。。。 (いつもこうやって私がやること、やりたいことの背中押してくれる、傍で支えてくれる。でも、たまには支え合う感じになったっていいんじゃない?) ん、ほら、できた! 「真衣」: ん、うん!ありがとう!バッチシだね。  「真優」: 変な感じしない?大丈夫? 「真衣」: 平気平気。ちょっと落ち着かないけど、普通に歩く分には、何も問題ないし。あっ、でも真優が甲斐甲斐しくしてるなら、たまには怪我するのも悪くないかな。 「真優」: 止めてよ、そういう不謹慎なこと言うの。 「真衣」: ほーい!気を付けます。 「真優」: まあ、こういう時ぐらい、大人しくしてなさいよ。ちゃんと付いててあげるから。 「真衣」: 何か張り切ってるね。 「真優」: だって真衣は、いつも私のこと考えてくれてるのに。 「真衣」: あたしがしたいだけだよ。真優だって、あたしのこと考えてくれてるし。 「真優」: そんなのは当然のことでしょう? 「真衣」: 優しい~。 「真優」: 茶化さないでよ。 「真衣」: 茶化してないよ。頼れるなって思ってるだけ。 「真優」: それなら、あんたの方が色々要領良く出来るじゃない。 「真衣」: 要領いいかな。自分では普通かなって思ってたけど。 「真優」: なにそれ?嫌味? 「真衣」: んー、なんていうかさ、皆が無駄だって思ってやらないことを、何も考えずにやってただけっ、みたいな。ほら、あたし能天気だから、気付かず全部やっちゃうっていうかさ。 「真優」: でもそういうの、結果的に無駄にならなかったでしょう? 「真衣」: えへっ、そうかも。真優のためになることだったら、嬉しいなって思うけど。 「真優」: そうね。真衣が見えててくれるから、勉強だって部活だって頑張れるし。そんな私を助かってくれる真衣だから、その。。。いいの、好きなの。だから、無駄とか意味がどうとか、難しく考えなくてもいいのよ。私たちはそれだけでいいの。 「真衣」: そう。。。かな。 「真優」: あんたは本当はちょっとアホなんだから、変に託けなくてもいいのっ。 「真衣」: ふぇ?ひどいな。 「真優」: ちょっとって言ってるじゃない。 「真衣」: そこは優しさ控え目なんだ。 「真優」: ワガママね。 「真衣」: 真優の妹だもので。 「真優」: ん、別にいいけど。 「真衣」: じゃあ、ワガママ序でに、しばらくこうしててもらおうかな~っと。 「真優」: んっ、あっ、ちょっ、ちょっと、ん、急に何を、何で覆い被さってくるのよ。 「真衣」: お体借りま~す。 「真優」: あ、ちょっとの間だけよ。 「真衣」: えへへ~っ。 「真優」: もう、緩んじゃって。いつものできる真衣はどこに行ったのよ? 「真衣」: えへへ~、今はお休み。あたしに甘えられるの、嫌じゃないでしょう。 「真優」: 別に、まあ、しょうがないからっていうだけで。これで可愛くなかったら、許さないんだからね。 「真衣」: えへへ~、やっぱこうでないとな~。 「真優」: こうって? 「真衣」: ほら、姉妹っていう事実だけで、何かもう勝った気にしない? 「真優」: 何に勝つのよ。 「真衣」: 絶対誰にも真似できないし、邪魔されないし。 「真優」: そんなこと気にしなくてもいいのに。 「真衣」: うぇ?んじゃ、もし姉妹じゃなかったら、どうするのさ。 「真優」: ん。。。 「真衣」: んっ、あっ、ちょっと、そんな真顔になるほどなの?大丈夫だよ? 「真優」: そんなの知らない、想像付かない、したくない。 「真衣」: うんうん、分かってる分かってる。ん、本当大丈夫だって、ずっと傍にいるし、あ、ほら、生まれ変わったりとかしても、絶対真優の次に生まれてくるから。 「真優」: なにそれ。 「真衣」: 何だろう。 「真優」: 何でもいいけど。絶対よ。 「真衣」: うん。ん、あー、何かお腹空いたね。 