「数えちゃうわ!!」(ラーメン数え)
「……ふぅ。それじゃあ先生? 寝かし付け、始めるわ」
「ふふっ、油断しているとあっという間に朝まで夢の中で過ごすことになるから覚悟して頂戴♪」
「さて……寝かし付けといえば……まずはこれからかしら」
「ふふっ、気付いた時には朝でしたみたいに、これが最初で最後の寝かし付けになっちゃうかもしれないけれど♪」
「先生? それじゃあ……灯りをけして……目と閉じて」
「えっ、目を閉じたら灯りを消して目を閉じたら私の顔が見えない、ですって!? な、なななにを言うのよ、全く!」
「ほ、ほら、冗談はさておき、目を閉じないと眠れないわよ、先生。もしかしたら先生なら……目を開けたまま眠れるのかもしれないけど……」
「……けど、想像したら怖いわね。目を開けたまま寝るのって……」
「ほら、目、閉じなさい、先生。次に目を開けたときには朝になってるかもしれないけど♪」
「さあ、先生? 寝かし付けを始めるわ」
「……とその前に、私もたまに眠れないときに流しておくんだけど……このBGMを……」
「そうそう、大音量でデスメタルを流しながら安眠……って違うわよ! そんなの流したら眠れないじゃないの! 一部眠れそうな子もいるけど!」
「えーっと……これこれ。音は小さめにしておくから、うるさくはないと思うけど……」
「何となく落ち着くのよね、この音。聴いてると私まで眠く……」
「……なったらいけないわね!! 少なくとも先生を寝かし付けるまでは!」
「さて、今度こそ先生を寝かし付けるわよ? 準備は良いわね?」
「それじゃあまずは……ふふっ、やっぱり寝かし付けといえば羊を数えるやつよね!」
「ふふんっ♪ 先生は知らないでしょうけど、どこかの国の言葉で「羊」と「睡眠」の単語が似てるから、っていうのが由来らしいわ」
「……し、知ってた、ですって……? そ、そうよね。先生だもの、これくらい知ってなきゃおかしいわよね」
「……さて、それじゃあ気を取り直して、羊を数えてて先生を夢の中へー……」
「……」
「……先生? 折角私の寝かし付けなのに羊を数えるっていうのも味気ないと思うの」
「……」
「……羊……ひつじ……棺!! アウトローらしく棺を数えれば……」
「そ、それじゃあ永眠してしまいそう、ですって? た、たしかにそうね……」
「となると……何か……何かこう、先生と私が好きそうなものとか……」
「……お宝、とかどうかしら? お宝、私も先生も好きそうだけど……」
「……さ、さすがにまばゆさで目が覚めちゃうわね、きっと。私も少しテンションが上がっちゃいそうだし……」
「そうすると……他には……うーん……他に好きなもの……好きなもの……」
「羊……ひつじ……羊の鳴き声はめー……めー……めー……めーん!! ラーメン!!」
「決まったわ、先生! ラーメンを数えてあげる♪ 私も好きだし先生も好きだし、食べたら何だか眠くなるしぴったりだと思うわ」
「さっきちょっとだけ屋台を襲撃する話もしたし、これも何かの縁よね、うんうん」
「ふふっ、寝る前にラーメンのことを考えるだけでもアウトローなのに……数えながら寝ちゃうなんて……アウトローも真っ青なくらいにアウトローね、先生ってば」
「ほら、それじゃあ……目を閉じて頂戴、先生? 先生のことだから目を開けながらでも眠れるとか言いそうだけど……」
「……って、自分で言っておいてなんだけど……先生が目を開けながら寝ているのを想像したら面白いけど……だ、大分怖いわ……」
「ほ、ほら、だからというわけじゃないけど……先生? ちゃんと目を閉じて?」
「この私に寝かし付けをして貰えるんだから、目を閉じるのなんて当然よ♪」
「ほら、先生♪ 目、閉じて♪」
「ふふっ、そんなにすぐに目を閉じて。先生はそんなに私に寝かし付け、されたかったのね?」
