白萩編 第二章「過去と今」
白萩「お姉ちゃ~ん!」
白椿「あはは、おいで白萩!」
私とお姉ちゃんが遊んでいる。
すぐわかった、これは夢だ。昔の私達。
あの頃の私達はとても仲が良かった。
村の人や両親は私達によそよそしくて、いつも二人で遊んでいた。
白椿「白萩、知ってる?あそこの山の途中に神社があるんだよ。」
白萩「神社?でもあの山は誰も住んでないってお父さんが言ってたのを聞いたよ。」
白椿「そう、だれもいない。神社にもね。昨日ちょっと見てきたんだ。」
白萩「えー!お姉ちゃん危ないよ~!」
白椿「あはは、大丈夫大丈夫!危なそうな動物いなかったし。
ね、あそこなら私達が自由に遊べるんじゃないかな?」
白萩「そうかも。今度一緒に行こう?」
白椿「うん、約束ね!」
この約束、覚えてるよ。
ねぇ、いつになったら約束守ってくれるの?
もうあの頃の私達には戻れないのかもしれない、そう思うと涙が止まらなかった。
視界がぐらぐらと揺れ、ぼやけていく。
白萩「う…ん…」
目が覚めた。そう、やっぱり夢だった。
目尻は少し濡れていた。
白椿「起きたのね。」
白萩「おねえ…ちゃん…?」
白椿「周りに迷惑を掛けないで。わかったら家につくまで寝てて。」
白萩「うん…」
日がだいぶ落ちている。
神社で眠ってしまった私を、お姉ちゃんが迎えに来てくれたんだろうか。
私を背負ったお姉ちゃんの背中は暖かかった。
言葉は冷たいけど、きっとまだ、繋がりがあるんだ。
少しくらいそう思ってても、いいよね?
お姉ちゃんの体に、少しだけぎゅっとしがみつく。
お姉ちゃんは一瞬、足を止めてビクッと震えたけど、何もいわずに歩き出した。
さっきとは違う涙が一筋こぼれ落ちた。
家は静まり返っている。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、私。
四人で一緒にご飯を食べる。
でもそこに団欒はない。
作業のような夕食は何の味もしなかった。
白椿「白萩、明日はお祭りの準備があるから。あなたも準備、手伝いなさい。」
白萩「あ…うん、わかった。」
お姉ちゃんは要件だけを告げると食器を片付けにいった。
お祭りか。
数日前に村の人がお祭りの話をしているのを聞いた。
何十年とやってないお祭りらしい。
これ以外にお祭りはないから、初めてのお祭りだ。
村の子供達もみんなうきうきしてた。
私もちょっと気になるけど、それ以上になにか、不安を感じる。
そんな不安を打ち消そうと必死に目を閉じた。
白萩「こんなに人、たくさんいたんだ。」
村の広場は人でいっぱいだった。
子供はみんな知ってる子だけど、大人は知らない人も多い。
大きなものは大人が組み立てて、子供は飾りの小物を作るようだ。
子供達が集まっているところから少し離れて小物作りの手伝いを始めた。
白萩「みんな楽しそう。」
子供達は笑い合いながら小物を作っていた。
「私の方が上手い。」「私のほうが早かった。」「お昼ごはん何かな?」
他愛のない会話が羨ましい。
その会話の近くにお姉ちゃんもいた。
お姉ちゃんは子供の中では年長者だ。
遊んでばかりの子供を優しく注意しながら、もくもくと準備を進めている。
一瞬、こちらを見た気がしたけど、すぐに準備に戻っていった。
一人っきりなのは嫌だけど、楽しそうなみんなを見るのは好き。
そこに自分も居られたらどんな感じなのだろう。
少し考えて、首を振った。
私には白梅ちゃんがいる。私の大切なお友達。
白萩「白梅ちゃん何してるかなぁ。またお話したいな。」
白梅ちゃんなら、きっと私も楽しく話せる。
明日は会いに行こう、そう決めた。