「真優」: うふっ、そうね。それじゃ、たまには私は作るわ、夕飯。 「真衣」: へっ?どうしちゃったの? 「真優」: 煩いわね。今日はお父さんもお母さんも遅いって言ってたし、ちょうどいいでしょう? 「真衣」: そ、そう? 「真優」: 部屋の片づけ手伝ってくれたお礼もあるし、私も何か、してあげたいし。 「真衣」: あ、なんだ。それが本音か。素直じゃないな、もうもう~。 「真優」: 別に素直じゃなくないし。 「真衣」: えへへ~っ、この勢いでたまにはもっと素直になってみるとか。 「真優」: だから、普段素直じゃないみたいに言わないでよ。 「真衣」: うぇ~? 「真優」: ちょ、ちょっとだけでしょう?むしろ、真衣が素直過ぎなのよ。 「真衣」: そうかな。 「真優」: そうよ。 「真衣」: じゃ、素直な感じでどうぞ! 「真優」: ええ? いっ、いつもありがとう、真衣!本当に助かってるわ!私も、嬉しい~! 「真衣」: おぅ!いいねいいね!素敵なお姉さまって感じだね!これはこれで可愛いよ~! 「真優」: うふふふ、ふふ、ダメ無理。。。 「真衣」: ふぇ?一笑? 「真優」: だってあんたの前で、急にこんな態度、変な感じがするから。 「真衣」: まあ、そうかもね。学校で猫被ってる時とはあんま変わらない感じもするし。 「真優」: もう、せっかくやったのに。 「真衣」: えへへっ、ごめんごめん。 「真優」: じゃ今度は、真衣が素直じゃない感じにやってみさいよ。 「真衣」: えっ?出来るかな。 「真優」: いいから、やるの。 「真衣」: うぇ、えっと、ま、真優のことなんか、そんなに取り立てて尊敬してないだからね~! 「真優」: 何ですって? 「真衣」: ふぇっ、ごめんっ、嘘だよっ!なんでなんでっ。 「真優」: ん、なんか、いやだったのよ。 「真衣」: あたしだって、いやだよ~。 「真優」: ごめん。 「真衣」: ううん。そんじゃ、ご飯一緒に作ろうか。 「真優」: いいわよ。私一人でできるから。 「真衣」: そう?まあ、最近お弁当作ったりしてるから、前よりは上達してるもんね。 「真優」: そういうこと。 「真衣」: じゃ、見守ってるだけにする。 「真優」: んもう。。。 「真衣」: んと、は~、真優がキッチンにいて、しかも包丁使ってる。 「真優」: んっ、何を、そんなに見られてるとやりづらいだけど。 「真衣」: でも心配だし。 「真優」: 子供じゃないだから大丈夫よ。 「真衣」: そう?じゃ、向こう行ってるね。 「真優」: そうしてちょうだい。まったく。。。 (私だってこれくらい出来るんだから、ちょっと信用しなさいって、もう。。。まぁっ、そういう私のこと大事に考えてくれるのがいいところっていうか。たまには、自分のことも考えなさいよっていうか、はぁもう。。。) あっ、痛っ。 「真衣」: あっ。ああ!ほらもう、大丈夫?はー、指切っちゃった。 「真優」: ん、ちょっとだけ。 「真衣」: もう、手は大事にしなきゃ。 「真優」: 利き手じゃないから大丈夫よ。大体、足怪我してるあんたに言われたくないし。 「真衣」: うぇ、おっしゃる通りで。 「真優」: は~、もう、こんなことで。。。 「真衣」: まあまあ、ちょっと失敗したくらい、気にしない気にしない。段々慣れていけばいいんだし。 「真優」: でも、これくらいは出来ないと。 「真衣」: 二人でいる時はポンコツな時があってもいいや。 「真優」: ポンコツ。。。 「真衣」: 最初から何でも出来た当たり前なんじゃなくてさ。真優がちゃんと頑張ってるの、いつも見てて知ってるから。まあ、皆だってきっとそうだと思うけどね。 「真優」: そう、かしら。 「真衣」: お姉ちゃんっぽくしてくれるのは嬉しいけど、頑張り過ぎは嫌だからね。 「真優」: うん。 