「えっ、あ、当たり前ですって? そ、そそそ、そう思うのは当然だけど……そんな風に素直に言われると……ちょっとこう……て、照れるかも……」
「さ、さあ先生! 早速先生を安眠地獄に誘ってあげるわ!! 覚悟なさい♪」
「……ほーら、せ・ん・せ?」
「ラーメンが1杯」
「ラーメンが2杯」
「ラーメンが3杯」
「ラーメンが4杯」
「ラーメンが5杯」
「ラーメンが6杯」
「ふふっ、テーブルがみるみるうちにラーメンで埋まっていくわよ、先生♪」
「ラーメンが7杯」
「ラーメンが8杯」
「ラーメンが9杯」
「ラーメンが10杯」
「ラーメンが11杯」
「こんなにラーメンがあったら……テンションが上がっちゃうわね、先生♪」
「ラーメンが12杯」
「ラーメンが13杯」
「ラーメンが14杯」
「ラーメンが15杯」
「ラーメンが16杯」
「ラーメンが17杯」
「ラーメンが18杯」
「ラーメンが19杯」
「ラーメンが20杯」
「ほら、20杯もラーメンがきちゃった♪ 心はもうラーメン屋さんね♪」
「ラーメンが21杯」
「ラーメンが22杯」
「ラーメンが23杯」
「ラーメンが24杯」
「ラーメンが25杯」
「ラーメンが26杯」
「ラーメンが27杯」
「先生? 目の前に並んでるラーメンは何味かしら? しょうゆ? 味噌? 塩?」
「そ・れ・と・も……と・ん・こ・つ?」
「ラーメンが28杯」
「ラーメンが29杯」
「ラーメンが30杯」
「ラーメンが31杯」
「ラーメンが32杯」
「ラーメンが33杯」
「ラーメンが34杯」
「ラーメンが35杯」
「オーソドックスな味も好きだけど……こってり濃厚な鶏白湯、出汁の美味しさが波のように押し寄せる貝出汁、野菜も美味しいちゃんぽん麺も捨てがたいわ♪」
「それとも……蕎麦屋さんのちゅ・う・か・そ・ば?」
「ラーメンが36杯」
「ラーメンが37杯」
「ラーメンが38杯」
「ラーメンが39杯」
「ラーメンが40杯」
「ラーメンが41杯」
「ラーメンが42杯」
「ラーメンが43杯」
「ラーメンが44杯」
「ラーメンが45杯」
「ふふっ、先生? 思う存分好きなラーメン、思い浮かべちゃって良いのよ? トッピングはどうするかしら?」
「やっぱり定番のチャーシュー? 煮卵? メンマ? 白髪ねぎも良いわよね? それとも……にんにく、入れちゃう?」
「ラーメンが46杯」
「ラーメンが47杯」
「ラーメンが48杯」
「ラーメンが49杯」
「ラーメンが50杯」
「ラーメンが51杯」
「ラーメンが52杯」
「ラーメンが53杯」
「ふふっ、先生ったら……♪ こんなにラーメンに囲まれて……そこはかとなくハードボイルドなんだから♪」
「こんなにたくさんラーメンを目の前に並べられる大人なんて、そうそういないわよ♪」
「さすが先生♪ アウトローね♪」
「ラーメンが54杯」
「ラーメンが55杯」
「ラーメンが56杯」
「ラーメンが57杯」
「ラーメンが58杯」
「ラーメンが59杯」
「ラーメンが60杯」
「ラーメンが61杯」
「ラーメンが62杯」
「ふふっ、先生? まずはレンゲでスープを味わっちゃう? ラーメンはスープが命っていうわよね」
「目を閉じて……レンゲに入ったスープの匂いを嗅いでから……スープを口の中にずずーっと……」
「ああ……口の中に広がるスープの味わい……たまらないわ」
「ラーメンが63杯」
「ラーメンが64杯」
「ラーメンが65杯」
「ラーメンが66杯」
「ラーメンが67杯」
「ラーメンが68杯」
「ラーメンが69杯」
「ラーメンが70杯」
「ラーメンが71杯」
「そ・れ・と・も……ハードボイルドな先生のことだから……スープには目もくれずに麺をすすっちゃう?」
「もっともっとアウトローに……最初にチャーシューにかぶりついちゃう? 煮卵をパクっと口いっぱいに頬張っちゃう?」
