Track 6

記事

あ。おはようございます。勇者様。 ……って。ん……? どう、したんですか?そんなに険しい顔して。 そういえば、こんな朝早くに図書館へ来るのも、珍しいですよね。 なにか、あったんですか? いえ。今日の新聞はまだ、読んでません。 あ、分かりました。読めばいいんですね。 ふむ……。 ……。 なん、ですか?これ……。 「石化病の原因は、勇者にかけられた魔王の呪いである」って。 こんなデタラメな記事、いったい誰が書いたんですか。 ええ。デタラメですよ。 「調査の結果」って書いてあるだけで、どのような調査をしたのかとか、 具体的なことは何一つ書かれていませんし。 どう見たって適当にでっち上げた記事です。 愉快犯……ですかね?だとしたらひどすぎますよ。 まるでこんな、 勇者をこの国から排除しない限り、石化病は治らないかのような書き方。 ……本当に。ひどい、記事です。 ……。 ……えっと、頭が、ぐちゃぐちゃで、うまくまとまらないです。 どうすればいいんでしょう。こういう時。 ……そうだ、あれです。新聞社に抗議しに行きましょう。勇者様。 こんなの名誉棄損に他なりませんから。 撤回の記事を書かせるんです。それで何とか……。 ……は? そんなにたくさんのところから、この記事が出てるんですか? 新聞だけじゃなく、雑誌や、町の掲示にも…… それは。いったい。どうゆう……。 ……。 い……。いや、大丈夫です。勇者様。 手遅れなんかじゃありません。 こんな記事が出回った程度で、国民は勇者様を迫害したりしませんよ。 あなたはこの国の英雄、なんですし。 そもそも、こんな適当な記事を信じるような人、誰もいませんって。 だから、大丈夫。だいじょうぶ……。たぶん……。 ……。 あの、それじゃあ、とりあえず。 一番大きな新聞社に、話をしに行きましょう。 ……はい。私も一緒に、行きますから。 大丈夫ですって。きっと……。 ははは……(力なく笑う)