「真衣」: えへへへっ、まぁでも、本当にちょっと切っただけだし、これなら消毒して絆創膏張って置けば大丈夫だね。 じょーん!今日は大活躍の絆創膏! 「真優」: 舐めたりしないね。 「真衣」: ふぇ、織部先輩じゃないんだし。 「真優」: べ、別に影響されていたんじゃないわよ。 「真衣」: いや、そこまでは言ってないよ。 「真優」: 分かってるし。 「真衣」: あっ、足、舐めてみる? 「真優」: ソ、ソンナコト、スルワケナイデショッ! 「真衣」: あははっ、あぁだよね~。 「真優」: マッタクッ。 「真衣」: ん、まあ、確かに織部先輩が卒業しちゃって寂しいのは分かるけど。 「真優」: そんなことないわよ。会う頻度が下がって助かってるわ。 「真衣」: 今でも出没するのは謎だけだね。 「真優」: そうなのよ、本当。 「真衣」: アリスちゃんの様子とかニャイン(LINE)で伝えてるからかな。 「真優」: あんたのせいじゃない。 「真衣」: でも大丈夫!あたしはどこにも行かないよ!行っても絶対戻ってくるし。 「真優」: そういうアピール別にいいから。分かってるから。 「真衣」: そう? 「真優」: そうよ。 「真衣」: そっか。あっ、指はこれで平気かな。 「真優」: うん。 「真衣」: それじゃ、続きは私がやるよ。 「真優」: いい。私がやるの。 「真衣」: ん。。。それなら、やっぱり一緒にやろうか。 「真優」: んでも。。。 「真衣」: いいからいいから。はい、じゃこうやって持って。左手は握り過ぎないでね。ゆっくりやってみよう。 「真優」: それくらい分かってる。ていうか、そんなにくっついたらやりにくいでしょう。なんか、ドキドキするし。 「真衣」: 大丈夫。そのドキドキは安心するやつだから。 「真優」: は?どういうことよ。 「真衣」: えへへ~、こうやって後ろから支えるみたいにやりそう感じ。ちょっとやってみたかったんだ~。ほら、手取り足取り的な。今なら自然な流れで出来ると思って。 「真優」: 意味分かんないわよ。 それより、ちょっと背、伸びた? 「真衣」: うぇ?そっかな。ん、そうかも。よくそんな微妙なの分かるね。 「真優」: 何か生意気。 「真衣」: へ~?そんなこと言われても。。。 「真優」: あ、よそ見しないでよ。 「真衣」: 大丈夫大丈夫。真優のこと見てる~。 「真優」: そういう意味じゃなくて。 「真衣」: うん!えへへ、ほら、上手く出来た。 「真優」: ん、ありがとう。 「真衣」: えへへ、織部先輩ほどじゃないかもだけど、あたしもなかなかでしょう。 「真優」: もう、だからなんで引き合いに出すのよ。 「真衣」: ふぇ?別に、嫉妬とかじゃないし。 「真優」: やめてよ、もう。全然そういうつもりじゃないから。 「真衣」: あっ、もしかして真優もお姉ちゃんが欲しいとか? 「真優」: は? 「真衣」: 何なら私と変わってみる?うんうん、入れ替えごっことか。 「真優」: 冗談。今のままでいいわよ。 「真衣」: あれ、そう? 「真優」: 今のままがいいのよ。私がお姉ちゃんで、真衣が妹、それがいいの。 「真衣」: そっか、今のままか。 「真優」: 今のままじゃ、いや? 「真衣」: 今も幸せだけど、それをもっと良く知って行きたいっていうかさ。んー、何て言ったらいいんだろう、んー。 「真優」: 何か不満でもある? 「真衣」: ううん、そういうわけじゃないよ。 「真優」: じゃ何? 「真衣」: 今のままでもいい感じだけど、もっと良くなったらもっといい感じになるなって思って。あぁほら、あたしは前に向かって走りたい派だしさ。 「真優」: なにそれ、あとなに派があるのよ。 「真衣」: ん、なんだろう。 「真優」: はー、ほら、いいから続き、やりましょう。くっついてるだけになっちゃう。 「真衣」: うん、そうだね、お腹減った!