「先生のことだから……スープや麺に脇目もふらずにナルトを最初に食べちゃったり、とかかしら?」
「ラーメンが72杯」
「ラーメンが73杯」
「ラーメンが74杯」
「ラーメンが75杯」
「ラーメンが76杯」
「ラーメンが77杯」
「ラーメンが78杯」
「ラーメンが79杯」
「ラーメンが80杯」
「ふふっ、コショウをたっぷりかけたり、チャーシューから食べちゃったり……好きな順番で食べるのがアウトローってモノよね、先生」
「あっ、もちろん……ニンニクたっぷりの餃子に半チャーハン、つけるわよね♪」
「ラーメンが81杯」
「ラーメンが82杯」
「ラーメンが83杯」
「ラーメンが84杯」
「ラーメンが85杯」
「ラーメンが86杯」
「ラーメンが87杯」
「ラーメンの途中で餃子を挟んだり……チャーハンを口に運んだり……はたまた餃子とチャーハンを一緒に食べたり……」
「……先生? アウトローな先生は……レンゲにチャーハンを乗せて……ラーメンのお汁に浸してから……食べちゃう?」
「……ラーメンとチャーハンって……何であんなに相性が良いのかしら……」
「ラーメンが88杯」
「ラーメンが89杯」
「ラーメンが90杯」
「ラーメンが91杯」
「ラーメンが92杯」
「ラーメンが93杯」
「ラーメンが94杯」
「ラーメンが95杯」
「……チャーハンも良いけど、ライスをつけるのも良いわね、先生? 餃子ともラーメンのスープとも相性がバッチリだし……」
「それに……ラーメンのチャーシューを乗せちゃえば……ちょっとしたチャーシュー丼に……なっちゃうわね……アウトローだわ……これは……アウトローにも程があるわ……」
「ラーメンが96杯」
「ラーメンが97杯」
「ラーメンが98杯」
「ラーメンが99杯」
「ラーメンが100杯」
「ラーメンが101杯」
「ラーメンが102杯」
「ラーメンが103杯」
「……思い出したわ、先生。普通のラーメンの話ばかりだったけれど……私、思い出したのよ」
「……油そばやまぜそばに汁なし担々麺という選択肢もあったということ」
「こんな大事なラーメンを忘れているなんて……不覚よ……」
「ラーメンが104杯」
「ラーメンが105杯」
「ラーメンが106杯」
「ラーメンが107杯」
「ラーメンが108杯」
「ラーメンが109杯」
「ラーメンが110杯」
「ラーメンが111杯」
「トッピング多め、味濃いめにして麺を食べ終えた後の残ったお汁に白いご飯を入れて食べる……ああ、なんてハードボイルドでアウトローなのかしら……」
「って、普通のラーメンのお汁に白いご飯を入れておじやみたいにしても美味しいのよね……まさに罪の味ってやつね……」
「ラーメンが112杯」
「ラーメンが113杯」
「ラーメンが114杯」
「ラーメンが115杯」
「ラーメンが116杯」
「ラーメンが117杯」
「ラーメンが118杯」
「残ったお汁やご飯を思う存分に味わいながら、途中でお水をクイっと口に運ぶと……ああ、幸せだわ♪」
「先生も感じていると思うけど、ラーメン中のお水……すごくおいしいのよね。またスープを飲みたくなっちゃうし、そのあとまたお水を飲みたくなっちゃうし……」
「はっ!? も、もしかして……ラーメン屋さんのお水には何か中毒になっちゃうようなイケナイ薬か何かが!?」
「た、たまにレモンを浮かべているお店もあるし……怪しい、怪しすぎるわね、先生!」
「これはもう現地で確認しちゃうしかないんじゃないかしら! 私と先生、ふたりで確認するしかないわ!」
「さて、先生! それじゃあ早速ラーメンを食べに行かなきゃいけないわね! 安心して頂戴。ちゃーんとこの時間でも営業しているラーメン屋さんはチェック済みだから♪」
「ちょっとだけ距離があるけれど、歩いている間にお腹もちょうどよく空いてくるだろうし、先生と一緒に散歩するのも……」