「暮らし。」
美味なる臭いがするな……ソラ、お主今日は何を食べておるのじゃ?
(少年「今日は焼き魚です」)
焼き魚か、ふむ……食事をせぬわらわには塩梅がわからんが、いつも綺麗に焼けておるな。
(少年「空狐さまの分もありますよ!」)
(仕方なさそうに言うが、ソラの料理は美味しいので食べたい)
ぬ……わらわの分もあるとは……用意のよいことじゃ……。
しかしソラが"わざわざ"わらわのために準備したのなら仕方あるまい、いただくとしよう。
はむ……ん……ん…………ごくん……。
ほう、悪くない。
やはりお主は料理が得意なようじゃ……。
はむ……ん…………ん…………
(食べ終わって)
ふぅ……美味であったぞ、ソラ。
褒美に、何か願い事を聞いてやろう、何がよいか?
(少年「あ……では、聞きたいのですが……空狐さまは本当にあやかしさまなのですか?」)
ふふ……なんじゃ今更になって……それにわらわのこととは……。
まぁよかろう……最初にも言った通りじゃ、わらわはあやかしじゃよ。
(少年「でも……普通のあやかしさまでは無いような……」)
ふむ……まぁそれはその通りかもしれぬな、あやかしにも位がある。
わらわはその中で”空狐”という存在なのじゃ。
それがどんな存在なのかは……いつか他のあやかしに会った時にでも、聞いて見ると良いじゃろう。
(自慢げに)
それに、普通のあやかしではないことくらい、わらわのこの耳と尻尾の毛並みを見ればわかるであろう?
ふふっ……どうじゃ、美しいじゃろ。
(少年「はいっ、とても綺麗です!」)
ふふ……素直なのは良い心がけじゃ。
ではせっかくじゃ、少し触らせてやろう、特別じゃぞ。
(少年モフる)
どうじゃ、さらさらじゃろう……毎日しっかりと手入れしておるからの……。
ん……お主……撫でるのが上手いの……心地よい加減じゃ。
うむ……ん…………しばしそのまま撫でておれ……。
ん…………ん…………んぅ…………ん…………んっ…………。
すぅ…………ん…………ん…………んぅ…………ん…………ん…………。
ふむ……お主には撫でる才能があるの……。
これからは毎日わらわの尻尾の手入れもするがよい。
ふふ、光栄に思えよ?
そういえばお主、この後は何をするつもりじゃ?
(少年「食材を取りに出かけてくる予定です」)
猟か、十分に気をつけるのじゃぞ。
しかし、たくましくなったな……背ももう抜かされてしまいそうなほどじゃ。
お主を拾ったときは豆粒のように小さかったものじゃがなぁ……。
(少年「そんなに小さくはありません!」)
(少し寂しそうに)
ふふっ……冗談じゃ……。
じゃがやはり、人の子の時は早いものじゃな…………。
いや、何でもない……気にするな。
気をつけて行ってまいれ。